夜になると咳が出て眠れない症状が続いている方の多くは、風邪の後に咳だけ残ってしまう感染後咳嗽です。感染後咳嗽であれば自然に軽快していきますが、なかにはほかの原因で咳が続いてしまうことがあります。
咳は発症から持続する期間で急性咳嗽・遷延性咳嗽・慢性咳嗽の3種類に分けられます。
発症から3週間の咳は急性咳嗽、3週間から8週間までの咳は遷延性咳嗽、8週間以上経過した咳は慢性咳嗽です。例外はあるものの、急性発症の咳は感染症が原因である場合が多く、遷延性咳嗽・慢性咳嗽と持続期間が長くなるほど非感染症が原因による咳である可能性が高くなります。
日本人においてがんの死亡数は肺がんは男性で1位、女性で2位となっており、長引く咳がある場合には肺がんではないかと心配になられる方もいらっしゃるかもしれません。
今回は肺がんを中心に咳が続くときの対応をお話していきますので、長引く咳でお困りの際には参考にしてみてください。
※この記事はメディカルドックにて『「夜になると咳が出るのは肺がん」を疑うべき?症状の原因や咳の特徴も解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
関口 亮(医師)
2016年東邦大学医学部卒業 / 2016-2018年東邦大学佐倉病院初期研修 / 2018年〜東邦大学大森病院呼吸器内科所属 / 2019年ー2020年国立病院機構東京病院呼吸器内科出向 / 2020年〜現在まで東邦大学大森病院呼吸器内科に勤務 / 2024年4月よりハピコワ会ハピコワクリニック転職予定 / 専門内科、呼吸器内科、アレルギー
肺がんとは
肺がんは50代から徐々に罹患者数が増え始め、65歳以上の高齢者に多い傾向があります。肺がんと診断されてから5年後に生存している確率は34.9%とがん全体の65%程度と比較して低いです。そのため早期発見・早期治療が大切となります。
肺胞や気管支の細胞ががん化した疾患
肺がんは、気管支や酸素と二酸化炭素のガス交換を行う肺胞を構成する細胞が、がん化した疾患です。がんが進行すると無秩序に増大したがん細胞が周りの組織を破壊する浸潤と呼ばれる状態になります。
さらに進行するとがん細胞が血管やリンパ管に入り込み、全身の臓器に飛ぶ転移という現象が起きます。
肺がんの分類
肺がんは顕微鏡でみたときにどのような形のがん細胞で組織されているか、形態別に分類されています。大きく小細胞がんと非小細胞がんに分かれ、非小細胞がんはさらに扁平上皮がん・腺がん・大細胞がんの3種類に分かれます。
小細胞がんは喫煙者に多く、ほかの組織型よりも進行が早く転移しやすいのが特徴的です。非小細胞がんのなかでは腺がんが多く、肺がん患者の約5割を占めます。肺の末梢の方に腫瘤を作ることが多く、初期では症状が出にくいです。
扁平上皮がんは喫煙者に多く、気管支に近いところに腫瘤を作りやすいため咳や血痰などの症状が出ます。大細胞がんはがん細胞の増殖が早い傾向にあります。
肺がんが原因で出る咳の特徴
冒頭で発症からの持続期間で咳は急性・遷延性・慢性の3種類に分類されるとお話しましたが、痰が絡んでいるかいないかでそれぞれ湿性咳嗽と乾性咳嗽の2種類に分けられます。ここでは咳の経過と質の観点から肺がんの特徴をみていきましょう。
2週間以上続いている
肺がんでは腫瘤ができる場所によって症状の有無に差がありますが、肺がん患者では診断時に65%が咳症状を有しています。発熱・鼻水・頭痛といった風邪症状を伴わないにも関わらず2週間以上咳が続く場合には病院で受診しましょう。
徐々に悪化している
がんは基本的には無治療で軽快することはなく細胞が増殖し続け病変が増大していきます。そのため症状も悪化傾向であることが通常です。
ウイルス感染であれば通常自然軽快していきますが、徐々に悪化する場合には結核などの特殊な感染症や肺がんなどを疑いますので病院で受診してください。
痰・血痰を伴う
感染症でも痰が絡んだ湿性咳嗽を呈しますが、肺がんでも痰の量が増えます。感染症では痰の色は黄色調であることが多いですが、肺がんが気管支の血管を巻き込んで増殖している場合には出血を伴い、血痰があるケースも少なくありません。
肺がんが横隔膜や神経を巻き込んでいる場合には痰が絡まない乾性咳嗽が続くこともあり、痰がないことで肺がんは否定できません。がんが喉の動きを支配する半回神経を巻き込むと、声が枯れたり飲み込みが悪くなる場合もあります。しかし血痰がある場合には単なる風邪ではありませんので早めに受診することをおすすめします。

