女性には毎月やってくる月経ですが、月経前・月経中などいろいろ体や心の不調を感じる方も多いと思います。
また急に涙が出てしまったり、急な強い不安感に襲われ家から出られず、仕事を休まないといけなくなるほど社会生活に支障をきたし、苦しんでいる女性の方もいらっしゃるのではないでしょうか?
同じような症状で苦しんでいる方は少なくありません。そんな女性の方にPMDDについて詳しく紹介します。
※この記事はメディカルドックにて『「月経前不快気分障害(PMDD)」は薬を使わずに治療ができる?医師が解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。
月経前不快気分障害(PMDD)の診断方法と治療方法

診療科は何科がいいですか?
月経前に精神症状が強く出ているのであれば、精神科や心療内科を受診するのがおすすめです。というのも、月経前症候群(PMS)のような身体的な症状であれば、婦人科でのピルを服用するようなホルモン療法が効果的ですが、精神症状が強い月経前不快気分障害(PMDD)では、ホルモン療法では改善が難しいからです。ですが、いきなり精神科や心療内科の受診がハードルが高いと感じる方、精神症状が強いか判断できない方は、まず婦人科を受診してみるといいでしょう。婦人科でも月経前不快気分障害(PMDD)の診断はできますし、その後精神科や心療内科へ希望があれば紹介していただくことも可能となります。
また、最初から精神科や心療内科を受診する場合には、伝えておくといいことがあります。「生理周期と症状が連動していること」「PMDDではないかと疑っていること」の2つを伝えるようにしましょう。
月経前不快気分障害(PMDD)の診断方法を教えてください。
診断基準を基に、症状を伺いながら、診断を確定していきます。その時に診断に必要なのが「2ヶ月間の生理周期と症状の変動」です。ですので、自分がPMDDかもしれないと受診を迷う場合は、体調や精神症状の変化を日記につけることがおすすめです。どうしても過ぎたことの記憶は曖昧になりますし、いつからいつまでと変化を事細かに記憶することは難しいと思いますので、毎日忘れず日記をつけるようにしましょう。
月経前不快気分障害(PMDD)にはどんな治療法がありますか?
PMDDの治療法には以下の方法があります。薬物療法:抗うつ剤、抗不安薬、抗精神病薬を症状に合わせて組み合わせて処方されます。中でもSSRIという抗うつ剤がうつ病と比べてPMDDには効果が早く出るといわれ、SSRIの服用で治療を進めることが多いようです。抗うつ剤は毎日服用するものですが、PPMDに限り、生理周期に合わせて排卵後から月経終了まで期間のみの間欠療法が適用されることもあります。いきなりSSRIの服用に抵抗がある方や、症状がまだ軽い方はピルの服用で治療を進めることも可能です。前述した通り、ピルには身体的症状には効果がありますが、精神症状については効果があまり期待できない可能性があります。
精神療法:カウンセリングや認知行動治療法薬物療法と並行しておこない、カウンセリングを通して不安を取り除いていきます。
漢方:症状が軽い方のなかには漢方を使うことで症状が改善されることもありますが、漢方については、個人差が大きいようです。また、漢方によって得られる効果が出るまでの時間がかかったり、体質に合わせないと逆効果になったりということもあるので、漢方だけでPMDDを改善するのは少し難しいかもしれません。
薬を使わないで治療したいのですが…。
薬を使うことに抵抗がある方も少なくないと思います。症状が軽い場合には、薬を使わず治療をするケースもあるようです。自分がどの時期にどんな風に不快を感じているのかをまず、知ることから治療を始め、主にカウンセリングを通じて、生活環境の改善をおこないます。もう1つ、薬を使わない治療法に「TMS治療」という磁気刺激による治療法があります。PMDDに関する前頭葉を磁気刺激によってケアする治療法で、副作用も少なく、効果が高いといわれています。
TMS治療がおすすめな方
抗うつ剤やピルの服用に抵抗がある方
抗うつ剤やピルの副作用が怖い
ピルを飲んでも、精神症状が改善されない
妊活中でこどもに影響がある治療は避けたい
など、治療は進行状況や症状によって変わりますので、まずは診察を受け医師の指示に従いましょう。
編集部まとめ

生理前不快気分障害(PMDD)は女性にとって、毎月社会生活に支障をきたすほどの精神症状によって生きづらいと感じる要因の1つになります。
生理前になれば多少の不調が出てしまうのは女性としてよくあることですが、社会生活までに支障をきたすようになるほどであれば治療が必要な病気です。
放置していてもいいことは何1つありません。今回当てはまるような症状があったなら、早めの受診をおすすめします。
参考文献
月経からみた女性のストレス疾患|第54回 日本心身医学会総会ならびに学術講演会

