むし歯の段階を調べる方法
むし歯は、自覚症状とむし歯の進行度が一致しない場合も多く、早い段階で自分自身で気付くのは難しいのが実情です。ここでは、自分で確認できる範囲と、歯科医院で行われる診断方法を解説します。
自分でむし歯の段階を確認することはできる?
自分でのチェックはあくまで異常に気付くきっかけ程度にすぎず、進行度や治療の必要性を正確に判断する手段にはなりません。
とはいえ、自宅でもある程度の確認は可能です。例えば、鏡を使って歯を確認し、歯の表面に黒い点や白く濁った部分が見える場合は、むし歯の可能性があります。ただし、黒く見えても単なる着色の場合もあり、必ずしも進行したむし歯とは限りません。逆に、見た目がきれいでも歯と歯の間や裏側でむし歯が進行していることもあります。
また、症状から気付く場合もあります。例えば、冷たいものがしみる、噛むと痛いといった症状は、むし歯を疑うきっかけの1つです。ただし、これらの症状は知覚過敏や歯周病などでも似たような感覚が生じるため、自己判断には限界があります。
歯科医院でむし歯の段階を確認する方法
歯科医院では、まず歯科医師による視診と触診が行われます。専用のライトで歯の表面を確認し、色や光沢、白濁、小さな穴の有無などをチェックします。必要に応じて、探針と呼ばれる器具で歯の溝を軽く触れ、ざらつきや軟化の有無を確認することもあります。
さらに詳細な評価のためにレントゲン検査が用いられます。レントゲンは歯と歯の間や奥深くに隠れたむし歯を発見するのに有効で、特にC2以降の象牙質に達したむし歯の診断に役立ちます。表面の変化がわずかでも、内部で大きく進行しているむし歯の状態がレントゲンによって明らかになることもあります。
むし歯の段階別|治療法
むし歯の治療は、段階によって大きく内容が変わります。初期段階であれば削らずに管理できることもありますが、進行して神経まで達すると、長期間の治療や抜歯が必要になる場合もあります。ここでは、各段階ごとの治療法を解説します。
COの治療法
COは穴が開く前の初期段階であり、削らずに治療できる可能性が高い状態です。フッ素を塗布して歯を強化したり、再石灰化を促したりする処置が行われます。また、むし歯になりやすい歯の溝をプラスチックで保護するシーラント処置が行われることもあります。
併せて、生活習慣の見直しも重要です。甘い物や間食の制限、就寝前の飲食を控えること、正しい歯磨き方法などについて指導が行われます。
C1の治療法
C1の段階でも、穴がごく小さく清掃状態が良好であれば、削らずに経過観察することが可能です。フッ素やシーラントによって進行を抑える処置が行われます。一方、むし歯が進行しやすい部位や食べ物が詰まりやすい箇所では、むし歯部分を最小限に削り、歯と同じ色の樹脂(コンポジットレジン)を詰める治療が一般的です。
近年では、最小限の介入(Minimal Intervention=MI)という考え方が重視されており、健康な歯をできるだけ残す治療が基本となっています。そのため、大きく削る必要はなく、歯を元の形に近い状態で長く保つことが可能です。
参照:『Minimal intervention dentistry for managing dental caries – a review』(International Dental Journal)
C2の治療法
C2では、エナメル質の内側にある象牙質までむし歯が達しているため、削って詰め物をする治療が必要です。むし歯の範囲が小さい場合はコンポジットレジン(歯の色に近い樹脂素材)で対応できますが、範囲が広い場合や噛み合わせの力が強くかかる部位では、型を取ってインレーやオンレーといった詰め物を作成します。この段階で治療を行えば、神経を残せる可能性が高く、歯の寿命を延ばすことにつながります。
C3の治療法
C3では根管治療が必要です。細菌によって炎症や感染を起こした神経(歯髄)を取り除き、歯の根の内部(根管)を洗浄、消毒したうえで、再び菌が侵入しないように薬剤を詰めます。治療後は歯がもろくなっているため、クラウン(かぶせ物)を装着して歯を保護します。
なお、神経が保存可能と判断された場合には、MTA(Mineral Trioxide Aggregate)という特殊なセメントを用いた生活歯髄療法が適応されることもあります。これは神経を部分的に残す治療法のことです。
参照:『歯髄保護の診療ガイドライン』(日本歯科保存学会)
C4の治療法
C4は歯の大部分が崩れ、根だけが残った状態です。この段階では歯を保存するのが難しく、抜歯が選択されることが一般的です。抜歯後はそのままにせず、ブリッジ、入れ歯、インプラントなどによって噛む機能を回復させます。どの治療法を選ぶかは、歯の状態や生活習慣、患者さんの希望によって決まります。
ただし、C4だからといって必ず抜歯になるわけではありません。歯の状態によっては保存を試みることもあり、最終的に保存が困難と判断された場合に抜歯を選択します。

