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発表会に出るらしい|丸山裕子

発表会に出るらしい|丸山裕子

何年かぶりに発表会に出ることにしたのは、スタジオの20周年記念の会だからというのが一番の理由だけど、会場の裏側が見たいというのも大きな理由のひとつでした。

いつもの会場であるびわ湖ホールが改修中なので、今回の会場はロームシアター。京都では京都会館という名で親しまれてきた老舗コンサートホールです。私も幾多の公演をこの会場で見てきました。あのアーティストもあの公演もここで見たよなぁと思うと、舞台の裏側が見たい、楽屋に入ってみたい、という気持ちを抑えることができませんでした。

それにまぁ、ここ数年はレッスンに行けていないことを理由に出演せずにいたけれど、心の片隅にほんの少し「出たい」という気持ちがなくもなかったのも事実です(まわりくどい)。「発表会に出演しないという選択肢など無いっ! 無無無!!」と、かつては豪語していた私ですから。

そんな前のめりだった気持ちが萎んでしまったのは、コロナに始まったブランクで、折角できるようになっていたことができなくなってしまったから。アラフォーから十余年を費やして、ようやく身につきかけたものがゼロになってしまった。仮に今からもう一度、かつてと同じ熱量と頻度で取り組んだとて取り戻すことはできないだろう。日々加速するカレイを実感する中でそんなふうに思い、やる気を失ってしまったのです。

 

発表会に出演しなければしないで、良いこともありました。
通常のレッスンでいい汗をかいた後、発表会練習のためにスタジオに残る友人を横目に、青空の見える時間にスタジオを後にするのは清々しくもありました。友人たちの踊りを客席から無責任に眺めているのは、気楽で悪くありませんでした。

舞台に立つのは楽しいけれど、あまりにも不完全な自分のままそこに上がるのは、ど素人の発表会とは言え、プレッシャーでもありました。

発表会当日の慌ただしさにも毎回しんどさを感じていました。
出演は午後からなのに朝早くに家を出て、普段しない大げさかつ下手くそな化粧を自分の顔に施して、何時間も楽屋で待機。ゆーても年1の行事なので、何度やっても慣れることはありません。1年前の記憶はすっかり消去されている大人バレリーナです。

ウォームアップのタイミング、狭い廊下や楽屋や舞台袖で行うバーレッスン、場当たり、いつ衣装を着け、いつポワントを履き、いつ写真を撮ってもらい、いつどのくらい食べて、いつトイレに行くか。
毎回全てが初めてのようで、不慣れで、何ひとつうまくいかないままバタバタと舞台に飛び出し、気づいたら舞台袖にはけている。結果、踊りは……。だけど、楽しかったし、レッスンもたくさんできたし「まいっか」で終了。

仕事や睡眠の時間を削ってまで熱心にレッスンに通っていたときでさえそんなだったのに(いや、仕事時間は削るな)、月1回レッスンに行けるかどうかの現状で、このプレッシャーに堪えられる気がしませんでした。


が、20周年なのです。
スタジオの、我が推しである先生の(生徒は大体先生のファン)記念日は大切にしたいじゃないですか。
ロームシアターの裏側ツアーも捨てがたいし、踊りたい気持ちもやっぱりちょっとはある。

それに、このスタジオができた年に入会したということは、私にとってもバレエを始めて20周年なのでは??

えええー
なんという月日の流れの速さ!
そして、なんという非成長っぷり!!
国宝級!!!

バレエを始めて10年ほど経った頃にアトリエの引越しをしました。いつものスタジオが遠くなったので、アトリエ近くでもレッスンを受けられたらと思い、周辺のバレエスタジオの体験レッスンを受けてまわったことがあります。
初めてのスタジオで必ず問われるのがバレエ歴です。「大人から始めて10年です!」と10のところを気持ち太字で、得意げに言うと「あ、じゃあ、初心者クラスね」と最も初心者向けのクラスに振り分けられ、内心憤慨したものです。

が、今ならわかります。
大人バレエの成長曲線の緩やかさよ。
なんなら右肩下がるし。

20年を経た今も私は蝉の幼虫のままで(第1回参照)土の中にいるようです。

20年間土の中にいた蝉の幼虫はどうなってんだろなー。
生きてるといいけどな。
生きててくれ。

というわけで、数年ぶりに発表会出演を決め、およそ週1でレッスンに復帰した大人バレリーナ。この顛末はどうなることやら。
眠気を誘う春のポカポカ陽気ほどに暖かな目で見守っていただけたら幸いです。

進捗状況は追々。
 

配信元: 幻冬舎plus

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