
タイドラマ「転校生ナノ」シーズン1の日本版リメイク作品が、4月24日よりFODにて独占配信を開始した。本作で俳優デビューとなる主演の仲島有彩と、オムニバス形式で描かれる本作で監督を務めた4人・堤幸彦(episode1「特別レッスン」監督)、熊切和嘉(episode2「ソーシャル・ラブ」、episode4「正しいのは私」共に監督)、ユ・ヨンソン(episode3「女王の資格」、episode5「憎しみの壁」共に脚本・監督)、畑中みゆき(episode6「探しものは何ですか?」脚本・監督)にインタビュー。後編となる今回は、各話をさらに深掘りし、ポイントをたっぷりと語ってもらった(前編:主演・仲島有彩と堤幸彦ら4人の監督が語る『転校生ナノ』リメイクの裏側「1年ほど役作りに時間を」「日本の空気感を出すように」)。
■「この転校生、何かがおかしい」学園ミステリー・スリラー
本作は、学園という閉鎖空間を舞台に、ある日突然クラスにやってきた謎の転校生“ナノ”によって、閉ざされた日常が揺らいでいく学園ミステリー・スリラー。ナノは頭脳明晰で美しく、誰もが憧れる完璧な存在。エピソードごとに異なる学校へ転校し、そこで出会う人々の嘘や秘密に踏み込み、彼らに“選択”を促すことで、教師や生徒たちがひた隠しにしてきた欲望をあぶり出していく。
■堤監督「本当は普通にトスしてキャッチする予定だった」
ーー各監督との撮影エピソードについて聞かせてください。まずは堤監督のep.1 ナノが「いいですね、もう戻れないですよ」などと相手に圧をかけるような、攻める姿勢が描かれていたように思います。
仲島:私は、コイントスをするシーンが、一番印象に残っています。実はあの時、ちょっと間違えちゃって…。そもそもコイントスが全然できなくて焦っていたんです。しかも、あのシーンは全撮影の最後だったので、「ここで一番の集大成を見せたい」とずっと思っていて。ナノのブレない軸を保ちつつ、相手がどれだけひどい人間か分かっていく中、怒りも少し混じったような集大成を見せられたと思っています。
堤監督:本当は普通にトスしてキャッチする予定だったんだけど、ポーンと弾いて飛んでいってしまって。それが面白かったので、「じゃあ思いっきり相手に当ててみて。そして笑って」と指示したんです。タイミングって難しいんですが、「カラカラカラッ」って笑う絶妙な間が生まれましたね。
■仲島「八神(蓮)さんが本当に面白くて…自然に出てきた高笑いだった」
ーー笑いという意味では、最後の「マッチポイント」と言って高笑いするシーンも印象的でした。
仲島:最初は本当にしんどかったです。オリジナルのナノの笑い方が狂気じみていたので、映像を50、60回見て「どう笑えばいいんだろう」と地味に裏で研究していました。でも、いざ撮影が始まると先生役の八神(蓮)さんが本当に面白くて。そのお芝居に耐えられず笑ってしまった部分もあったので、自然に出てきた高笑いだったと思います。
堤監督:僕は、仲島さんに対して「相手の八神さんが仕掛けてくるいろんなお芝居に釣られず、今の状況を楽しむように」とは言いました。タイ版のインパクトがすごかったのでどうなるかと思いましたが、全然負けていなかったです。とても良かったですよ。
■堤監督「虚無なセリフを自然に喋れるんですよね」
ーーep.1の終盤、詩織(日山和子)と屋上で話すシーンでは、一瞬だけナノの内面が見えるような気がしました。
堤監督:虚無なセリフを自然に喋れるんですよね。普通なら怖そうにしたり、おどけて見下したりする演出が正当かもしれませんが、この人は逆にずっと一本調子でいる方が一番怖い。だからそのまま通させてもらいました。
仲島:淡々と喋るだけで十分怖いんですが、その言葉の中に内なるものが少し滲み出ているような気がしました。廊下で詩織と何気ない会話をしている時は純粋に友達だと思っていて、最後の屋上のシーンでは、答えを与えるのではなく、詩織自身に選択を考えさせる。他のターゲットとは違う、ナノなりの優しいアプローチを心がけました。
堤監督:考えてるね。そこがすごい!
■熊切監督「作品のトーンは意識的にかなり変えた」
ーー熊切監督のep.2では、可愛い雰囲気から一変して怖いナノになりましたね。ステージに上がって操り人形のような動きをするシーンが印象的でした。
熊切監督:2本撮らせてもらえたので、作品のトーンは意識的にかなり変えたんですね。ep.4は静謐なフィルム・ノワール、ep.2はSNSの映像を取り入れたポップなトーンにしようと意識しました。同じナノであっても、ep.2のほうは恋に恋する乙女みたいな雰囲気を出したかったので、「思いっきりぶりっ子してやって」と言った記憶があります。マリオネットも、仲島さんの身体表現で何か面白いことをやらせたいなと思って提案しました。ずっと練習してくれていて、本番もとても良かったです。
仲島:ありがとうございます。あのシーンは私にとって、ナノの一番の山場でもありました。マリオネットという動きをしながら本性を見せるというダブルの難しさがあって、不気味さを表現するためにどんな動きをしたらいいんだろうとずっと考え込んでいました。いかに奇妙に操られている感じを表現するか、アドバイスをいただきながら、練習を重ねて…すごく苦労した記憶があります。
■仲島「(マリオネットは)自分的にも納得のいく好きなシーンに」
ーー可愛い雰囲気から切り替えるシーンはどうでしたか?
仲島:ep.2では、あまり“ナノ”を出すシーンはなかったので、すごくワクワクしました。「やっと自分を出せた!」という感じで楽しかったです。
ーー監督とのコミュニケーションで印象に残っていることはありますか?
仲島:マリオネットの最後で糸が外れたように倒れた後に吐くセリフの言い方ですね。「ちょっと息を吐いた感じで言った方がより奇妙に見えるのか」などを相談して。話し合った結果の演技ができたので、自分的にも納得のいく好きなシーンになりました。熊切監督は、ナノのギャップ性に重きを置いて注力してくださったので、新人である私の意見もちゃんと聞いてくださることに驚きました。すごく明るくて楽しい現場で、これを初主演で知ってしまったから、今後が逆に不安になるくらい、本当にいい環境でした。
■ユ監督「“鞘の中に収まった刀”のようなイメージが出ている」
ーーユ監督のep.3とep.5は、ナノが観念的で哲学的な言葉を使って相手に圧をかける芝居が印象的でした。
ユ監督:ep.3とep.5では、“鞘の中に収まった刀”のような尖った鋭いイメージがかなり出ていると思います。彼女の印象からインスピレーションを受けた表現の仕方でした。
ーーユ監督ならではの“ナノ”の表現はどうでしたか?
仲島:ナノは“答えを与えずに選択肢を与える”という人物です。ユ監督の作品は特に、軽いトーンの中にも言葉の重みを持たせるバランスがすごく難しかったです。
ーー動きで工夫した点はありますか?
仲島:そういう哲学的なセリフを言う時、クルクル髪の毛を弄ぶなどして、わざとらしく相手の視界に入るように動いていました。ユ監督の作品は本作の中でもホラー要素が強くて、私自身ホラーが好きなので、その世界に入れた気分で楽しかったです。照明や小道具一つひとつのディテールもすごく細かかったのが印象的でした。
■仲島「『怒られるんじゃないか』と震えながら撮影を(笑)」
ーーまたユ監督の2作品からは韓国のホラー要素も強く感じました。特にep.3で一つのキーとなっている鍼が出てくる人形が日本にはない小道具だなと。
仲島:背中のネジをただ回し続けるお芝居だったので、現場では鍼がどうやって出てくるのかなと思っていましたが、映像を拝見してびっくりしました。美術さんが彫って、3日かけて作られたとお聞きしたのですが、「持って帰っていいですか?」と言いたくなるぐらい素敵な仕上がりでした。さすがに自重しましたけど(笑)。代わりに私の名前が書かれたお札をいただいたので、今も大切に家に保管しています。
ユ監督:実はあの人形、私がいただいて持ち帰りました(笑)。その美術さんの仕事に感動して、韓国での次の作品にお誘いしたくらい、日本のスタッフの情熱は素晴らしかったです。
ーーep.5の弓道のシーンはどうでしたか?
仲島:3日間ほど練習したのですが、私以外のキャストのお二人が本当にお上手で。私だけ下手で、本当はもっとたくさん練習したかったです(笑)。一度射った時に照明のライトに“バンッ!”と当ててしまって。そこから「怒られるんじゃないか」と震えながら撮影していました(笑)。
■仲島「心から笑顔が出た、唯一、ナノの軸がブレる回に」
ーーある意味、しっかり命中してますね(笑)。では、畑中監督のep.6についても教えてください。最終話で、これまでのナノとは雰囲気が違いましたね。
仲島:心から笑顔が出た回でした。唯一、ナノの軸がブレるというか、「ちょっと違うんじゃないか」と視聴者の方に思っていただけるような回になっています。ナノ自身の一貫性は保たれているんですけど、最後のシーンだけは相手のタクトの感情に少し合わせにいきました。
ーー具体的に、その違いをどう表現したのですか?
仲島:タクトの感情とナノが若干平行しているような、“目線”を意識しました。校長室のシーンでタクトが出ていく時も、本当はすごく声をかけたかった。「待って」って言いたいけれど言えない、もどかしさがあったんです。これで正解だったのかなと、少し自問自答するようなお芝居を心がけました。
■畑中監督「ナノはその人の奥を見るキャラクターだと解釈」
ーーそんなタクトと交流するシーンは微笑ましかったです。
仲島:プールサイドや遊園地などで無邪気に戯れているシーンは、純粋に今の瞬間が「楽しいな」と思いながら演じていたので、すごく思い出に残っています。普通の日常なんですけど、ep.6だけ感情が少し入ってしまう分、一人の生徒として世界観の中に入り込んでいた感覚がありました。タクトの純粋な心に引き込まれて、コーヒーカップに乗って楽しんだりするナノが、とにかく新鮮で。自分の中でも新しいナノを知れて、印象が少し変わりましたね。
ーーこれまでのエピソードに出てくる対象者とタクトは違うように感じました。ナノが相手を悪者なのかそれとも違うのか、判断する境界線はどこにあると思いますか?
畑中監督:私は“欲”だと思っています。タクトは盗みは働いているけれども、その根本の理由が私欲なのかどうか。ナノはその人の奥を見るキャラクターだと解釈して作り上げました。
仲島:私も同じです。相手の本心に焦点を当てて、そこで判断しているのかなと思って演じていました。
■仲島「引き込まれてしまわないか心配になるほど刺激をいただいた」
ーー全エピソードを通して、仲島さんの中で一番ここは挑戦だったなと思うことを教えてください。
仲島:ep.1の泣くシーンで、いかに先生の世界に一旦引き込まれて、自然に涙を出せるかが難関でした。あと、詩織役の日山さんのお芝居が本当にお上手で、引き込まれてしまわないか心配になるほど刺激をいただきました。
■仲島「“自分ごと”として共感できる部分が絶対にある」
ーー最後に、このドラマ全体の魅力と視聴者へのメッセージをお願いします。
ユ監督:欲望が暴走した時の恐ろしい“美しき地獄”を、視覚的にも非常に美しくこだわったので、ぜひ楽しんでいただきたいです。
熊切監督:今の日本を映したダークファンタジーとして見てほしいです。
畑中監督:有彩さんが演じるナノが各話いろいろな表情をしているところが本当に魅力的で、毎話毎話楽しんでいただけると思います。
堤監督:ナノというキャラクターがミステリアスで美しくて、「とんでもない人が日本にもいるんだぞ」という、彼女の存在感をぜひ全シリーズ通じて見てほしいです。
仲島:ep.1は視聴者の方が初めて見る回なので、ナノがどんな存在か言葉で語らずとも分かってもらえるような工夫がたくさん詰まっていて、ナノを構成する要素が一番散りばめられています。それこそ「ソーシャル・ラブ」などは同世代の方々にすごく響く内容だと思いますし、すべてのエピソードの中に、視聴者の皆さんが“自分ごと”として共感できる部分が絶対にあると思うので、ぜひ全話見て、その部分を探してほしいです。
取材・構成・文=戸塚安友奈

