「黒潮大蛇行」との関係
2025年4月に「長らく続いた黒潮大蛇行が終了した」というニュースが流れました。
黒潮大蛇行とは、東海~関東の太平洋を流れる黒潮が大きく蛇行して流れる現象です。大蛇行が発生すると、本州南岸と黒潮との間に下層にある冷たい海水が湧き上がり、海面水温が下がります。
一方で、黒潮大蛇行の発生時期には黒潮の一部が分岐し暖水が流れ込む「黒潮分岐流」が発生しやすくなります。その結果、東海から関東地方の一部では暖水が流入し、海面水温が上昇します。
しかし、ここ数年の記録的な暑さや海面水温の高さと黒潮大蛇行の関係性は明らかになっていません。
東海から関東地方の沿岸は黒潮大蛇行で海面水温が上がり、それに伴い東日本の太平洋側の気温が上昇していたと考えることもできます。
一方、日本近海で特に海面水温が大きく上昇しているのは日本海であり、黒潮大蛇行が日本全体の気温や海面水温に影響を与える作用は限定的と考えられます。
ちなみに、黒潮大蛇行は以下の間隔で発生しています。

黒潮大蛇行の終息により、今後は東海~関東の太平洋沿岸を中心に海面水温分布が変化する可能性があります。気候が変動する可能性もあるため、今後の動向には注意が必要です。
また、海面水温の上昇は魚介類の生態にも大きな影響を与えます。
海面水温が上昇することで高水温を好むブリやサワラなどの魚種が生息・回遊する海域が北方に拡大する一方、サケなどの低水温を好む魚種は日本周辺の海域まで南下する資源が減少しています。
さらに、魚だけでなくノリなど海藻の生産にも影響が及びます。これらに伴い、漁業経営や地域の食文化、海洋資源管理政策にも大きな影響を与える可能性があります。
海面水温の上昇で大雪災害の増加も?
海面水温の上昇により、さまざまな気象災害が発生するリスクがあります。
まず、海面水温が上昇すると、海水が膨張し海面が上昇します。それに伴い、台風や低気圧が接近したときに生じる高潮や高波、大雨時には河川の水が海に流出できず浸水の発生リスクが高まります。
また、海面水温の上昇によって強い勢力をもつ台風による災害発生のリスクが高まります。これは、海面水温が高くなることで台風の成長に必要となる水蒸気が多く供給されるためです。
冬季においても、海面水温の上昇により雪を形成する水蒸気が多く供給され、大雪災害が増加する可能性があります。
