子宮外妊娠の治療
子宮外妊娠の治療の原則は手術療法ですが、患者さんの全身状態や着床部位、hCG値、胎児心拍の有無、腫瘤の大きさ、今後の妊娠希望の有無などを参考にして薬物療法、待機療法を検討することがあります。
手術療法
母体の全身状態が悪化している場合(貧血、低血圧、頻脈、腹腔内出血など)は卵管摘出術による根治術が行われます。その際、開腹手術にするか、腹腔鏡手術にするかは状況に応じて判断となります。腹腔鏡による手術は、開腹手術に比べ、手術時間や入院期間の短縮、手術中の出血の減少と言った利点があるものの、挙児希望がある場合の次回の妊娠率には差を認めないとの報告があります。
母体の全身状態が良好である場合は、卵管摘出術と卵管切開術(卵管を温存する)の選択については術後の妊孕性に大きな差はなく、いずれを選択しても良いとされます。ただし、どちらの手術方法を選択しても、子宮外妊娠の反復が10-15%程度あると言われています。
卵管妊娠における保存的手術療法(卵管切開術、卵管温存)の適応基準について、日本産科婦人科内視鏡学会では、下記をすべて満たすものとしています。
挙児希望あり
病巣の大きさが5cm未満
血中hCG値10000IU/L以下
初回卵管妊娠
胎児心拍のないもの
未破裂卵管
また、上記は90%を占める卵管妊娠における手術療法ですが、頸管妊娠や卵管間質部妊娠など、着床部位と母体の全身状態によっては子宮全摘術が必要になる場合もあります。
薬物療法
母体の全身状態が良好であれば、薬物療法を選択可能な場合があります。
諸外国ではメトトレキサート(methotrexate:MTX)による薬物療法の有効性が確立され、第一選択とされていますが、現状日本では適応外使用となります。海外のガイドライン(Royal college of Obstetricians and Gynecologists)においては、MTXの良い適応として
全身状態が安定していること
血清β-hCGが1500IU/L未満(5000IU/Lまでは可能)
胎児心拍が確認できないこと
などを挙げています。
また、着床部位(頸管妊娠や帝王切開瘢痕部妊娠など)によっては手術療法のリスク回避のために薬物療法を先行させることがあります。
待機療法
薬物療法と同様、母体の全身状態が良好であることを前提として、特に治療はせずにhCGの低下を自然に待つ方法です。
待機療法を選択する基準として
胎児心拍がない
腫瘤の大きさが30mm未満
血清β-hCGが1000-1500IU/L未満
を推奨するガイドラインがあります。
卵管温存術、薬物療法、待機療法を選択した場合は、異所性妊娠存続症の可能性があるため、hCG値が非妊時と同等レベルになるまで経過観察が必要です。また、根治術を選択しない場合は卵管妊娠破裂などにより母体の状態が急激に悪化する可能性があるため、必ず緊急対応が可能な状態で経過観察を行うことが前提となります。
子宮外妊娠になりやすい人・予防の方法
子宮外妊娠は、クラミジアなどの性感染症による骨盤内炎症性疾患、人工中絶既往、高年齢、経産婦、体外受精妊娠に多いとされています。完全な予防は難しく、一定の確率で起こりますが、早期発見することで卵管や子宮を温存する選択肢がとれることがあります。生理の遅れや下腹痛、不正出血がある場合は早めに産婦人科を受診するようにしましょう。
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流産
参考文献
産婦人科診療ガイドライン産科編

