●暗躍した"謎の人物"の目的は?
——事務所関係者を騙った人物の狙いは何だったのでしょうか。
金銭目的だけとは考えにくいです。出演料は後払いになるケースが多く、虚偽の契約は本番前のどこかのタイミングで確実にバレるからです。実際、今回のリリースにも出演料の支払いについての記載はありません。
——今回の事案を踏まえて、芸能事務所やイベント関係者が注意すべき点は。
初めて取引する相手とは、細心の注意を払う必要があります。特にSNSのDMやメールだけでやりとりを完結させないこと。名刺やSNSアカウントはいくらでも偽造できます。最も確実なのは、相手の事務所に直接訪れて所属を確認することです。
また、詐欺だけでなく、反社会勢力との接触リスクもあります。エンタメ業界に限らず、取引相手の確認は企業コンプライアンス上も重要です。
——エンタメ業界で「事務所関係者」を騙る手口にはどのようなものがありますか。
典型的なのは「テレビ局員」を名乗り、出演をちらつかせて男女関係を迫るケースです。ほかには、大手芸能事務所の偽名刺を使って路上でスカウトし、喫茶店などで契約を持ちかけ、登録料をだまし取る手口もあります。
【取材協力弁護士】
河西 邦剛(かさい・くにたか)弁護士
「レイ法律事務所」、芸能・エンターテイメント分野の統括パートナー。多数の芸能トラブル案件を扱うとともに著作権、商標権等の知的財産分野に詳しい。日本エンターテイナーライツ協会(ERA)共同代表理事。「清く楽しく美しい推し活〜推しから愛される術(東京法令出版)」著者。
事務所名:レイ法律事務所
事務所URL:https://rei-law.com/

