しかし、閉幕間近となった今は、おもにSNSで「延長してほしい」「もっと行っておけばよかった」などの好意的な声も。そういった声に対し、Xでは吉村洋文大阪府知事の「開幕前はメディア批判のオンパレードだったので、最終盤、このようなご意見を頂けるのは本音で嬉しいです。ただ、万博は国際条約で6ヶ月と決まっており、難しいです。申し訳ないです」(原文ママ)という投稿も見られた。
9月の来場者数は一日20万人超が続き、総来場者数は2500万人を突破。まさに大盛況での終了となりそうだ。
本記事では、惜しまれつつ閉幕してしまう大阪・関西万博について、開幕前から何度も夢洲に足を運んだウォーカープラス編集部員が総括を行う。行って楽しかった人、感動した人は、ぜひ一緒に振り返ってみてほしい。

■マイナスイメージを覆す「大屋根リング」
30代前半の編集部員は、55年前の「大阪万博」の詳細は当然知らず、関西出身のため20年前の「愛・地球博」もCMの記憶がある程度。つまり、今回の大阪・関西万博が初の万博体験となる。自分が生きているうちに、自分が住む都道府県で“万博”という世界規模のイベントが開催されることに、さまざまな意見を耳に入れながらも、どこか心躍っていた。
しかし、開幕当日に天候が大荒れだったことや予約システムが複雑に見えてしまったことで、“否”の意見は増える一方。マイナスイメージを与えるような感想も多く見られた。それでも5月以降に来場者が増え始めたのは、そんなマイナスイメージも払拭できるほどの、体験者たちの熱い口コミによるものだろう。デジタルに依存した予約システムはたしかに少し難しいものではあったが、今後この国で生きていくうえでは、こうした“仕様”に慣れていく必要があるとあらためて感じた。

当初は、今回の万博のシンボル「大屋根リング」にも否定的な意見が多かった。編集部員も「太陽の塔」に慣れていたため、「木造のリングかぁ」と思ったことも。でも、今では大屋根リングで大正解だったと感じる。足を運べばその姿に圧倒されるだけでなく、屋根の上からは会場全体を見渡せ、昼も夜も絶景が望める。さらに、大屋根リングの下は比較的涼しく、雨もしのげる。見てよし、入ってよし、登ってよしの画期的なシンボルだった。



何より心配だった真夏の会場だが、「とにかく水分補給してくれ!」と言わんばかりに多くの給水所や自動販売機が設置されていた。自動販売機には、スポーツドリンクや水、お茶だけでなく、子どもも飲みやすい麦茶やリンゴジュースがあるのもポイント。

最も気をつかった熱中症対策については、まず大屋根リングの下にいれば太陽光を避けられるので、移動はなるべくリング下を通る。帽子やネッククーラー、冷感シート、日焼け止めはマストだったが、海沿いでそれなりに風が吹くため、ハンディファンは不要に思えた。各パビリオンも列ができるところには日陰をつくったりエアコンを設置したりしていたので、思ったより暑さを感じなかったというのが素直な感想だ。
開幕前の真冬の夢洲も経験したのだが、海風が冷たいうえに容赦なく吹くので、立ち止まっていられないくらい寒い。パビリオンの列に並ぶことを考えると、少し厳しいものがある。個人的には、寒さでトイレが近くなるくらいなら夏を中心とする開催でよかったとすら思う。
■“街歩き”のように楽しめるのが最大の魅力
会期中、一番よく聞かれたのが「どのパビリオンがおすすめ?」という質問。100以上あるパビリオンはどれもその国・地域の個性や文化が色濃く出ていたのと、さすがにすべてを回り切れていなかったため答えるのが非常に難しかった。
迷った末に「個人的に建造物がかっこいいのはオーストリアパビリオン」「比較的早く入れて意外なおもしろさがあったのはウズベキスタンパビリオン」「子どもも楽しめるのはオランダパビリオン」と言いながら、基本的には「街歩きのように、散策しているだけでも満喫できる」と伝えていたように思う。






今回の万博は会場全体を囲う大屋根リングがあったため、“一つの街”のように楽しめるのが最大の魅力だと捉えていた。あるところでは貴重な美術品が見られ、あるところではカラオケ大会が行われている。それは普段過ごしている大阪の街となんら変わりない。パビリオンの数だけ、サービスの数だけ楽しみ方があった。パビリオンだけでなく、食事やショッピングをメインに訪れた人も多かったのではないだろうか。



実際、編集部員も食事にはかなり注目しており、会場であらゆるものを食べた。そのなかでもほぼ毎回食べていたのが、「ORA外食パビリオン 宴」内にある、象印が展開する「EXPO ONIGIRI」のおにぎり。「万博に来ておにぎり!?」と思われるかもしれないが、食べ歩き用に作られているので、小腹が空いたときや移動中にぴったりだったのだ。週替わりの具材があるので飽きることもなく、おそらく10個は食べたと思う。

そのほか、ブラジルパビリオンのコーヒーや、樽生ドイツビールと洋食の店「PAULANER IMBISS」のチーズプレッツェルなども食べ歩きしやすくてリピート。各パビリオンのレストランやキッチンカーの商品はもちろん、日本が誇る食文化も堪能でき、満足感も安心感も高い。大屋根リングの下にはベンチやシートを敷けるスペースがたくさんあり、気軽に買いやすいフードトラックも多いので、とにかく食べるのに困らない万博だと感じた。






■開催されてわかった、万博のレガシー
2024年10月から取材を行っていた身としては、開幕前や直後の否定的な意見にはずっと心苦しさを感じていた。巨大なガンダム像を見て驚いたり、各パビリオンの建築を見るだけでワクワクしたり、徐々にミャクミャクに愛着が湧いてきたり、こんなにいいイベントなのに、と。

しかし、すぐに“賛の”口コミが広まり、人々の興味関心が高まるのを見て、「昔からあるいろいろなモノ・コトは、こうやって成功してきたのかもしれない」と思った。精巧で便利な会場マップを作る人、予約システムをわかりやすく解説する人、美しい写真でパビリオンのすごさを発信する人、リアルタイムの状況を教えてくれる人…各々の得意分野を活かして万博の魅力を伝える人々の姿はまさに“ファン”であり、多くの人を万博の世界へと引き込み、レガシーをつくった。
大阪・関西万博の大盛況は、そういったファンの力なしでは実現しなかったはずだ。昨今はSNSでの誹謗中傷など、言葉を使った攻撃が問題になっているが、この万博においてはSNSが不可欠だった。会期中盤以降、SNSで情報を得ずに万博に行った人はきっと少ない。自分の体験を不特定多数に伝え、遺すこと。その大切さを伝えたイベントでもあったと感じる。

長いようで短かった半年間、大勢を魅了し、そのうちの一部の人を大熱狂させた大阪・関西万博が終了する。今は次の万博への期待でいっぱいだ。次の大阪での開催がいつになるかわからなければ生きているかもわからないが、これからは赤と青の配色を見て、今回の万博のことを思い出し続けるのだろう。そしてそのたびに、「ミャクミャクってかわいかったよな」などと言うのだと思う。
ちなみに、「ミャクミャクともお別れやな…」とちょっとだけセンチメンタルになっていた編集部員だが、9月末に友人の要望で同行したミャクミャクくじで2等を当ててしまい、そこそこ大きなミャクミャクとの生活が始まっている。会場に行けなくてもオンラインショップなどでグッズは手に入るので、今のうちに記念品を購入してみてはいかがだろうか。

取材・文・撮影=ウォーカープラス編集部
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