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10万人に1人、低身長が主症状の骨の病気の娘と向き合う母、「不安で泣いていたことしか覚えていない」【先天性脊椎骨端異形成症】


小学校の入学式。席には足置き台を設置。

橋本美佐子さんには、高校3年生の長男と、中学2年生の長女・美海(みう)さんの2人の子どもがいます。美海さんは、生まれて間もなく、2型コラーゲン異常症関連疾患である、先天性脊椎骨端異形成症(せんてんせいせきついこったんいけいせいしょう)と診断されました。多くは、骨や結合組織を構成するタンパク質の1種である2型コラーゲンの遺伝子変異によって発症する骨の病気で、さまざまな症状がみられます。

母親の美佐子さんに妊娠期のことや先天性脊椎骨端異形成症と診断されたときのことなどを聞きました。全2回のインタビューの前編です。

希少疾患のために身長123cmの大学生モデル。「小さくてよかった!」と考えるポジティブさは母のおかげ【2型コラーゲン異常症】

妊娠25週ごろの妊婦健診で「大腿骨が短い」と言われる 

生まれたばかりの美海さん。

美海さんが2型コラーゲンの遺伝子変異によって、骨にさまざまな症状があらわれる先天性の病気と診断されたのは、出産直後のこと。美海さんを妊娠したとわかったのは、上の子が3歳のときでした。

――妊婦健診では、何か気になることは言われていたのでしょうか。

美佐子さん(以下敬称略) 美海の妊娠健診は、上の子を出産した産科クリニックで受けていました。
妊娠25週ごろの妊婦健診で、エコー検査をしたところ、医師から「大腿骨(太ももの骨)が短い」と言われました。
気になってインターネットで調べたら「ダウン症の疑いがある」と出てきました。次の妊婦健診のとき、ネットで調べた情報をもとに医師に質問をしたところ、「ダウン症ではなくて、先天性脊椎骨端異形成症の疑いがある」と言われました。
先天性脊椎骨端異形成症は、10万人に1人といわれるまれな骨の病気ですが、偶然、病院内にその病気の研究チームの中の1人である先生がいて担当医が相談したところ、その病気の疑いがあるのではという話になりました。

数週間前のエコー検査では、「女の子だろう」と言われていて、初めての女の子でとてもうれしかったんです。それなのに病気の可能性を言われて、急に目の前が真っ暗になり、どうしていいのかわからなくなりました。

出生時の身長は38.4cm。標準から大きくはずれていた

生後6カ月ごろの美海さんと美佐子さん。

美海さんが生まれたのは、2012年5月上旬です。

――美海さんが生まれたときのことを教えてください。

美佐子 長男は、陣痛促進剤を使ってもなかなか生まれなくて緊急帝王切開で誕生しました。

そのため美海も、妊娠37週で、予定帝王切開で誕生しました。
予定日は、2012年5月24日でしたが4月末に妊婦健診を受けたら、「おなかが張っているし、ゴールデンウィークに入るから念のため入院してください」と言われて、急に入院することになってしまって・・・。
当時長男は、幼稚園に入園したばかりで、「赤ちゃんが生まれるときは、ママ、入院するから少し会えないね」「5月24日ぐらいに赤ちゃんが生まれるよ」と話していたのですが、予定より早く入院することになってしまい、長男も不安だったようです。

入院中は、私の両親にも長男をみてもらったのですが、幼稚園の入園と母親の急な入院が重なり、ストレスがたまったようで「頻尿になり、トイレにばかり行くようになってしまった」と実母から聞きました。長男にも、かわいそうなことをしてしまったな・・・と思っています。

――美海さんは、元気に誕生したのでしょうか。

美佐子 産声がしっかり聞こえました。生まれたばかりの美海を見た瞬間「かわいいし、とても元気だ!」と安心したのを覚えています。美海は、呼吸が少し乱れていたので、生まれてすぐNICU(新生児集中治療室)がある大学病院に救急搬送されました。
美海の出生時の身長は38.4cm。体重は2456g。成長曲線で見ると、体重は標準ですが、身長は標準から大きくはずれていました。

――美海さんは、いつごろ退院したのでしょうか。

美佐子 美海は、NICUに4日間入院して、出産した産科クリニックに戻ってきました。産科クリニックに2日入院して、親子で一緒に自宅に戻りました。

生まれて間もなく、先天性脊椎骨端異形成症と判明

きょうだいで七五三のお祝い。「美海さんが1歳を過ぎるまでは、2人の子育てに追われ、心に余裕がなかった」と美佐子さん。

美海さんが診断された、「先天性脊椎骨端異形成症」は、2型コラーゲン異常症関連疾患です。2型コラーゲンは、骨や結合組織を構成するタンパク質で、その遺伝子の変異によって発症し、低身長や背骨が曲がる側弯症、X脚、O脚などさまざまな症状がみられます。現代の医療では、有効な治療法がなく、対症療法が中心です。

――美海さんが、先天性脊椎骨端異形成症と診断されたのは、いつごろでしょうか。

美佐子 生まれて間もなくです。遺伝子検査をして、先天性脊椎骨端異形成症と言われました。診断を聞いたときは、妊娠中に医師からも言われていたので「ああ、やっぱり・・・」と思いました。夫ともこれからのことを話しましたが、夫は「前を向いてやっていこう」と言っていました。あのころは夫婦で、いろいろな不安や葛とうを抱えていました。
先天性脊椎骨端異形成症は、10万人に1人といわれる難病で、当時はインターネットで検索しても情報があまりないんです。そのため余計に不安が募りました。

――診断されてからの生活について教えてください。

美佐子 美海が生まれて1年ぐらいは、ほとんど記憶がありません。上の子が幼稚園に行っている間に、1人で泣いてばかりいたことだけは覚えています。これから先のことを考えると不安で、気づくと涙があふれていて、止まらなくなってしまうんです。

――2型コラーゲン異常症は、難聴や重度の近視、口蓋裂などの症状もみられますが、美海さんはどうでしたか。

美佐子 美海は、生まれてすぐに難聴を疑われました。新生児聴力検査で反応が乏しい「リファー」と言われて、大学病院で何度か再検査を受けたのですが、結果は同じ。
でも、私が声をかけると振り向くし、大きな音がするとびっくりするので、私は「聞こえているのでは?」と思っていました。
その後、1歳1カ月で受けた再検査で、聴力は問題ないと言われ、とてもほっとしました。

1歳になって前を向けるように

地域の子育てサークルに参加する、3歳の美海さん。

美佐子さんは、美海さんが1歳を過ぎるまで病気のことは、本当に親しい人にしか伝えていなかったと言います。

――美佐子さんが、前を向けるようになったきっかけを教えてください。

美佐子 美海が1歳の誕生日を迎えてから、育てていくことに少し自信がもてるようになったのが大きかったと思います。

この病気の特徴でもあるのですが、美海は、発達もゆっくりでした。首がすわったのは生後8カ月ごろ。それまでは首がなかなかしっかりしないので、横抱きでのお世話がメインになりますし、おふろや着替えなども首がすわっていないので緊張しました。
でも美海は、よく笑って明るく、好奇心旺盛な性格で、1歳を迎えてから「この子なら、きっと大丈夫」と思えるようになったんです。

歩き始めたのは2歳です。2歳のときの身長は、62cmで生後4カ月ほどの赤ちゃんと同じぐらいです。

――まわりの人たちに、病気のことを伝えるようになったのは、いつごろからでしょうか。

美佐子 美海が1歳半を過ぎてから、少しずつ病気のことを伝えるようになりました。

病気のことをオープンにしたことで、いろいろなことが変わり始めました。上の子が幼稚園入園前に入っていた地域の子育てサークルで代表がとても面倒見のいい方だったんです。その方に、美海の病気のことを話したら「美海ちゃんも一緒に遊ぼうよ」と言われて、美海もサークルに参加するようになりました。
夫にも「一緒に活動しよう」と声をかけました。家族で、いろいろな人とつながることが大切だと思ったんです。

また、そのころかかりつけの病院を探していたのですが、小児専門病院では「申し訳ないのですが、うちでは力になれません」と言われてしまって・・・。でも医師が、ちょうど2型コラーゲン異常症の子どもをもつ親の交流会の開催があることを教えてくれて、参加しました。参加者は、5家族くらいでした。そこで知り合ったママたちと家族で交流会をしたり、活動をしたりしました。だんだんと人数も増え、そして、のちに2型コラーゲン異常症患者・家族の会が立ち上げられました。

――最近は、どのような活動をされていますか。

美佐子 夫は、2型コラーゲン異常症患者・家族の会の本部委員や、地域のパラスポーツの役員として活動しています。
私は同じ地域に住み、さまざまな障害や大きな病気を抱える子どもをもつママ・パパたちと活動しています。地域の人たちとつながると、共通の話題が多いし、何かあったときにすぐに会って相談できるので心強いです。

私が前向きになれたのは、支えてくれた人々のおかげです。0歳代の美海をお世話しながら、不安で泣いていたころの自分には、「大丈夫。1人じゃないよ。だから、もう泣かないで」と伝えてあげたいです。

お話・写真提供/橋本美佐子さん 協力/2型コラーゲン異常症患者・家族の会 取材・文/麻生珠恵 編集・構成/仲村教子(entente)、たまひよONLINE編集部

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先天性の骨の病気と低身長、それでも『美海なら大丈夫』。ピアノで才能を開花させた少女【先天性脊椎骨端異形成症】

先天性脊椎骨端異形成症を含む、「2型コラーゲン異常症」の患者数は全国で約1500人といわれる、まれな病気です。2型コラーゲン異常症患者・家族の会では、「専門医が少ないこと」「対症療法が中心で、症状ごとにさまざまな診療科に通うため通院負担が大きいこと」、さらに「国の指定難病に認定されていないこと」などのさまざまな課題解決に向けて活動しています。

インタビューの後編は、美海さんの成長やピアノを始めたこと、初めて開催したソロリサイタルについて聞きます。

「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。

2型コラーゲン異常症患者・家族の会のサイト

橋本美佐子さん(はしもとみさこ)・美海(みう)さん



PROFILE
【美佐子さん】高校3年生の長男と、中学2年生の美海さんを育てる。障害や大きな病気をもつ子どもを育てる地域のママ・パパと一緒にサークル活動を行う。スワロフスキーなどを埋め込んで作るアクセサリー・グルーデコのJGA認定講師で、随時教室を開催。
【美海さん】2012年5月生まれ。生後間もなく、先天性脊椎骨端異形成症と診断される。5歳からピアノを習い始め、2024年に開催された「第9回ベートーヴェン国際ピアノコンクール アジアB2部門 銀賞受賞」、「第4回イブラ・グランド・アワード・ジャパン」、2025年に開催された「第33回 ヤングアーチストピアノコンクール 独奏部門 Dグループ」で入賞するなど、数々の賞を受賞。

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2026年4月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

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