骨肉腫は主に骨に発生する悪性腫瘍の一種です。骨肉腫は進行すると骨を破壊し、痛みや腫れを引き起こします。早期発見・治療が重要ですが、「レントゲンで骨肉腫がわかるのか?」と疑問に思う方も多いでしょう。本記事では骨肉腫とはどのような病気か、検査方法や診断の基準、そして治療法を解説します。

監修医師:
木村 香菜(医師)
名古屋大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院や、がんセンターなどで放射線科一般・治療分野で勤務。その後、行政機関で、感染症対策等主査としても勤務。その際には、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。
骨肉腫とは

レントゲンでわかるかどうか解説する前に、本章では骨肉腫とはどのような病気かについて解説します。
骨肉腫の概要
骨肉腫は骨を形作る細胞から発生する原発性骨悪性腫瘍です。腫瘍細胞が類骨や骨そのものを作り出すのが特徴で、これが顕微鏡下の病理検査で確認されると骨肉腫と診断されます。骨肉腫は骨にできるがんのなかで最も頻度が高い代表的ながんであり、患者さんの約60%は10~20歳代の成長期に発症します。好発部位は脚の骨の膝関節に近い部分が多く、次いで腕の骨の肩に近い部分(上腕骨近位部)などが多く報告されています。まれに骨盤や脊椎など体幹の骨にも発生することがあります。男女比ではやや男性に多く、約1.5:1とされています。
骨肉腫の原因
骨肉腫の明確な原因は現在のところわかっていません。多くの場合、発症の背景に特定の遺伝子異常や遺伝的素因は見られず偶発的に発生すると考えられています。しかし、がん抑制遺伝子の異常が原因となるリ・フラウメニ症候群(LFS)という遺伝性腫瘍症候群の方では骨肉腫を発症しやすいことが知られています。ほかにも、網膜芽細胞腫や骨の良性疾患などが関与することがあります。
骨肉腫の症状
骨肉腫の初期症状としてもっとも多いのは、患部の痛みと腫れです。例えば、膝や肩といった骨肉腫ができやすい関節周辺に、運動時や歩行時に痛みを感じるようになります。痛みは数週間から数ヶ月かけて徐々に強くなり、次第に安静にしていても痛むようになることがあります。患部に腫瘤や腫れが生じてくるのも特徴で、触れると熱感を伴う場合もあります。また、腫瘍が大きくなると周囲の関節の動きが制限され、脚にできた場合は足を引きずるようになることもあります。
骨肉腫の検査方法

骨肉腫が疑われる症状がある場合、画像検査や血液検査を組み合わせて総合的に評価します。以下に各検査方法の概要について解説します。
レントゲン
レントゲン写真は骨肉腫を含む骨の腫瘍の初期検査としてよく行われます。X線画像で骨の内部に異常が認められれば、骨腫瘍が疑われます。骨肉腫の場合、レントゲン写真上では骨が虫食い状に破壊されていたり、逆に腫瘍によって不規則な新しい骨が形成されている様子が写ります。例えば、骨の一部が黒く抜け落ちたように写る部分と、周囲に白くモヤモヤとした影が混在するのが典型的な所見です。こうしたレントゲン所見は骨肉腫を強く示唆します。
CT、MRI
CT検査やMRI検査は、レントゲンで判明した骨腫瘍の状態をより詳しく評価するための画像検査です。MRIは特に腫瘍が骨の外に広がっている範囲や、周囲の筋肉・神経・血管などへの浸潤を調べるのに適しています。骨肉腫は骨の中だけでなく骨の外側にも腫瘤を作る傾向がありますが、この骨外への腫瘍部分はレントゲンでは見えにくいため、MRIで詳細に確認します。一方、CTは骨の細部構造の描出に優れ、骨の微細な破壊状況を把握したり、肺への転移の有無を調べる際に用いられます。
骨シンチグラフィー
骨シンチグラフィー(骨シンチ)は、放射性同位元素を使った骨の検査です。少量の放射性物質を注射し、骨の代謝が活発な部分に集まる性質を利用して全身の骨の状態を調べます。その結果、腫瘍がほかの骨に転移していないかを画像で確認することができます。骨肉腫は肺以外では骨への転移がしばしば見られるため、骨シンチグラフィーで全身の骨をスクリーニングすることが重要です。
血液検査
骨肉腫に特異的な血液検査の腫瘍マーカーはありません。多くの場合、血液検査をしても特別な異常所見はみられませんが、一部の骨肉腫患者さんではアルカリフォスファターゼ(ALP)という酵素の値が高くなることがあります。ALPは骨を作る細胞が活発に働くと上昇する酵素で、小児では成長に伴いもともと高めですが、骨肉腫で骨形成が盛んに行われているとさらに高値になることがあります。そのため、治療前に高ALP血症を認めた場合は、術前化学療法に対する反応や治療後の再発などの目安としてモニタリングに使われることがあります。
生検
最終的に骨肉腫と確定診断するには、生検による病理組織検査が必須です。生検とは腫瘍の一部を採取して顕微鏡で調べる検査のことで、骨肉腫の場合は針生検か切開生検で検体を採取します。採取した組織を病理医が顕微鏡で観察し、腫瘍細胞が骨や類骨を作っていることを確認して骨肉腫と診断します。

