中高年の体の痛み、諦めていませんか? 保険適用の「ハイドロリリース」とは?【医師解説】

中高年の体の痛み、諦めていませんか? 保険適用の「ハイドロリリース」とは?【医師解説】

慢性的な肩こりや腰の痛み、肘・膝・足首などの関節の違和感……。湿布や痛み止めを使ってもなかなか改善せず、「もう治らないのかも」と不安になる人も少なくありません。そんな中、近年注目されているのが「ハイドロリリース」という治療法。今回は、この「ハイドロリリース」がどんな症状に効果が期待できるのか、治療の流れや注意点などについて、梶谷先生(上野原梶谷整形外科)に解説してもらいました。

梶谷 光太郎

監修医師:
梶谷 光太郎(上野原梶谷整形外科)

東京慈恵会医科大学卒業、その後、東京慈恵会医科大学や県立厚木病院(現・厚木市立病院)、谷津保健病院などで経験を積む。2007年、山梨県上野原市に「上野原梶谷整形外科」を開院、院長となる。日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会認定リウマチ医、日本整形外科学会認定スポーツ医。

まずは知っておきたい、ハイドロリリースの基本

まずは知っておきたい、ハイドロリリースの基本

編集部

ハイドロリリースとはどのような治療法ですか?

梶谷先生

超音波診断装置(エコー)を用いて、痛みの原因となっている神経や筋膜、腱の周囲に薬液を注入し、回復を図る治療法です。なんらかの原因で組織の滑走障害(組織同士の滑りが悪くなる状態)や、組織の癒着などが起こって動きが悪くなっている部位をリリースする(剥がす)ことで、「動き」と「痛み」の両方の改善を図ります。

編集部

どんなメカニズムで痛みが取れるのですか?

梶谷先生

私の見解では「神経の本来の機能を取り戻す」という感覚を持っています。神経や筋膜などの周囲組織が滑走障害や癒着を起こして動きが悪くなると、痛みが出やすくなります。そこに薬液を注入することで組織が剥がれ、滑らかに動くようになるため、痛みの根本的な原因にアプローチできるのです。

編集部

どんな薬液を使うのですか?

梶谷先生

生理食塩水や、ごく少量の局所麻酔薬を使用することが多いです。障害などで激しい痛みを伴う場合などに少量のステロイドを併用することもありますが、基本的には体に優しい薬剤を使用しておこないます。

編集部

注射は痛いですか?

梶谷先生

個人によって痛みの感じ方に差はありますが、細い針を使いますし、エコー下で正確に目的の場所に打つことができるため、通常の筋肉注射よりも痛みは少ないと思います。なぜなら、神経そのものではなく、神経の周りに打つため痛みを感じにくいのです。もちろん、治療中に強い痛みがある場合は無理に進めず、状況を確認しながら慎重に対応します。

ハイドロリリースが適している人、効果が期待できる症状とは?

ハイドロリリースが適している人、効果が期待できる症状とは?

編集部

どんな症状の人が対象になりますか?

梶谷先生

肩こり、腰痛、膝痛、足のしびれ、頭痛や首の痛みなどほぼ全ての痛みやしびれ、筋力低下に対応できます。神経や筋膜、腱などの痛みであれば、かなりの高い確率で効果が期待できます。

編集部

スポーツ障害にも使えるのでしょうか?

梶谷先生

そうですね。野球肩やテニス肘、腸脛靭帯炎(ランナー膝)など、スポーツによる局所的な痛みにも有効です。再発予防のためには、ハイドロリリースだけでなく運動療法と組み合わせるのが理想的です。

編集部

中高年の症状にも使えますか?

梶谷先生

もちろんです。坐骨神経痛などに対しても高い効果が期待できます。肩関節周囲の神経や坐骨神経を治療することで、動かしにくさが改善され、さまざまな日常生活動作がしやすくなることも期待できます。

編集部

多くの症状に対応できるのですね。

梶谷先生

そうですね。ハイドロリリースによる治療のメリットはいくつかありますが、まずは、幅広い症状に対し効果が期待できること、そして、症状の根本にアプローチするので効果が持続しやすいこと、そして、エコーを見ながらおこなうので、患者さん側も視覚的に理解し、納得しながら治療を受けられることです。我々医療者側も、エコーを見ながら治療し、効果を確認することで、「ここがこうだったから痛かったのか」とより確信を持つことができます。

配信元: Medical DOC

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