
監修医師:
林 良典(医師)
消化器内科
呼吸器内科
皮膚科
整形外科
眼科
循環器内科
脳神経内科
眼科(角膜外来)
腸管アメーバ症の概要
腸管アメーバ症は、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)という原虫が大腸に感染し、炎症を引き起こす疾患です。
感染経路の中心は糞口感染であり、汚染された水や食物を介してシスト(嚢子)が体内に取り込まれることによって成立します。また、口腔・肛門接触を通じて感染する性感染症としての側面もあり、特に男性間性交渉(Men who have Sex with Men:MSM)を介した感染が国内でも増加しています。
従来は海外渡航歴のある方に多い輸入感染症として認識されていましたが、現在では国内感染の報告が年々増加しています。都市部を中心に、無症候性キャリアによる感染拡大が社会的な課題となっており、知らないうちに感染しているケースも少なくありません。多くの感染者さんは自覚症状がないまま生活しており、気付かないうちに周囲に感染を広げてしまうリスクがあります。
症状が現れると、軽度の下痢から、急激な腹痛と血性下痢を伴う劇症型アメーバ性腸炎まで、幅広い病態を示します。さらに、腸管外へ波及し、肝膿瘍や脳膿瘍といった重篤な合併症を引き起こすこともあるため、早期発見と的確な治療介入が重要です。
腸管アメーバ症の原因
赤痢アメーバは、環境中で長く生存可能なシスト(嚢子)と、腸管内で活動的に増殖する栄養型の2つの形態を持っています。感染は主に、口から取り込まれたシストが小腸で栄養型に変化し、大腸へ移動して粘膜を侵襲することで発症します。侵襲が起こると、腸粘膜にびらんや潰瘍が形成され、炎症を引き起こすことになります。
発展途上国では、水や食物を介した経口感染が多くみられますが、日本などの先進国では性感染症としての性格が強く、特にMSMの方や性風俗業に従事されている方に感染が多く確認されています。さらに、HIV感染症など免疫抑制状態にある方では、通常よりも重症化しやすい傾向があります。

