腸管アメーバ症の前兆や初期症状について
腸管アメーバ症は、感染しても無症候性で経過する方が多く、自覚症状が乏しいまま長期間生活していることもあります。しかし、発症すると、まず下痢や粘血便といった消化器症状が現れます。また、腹痛やしぶり腹(テネスムス)を訴える方も多く、排便後も便意が残るような感覚が続くのが特徴です。
このような消化器症状に加え、発熱や全身倦怠感、食欲不振、体重減少といった全身症状を伴うこともあり、日常生活に支障をきたす場合もあります。これらの症状は、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患とよく似ているため、誤って診断されるリスクもあります。正確な診断のためには、内視鏡検査や便の顕微鏡検査、PCR検査などを組み合わせた総合的な評価が必要です。
症状が進行すると、劇症型アメーバ性腸炎となり、腸管穿孔や腹膜炎といった命に関わる合併症を引き起こすことがあります。さらに、血行性に広がって肝膿瘍や脳膿瘍などの腸管外病変を来すこともあり、放置すると急速に全身状態が悪化するおそれがあります。
このような症状がある場合には、自己判断を避け、できるだけ早く消化器内科または感染症内科を受診しましょう。
腸管アメーバ症の検査・診断
腸管アメーバ症を調べるためには、まず便の検査が行われます。これは、便の中に赤痢アメーバと呼ばれる病原体がいるかを確認する方法です。便をそのまま顕微鏡で観察する方法や、病原体を集めて調べる検査(集卵検査)は、保険が使える基本的な検査です。
ただし、検査の精度は技術者の経験によって差が出るため、見逃しを防ぐには複数回検査を行うことが多いです。
より簡単で早く結果がわかるのが迅速抗原検査です。専用キットを使って、30分以内に判定できます。精度は高いですが、便の中に病原体が少ないと見逃すこともあるため、陰性でも完全には安心できません。もっと確実に調べる方法として、PCR検査という遺伝子検査があります。精度はとても高いですが、現在は保険が使えず、限られた施設でのみ受けられます。
また、腸の中を内視鏡(カメラ)で調べ、粘膜に傷や潰瘍がないか確認する方法もあります。必要に応じて腸の一部から小さな組織をとり、赤痢アメーバがいるかを顕微鏡で確認します。ただし、組織に病原体が含まれていないと検出できないこともあるため、ほかの検査とあわせて判断します。
腸管アメーバ症は、潰瘍性大腸炎やクローン病といった腸の病気と似た症状を示すことがあります。そのため、見た目や症状だけではなく、検査結果を総合的に判断することが大切です。
まれに肝臓に膿がたまるアメーバ性肝膿瘍という合併症が起こることもあります。これが疑われる場合は、超音波やCT、MRIといった画像検査を行い、必要があれば膿を採って詳しく調べます。血液検査も併せて行い、身体の炎症や肝臓の状態をチェックします。

