腸管アメーバ症の治療
腸管アメーバ症の治療は、抗アメーバ薬を用いた薬物療法が基本となります。活動性の感染が確認された場合には、メトロニダゾールを7〜10日間投与し、腸管内の栄養型アメーバを除去します。その後、シストの駆除を目的として、パロモマイシンといった腸管内作用型薬剤を10日間投与します。この2段階の治療によって、再発や保菌状態の残存を防ぐことができます。
重症例では入院管理のうえ、点滴による補液や電解質の補正、発熱や脱水への対処を行います。特に高齢者や免疫不全のある方では、全身状態の悪化に注意しながら慎重な治療が求められます。肝膿瘍を伴う場合には、抗アメーバ薬に加えて、膿瘍のドレナージが必要となることがあり、感染症科や消化器外科との連携が必要となります。
治療終了後も、再感染や残存感染の有無を確認するために、フォローアップとして便検査や腹部画像検査を数週間後に再実施することがあります。HIV感染症など免疫機能が低下している方においては、長期間の治療と再発防止の観点から、感染管理の継続が重要になります。治療後の生活管理にも注意を払う必要があります。
腸管アメーバ症になりやすい人・予防の方法
腸管アメーバ症は、発展途上国への渡航歴がある方や、国内でも不特定多数との性的接触がある方でリスクが高まります。特に、MSM(男性間性交渉者)、性風俗に従事している方、またHIV陽性の方は、免疫機能の低下や接触機会の多さから発症の頻度が高いとされています。さらに、無症候性キャリアからの感染もあるため、知らないうちに感染しているケースもあります。
予防の基本は、赤痢アメーバのシストを体内に取り込まないことです。飲料水は浄化処理されたものを使用し、生野菜や果物はよく洗浄し、加熱処理された食品を選ぶなどの食事衛生に注意が必要です。旅行や滞在時には、現地の水道水や氷、生ものを避けることが効果的です。感染地域への渡航時には特に注意を払いましょう。
また、性感染症としての側面を踏まえた予防策も大切です。粘膜接触を伴う性行為の際にはコンドームを使用することが推奨されており、感染リスクが高いとされる行動を取る方は、定期的な検査と医療機関でのフォローアップを受けることが望ましいとされています。症状がない場合でも、感染を疑う状況がある場合は、早期の医療機関受診と検査によって、重症化のリスクを未然に防ぐことが可能です。
地域社会での感染拡大を防ぐためには、個人の衛生管理だけでなく、周囲への配慮や公衆衛生的な対策も重要であり、啓発活動や検査体制の整備が今後ますます求められます。感染症としての正しい理解と予防行動の実践が、発症の予防と流行の抑制につながります。
関連する病気
アメーバ赤痢
肝膿瘍
参考文献
アメーバ赤痢|国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト
赤痢アメーバ症|日本性感染症学会 ガイドライン(2008年)
赤痢アメーバ症(Amoebiasis)|日本感染症学会
赤痢アメーバについて|国立国際医療センター

