脳の血管が詰まり血流が悪くなることで、血管が細くなる・血栓ができるなどして脳細胞に障害が起こる病気が脳梗塞です。
高齢者が寝たきりになる原因の多くを占める脳梗塞は、初期段階での早期治療が大切といわれています。
そこで今回は脳梗塞についての質問にお答えしましょう。検査や治療方法など詳しく解説しています。
また前兆となる症状についても紹介しているので、早期発見のための参考にしてください。
※この記事はメディカルドックにて『「脳梗塞」とは?症状・原因・治療法についても解説!【医師監修】』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。
脳梗塞の検査と治療方法

受診を検討する目安を教えてください。
脳梗塞を疑う症状、顔の半分が歪む・片手が麻痺する・言語障害があるなどの異変がある場合には1分でも早い治療が必要になります。救急車を手配するなど早急な対応をしてください。初期症状を見逃さないことが大きなポイントとなります。初期症状では一時的に数分で症状が改善する一過性脳虚血発作がありますが、その後多くが脳梗塞を発症しているためこの場合も受診が必要です。脳梗塞の場合は発症からの時間がその後の状況に大きく関わります。おかしいと感じたら躊躇せず受診することが大切です。
検査にはどのようなものがありますか?
脳梗塞の疑いで受診した場合、まず医師は血圧を測り心臓の聴診を行い同時に問診を行います。そして次の検査を行います。
血液検査
頭部CT検査
MRI検査
超音波検査
血液検査では血糖値や感染症の有無を確認できます。脳梗塞の早期診断に必要なCT検査は脳の詳細な画像が作成され脳内の出血や血栓を発見するために行われる検査です。必要に応じてその他MRI検査や超音波検査などが行われます。
脳梗塞の治療方法が知りたいです。
脳梗塞と診断された場合、次のような方法で治療が行われます。
血栓溶解療法
脳カテーテル治療
薬剤治療
血栓溶解療法は脳梗塞の原因となった血栓を溶かし、再び血液を流れるようにするための治療です。発症から4.5時間以内に治療が可能とされる人のみ受けられます。t-PAと呼ばれる薬剤を静脈に点滴する方法ですが、大動脈解離を疑われる人・過去に大きな手術をした人・脳出血を起こした人には適応されません。脳カテーテル治療は直接カテーテルを血管内に挿入する治療法で、血栓回収術と局所線溶療法の2通りの方法があります。血栓回収術はカテーテルを血管内に挿入して血栓を取り除き、再び血流を開通させる治療法です。ただしこの治療法は症状が出て6時間以内で脳の中でも大きな動脈が詰まった場合に行われることが推奨されています。局所線溶療法はカテーテルを血栓の近くに挿入し、薬を注入して血栓を溶かす方法です。この局所線溶療法は、血栓回収術で取り切れなかった血栓に使われることが多いです。血栓溶解療法・脳カテーテル治療以外の方法として薬剤による治療も行われます。薬剤治療では次のような薬が処方されます。
抗血小板薬
抗凝固薬
脳保護薬
抗浮腫薬
これら薬剤による治療は脳梗塞の拡大防止・再発防止目的もあり発症の初期段階から取り入れられています。
編集部まとめ

脳梗塞について質問にお答えしました。脳梗塞は何よりも発症して治療開始までの時間が生命予後や臨床経過に大きく差をつける病気です。
すこしでもおかしいと気付いたらすぐに救急車を呼び治療を行うことで、後遺症を残さず日常を取り戻すことが可能なのです。
脳梗塞ではと思ったら、まずは一分でも早く受診しましょう。
そして日頃から脳梗塞にならないために今一度生活習慣の見直しを心掛けるようにしてください。
参考文献
近年増加する脳梗塞 どんな症状が現れる? 異変に気付いたら?|Medical None
脳梗塞の4つの前兆症状|疑いのある症状とチェックリストを説明|健達ねっと
脳梗塞の治療法にはどのようなものがあるか|わかりやすい脳梗塞の予防ガイド

