
金曜ドラマ「田鎖ブラザーズ」(毎週金曜夜10:00-10:54、TBS系)の第4話が5月8日に放送され、前回から続く金塊強奪事件が絡んだ放火殺人事件の真相が明かされた。そこには、事件に関与した者たちのつらい過去があった。(以下、内容のネタバレを含みます)
■時効になった両親殺害事件の真犯人を追うクライムサスペンス
本作は、時効が成立してしまった31年前の両親殺害事件の犯人を探すために警察官になった兄弟が、日々起こる凶悪事件事件と立ち向かいながら両親の事件の真相を追っていく、完全オリジナルのクライムサスペンスである。
■放火殺人事件のあらまし
あるアパートの一室に火の点いたチラシが投げ込まれ、その部屋の住人・水澤愛子(武上陽奈)が死亡。部屋からは1億円相当の金塊が見つかり、1年前に秋田県で起きた未解決の4億円相当の金塊強奪事件が絡んでいることが判明した。事件直前に水澤が「東郷さんのことで話がある」とメッセージを送った、彼女の友人・横倉沙紀(石川瑠華)によれば、水澤は、その“東郷”という男につきまとわれていた」とのこと。東郷は、強奪犯の1人か指示役、と真(岡田将生)たちは推測した。
水澤の部屋に放火したと見られる、強奪事件の際に防犯カメラに映っていた“首にタトゥー(実際はアザ)のある男”・平中勇吾(福松凜)は逃走。平中と東郷が共謀して、水澤を追っていたのでは?との見立てで、平中の部屋を捜索することにした。

■放火殺人の容疑者が死亡
平中の部屋からは、金塊は見つからなかった。おそらく逃走の際に持っていたスーツケースの中に入れたのだろう。部屋にあった数枚の幼少時代の写真には、平中と共に水澤と横倉と思われる少女ともう1人の少年が写っていた。
そんな中、平中の死体が見つかった。背中に9ヶ所の刺創があり、その1つが致命傷となった。防御創が無いことから、顔見知りの犯行と思われる。犯行時刻の頃の防犯カメラには平中のスーツケースを引く人物が映っており、仲間割れをして平中を殺し、金塊を奪った可能性が高い。
重要参考人として話を聞く為に横倉宅に向かうと、彼女はおらず、部屋は荒らされ血痕も見つかった。東郷に拉致されたのだろうか…。

■強奪グループ4人は幼なじみ
手がかりを得る為、真と詩織(中条あやみ)は秋田県へ。平中の写真に写っていたこども食堂を見つけ、従業員に話を聞くことができた。従業員によれば、平中ら4人は親に苦労していて、こども食堂ではいつも一緒にいたとのこと。「自分たちと同じように様々な事情を抱えた子どもたちに来てもらえる店を、いつか4人で開きたい」とよく話していたそうだ。
平中・水澤・横倉と共に写真に写っていた少年は、吉本ゆずる(松本大輝)と判明。従業員は“東郷”という名前には聞き覚えがないと言い、幼なじみの4人が実行犯で東郷は指示役なのだと真は考えた。
吉本は病身の母親の介護をしてきたヤングケアラー、横倉の父親は借金を抱え、水澤の父親は詐欺で服役中…彼らのつらい生い立ちを知った真は「調べなきゃよかった…」と、やるせない気持ちを稔(染谷将太)に打ち明けた。
それを聞いた稔は「でも、必死に生きてきたんだろう。子どもだけで…」と言い、真も「そうだな…」と、両親を失い2人だけで生きてきた自分たちと重ね合わせるのだった。
■「横倉に騙された」
吉本も現在、神奈川県に住んでいた。4人で秋田から逃げてきたのだろう。吉本に任意同行を求めると、すぐに事情を察した彼は「騙されたんです」と言い、横倉から「4人で金塊を盗む」と話を持ちかけられたのだ、と話し始めた。横倉は「指示役の東郷って男に誘われた」と告げ、「金塊の持ち主は、税金対策で“盗まれた”という名目が欲しいだけ。警察に追われることは無い“出来レース”の強盗」と説明された、とのことだった。
4億円の金塊を盗んだ報酬は、1人30万円…。「たったそれだけで強盗を?」とあきれる刑事の石坂(宮近海斗)に、吉本は「そもそも捕まるわけないと思ってたし…オレらには、それで充分」と告げた。30万円“も”あれば介護士に母親を預けられ、短い時間でも自由になれるのだ、と語る吉本の言葉を、真はつらい表情で聞いていた。
金塊を持ち逃げした4人は、それぞれ1億円ずつ分け、横浜のヤミの質屋で現金化して、親の借金の返済や、母親を入れる介護施設への資金にしたようだ。真たち刑事課の面々は、カネが必要な4人をそそのかし騙した東郷への怒りがこみ上げた。
吉本は、東郷とは会ったことも話したこともないとのことで、刑事課は、唯一、東郷と繋がっている行方不明の横倉を探すのだった。

■“東郷”は女性と判明
一方、稔は検死の時から、平中に浅い刺創が複数あったことが気になっていた。強い殺意があれば、深く刺しこまれるはずだ。だが、真は「誰かが来るかもしれない、と焦ってザクザク刺せば、浅い時もある」と相手にしなかった。しかし、稔は東郷と思われる犯人の歩幅の狭さも気になり、姿が映っている防犯カメラを“歩容解析”(歩き方などを分析すること)に回すことにした。
その結果、東郷は約90%の確率で女性だと判明。刺創の深さに違いがあったのは、筋肉が少ないからだったのだ。

■「別に後悔はしてないから」
晴子(井川遥)の情報で「今、金塊が持ち込まれた」という質店に共に向かっていた真は、稔からの連絡を受け、質店から出てきた女性を追った。換金したばかりの札束を整理するその女性に、真が「横倉!」と声をかけると、彼女は「あーあ、バレたか。ワザワザ腕まで切ったのになー」と、開き直った態度を見せた。“東郷”は、横倉だった…。
“東郷”は横倉の家に毎日借金の取り立てにやって来た男の苗字で、彼女は架空の指示役の名前として使ったのだった。“東郷”などいないことに気付き、横倉のでっちあげを疑い始めた水澤に「東郷はいる」と思わせなければ…と横倉は画策。平中に「水澤が自首しようとしてるから、少し脅せば考え直すかも」とウソを吹き込み、彼を焚き付けた。
そして、平中は放火を実行。だが、水澤が在宅しているとは知らなかった…。自責の念にかられた平中は「自首して全部話す」と横倉に告げ、焦った彼女は平中を殺してしまったのだった。
事のてん末を話し終えた後、横倉は「別に後悔はしてないから」と言った。そして、連行される車の中から、繁華街で遊ぶ若者たちの姿を見て、「あんな家に生まれたかったな…」と呟いた。自分たちは皆貧しく、夢も無く生きるか悪事に手を染めるしかなかった、と語り始めた横倉。「だけど、カネがあれば全部変わる…カネさえあれば…」と言う彼女に、真は「それでどうなった?思い通りになったか?」と尋ねた。横倉はそれには答えず「私がこうなったのは、全部親のせいだから」と怒りを込めて言った。

■夢だったキッチンカー
警察署に着くと、署の前に、今日、水澤の自宅に納車されたというキッチンカーが停まっていた。業者によれば、水澤は「友人と4人で店を始める」と嬉しそうに話していたそうだ。
水澤は、金塊を1枚も換金していなかった。ということは、自分の貯金でキッチンカーを買ったのだ。3人が使い込んだ分を、子供の頃の夢を実現して皆で稼いで返すつもりだったのだろう。水澤は、約束を忘れていなかった。横倉は、4人で夢を語り合った時を思い出し、涙を流した…。
そんな彼女に、真は「“東郷”が本当にいれば良かったな」と声をかけ、後悔と自責の念でただただ泣くしかできない彼女は連行されていった。
結果的には4億円を山分けすることになったが、横倉は本当に3人には30万円だけ渡すつもりだったのだろうか…。だとしたら、親の借金で苦しんだとは言え、カネに執着して己の欲に溺れ、「少しでもラクになりたい」と願う3人の気持ちを利用したことになる。また、3人は「たった30万円」の為に人生を狂わせ、2人は命を失った…。
母親で苦労している詩織が「家庭環境で全てが決まるわけじゃない。どういう道を歩くかは自分次第」と言うように、4人には別の生き方もあったはず。何とも哀しい事件だった。
◆文=鳥居美保


