
今回紹介するのは、フリマアプリで売買された小包にまつわる少し怖くて不思議な体験談である。この漫画の作者は、現役の郵便局員である送達ねこ(@jinjanosandou)さんで、同僚たちが体験した話を漫画化していくうちに、次々に他局からも体験談が届くようになっていった。今回紹介する奇談は、配達中に小包の中身が破損したと、配達局から損害賠償担当へ荷物が送られてきたところから話は始まる。

損害賠償担当に回ってきた小包の中身は日本人形だった。その人形は手首がポッキリともげていた。補償を受ける権利は「荷送人」にあるので、損害賠償担当のシマダさんは連絡を取らなければならなかった。しかし何度電話をしても連絡が取れず、そのまま数日が経過。その間、シマダさんの周辺で妙な現象が起こりはじめた。
人形を置いているシマダさんのデスクの背後からカタカタと動くような音が聞こえてきたり、ケースに入れていた人形が別の場所に転げ落ちていたり、人形の髪が伸びてきているように見えたり…。いつまでもシマダさんの背後に飾っているわけにもいかず、「なんとかしないとな」と頭を抱えるシマダさんだったが、人形は一体どうなってしまったのか…?

本作『人形を償う』について送達ねこさんに詳しく話を伺ってみた。
――損害賠償担当という部署があるんですね!昨今、さまざまなものがネット上で取り引きされているので、壊れやすいものも多いのではないでしょうか?
そうなんです。ネット売買では破損時に代わりがきかない、取扱いに注意のいるお品物が少なくありません。「こわれもの」には引受け時に専用シールを貼りますが、可能でしたら箱に赤字で「ガラス」「ワレモノ」など大きく記載いただけますとパッと見てわかり、より注意が払われると思います。不幸にも輸送中に破損してしまった小包は担当者がデスクの近くで大切に保管し、対応が終了するまで同居関係を築きます。本作の市松人形もシマダさんが事務をしている間、ずっとそばでもの言いたげに控えていたそうです。
――見ず知らずの市松人形との同居…お互い居心地が悪そうですね。送達ねこさんも、損害賠償の担務に携わったことがあるそうですが、ほかにも変わったものが届いたエピソードはありますか?
局内では本当にさまざまなものが行き交います。実は運送業者の中で唯一郵便局だけが扱えるものに「遺骨」があります。陶器に収められているのでこれも「こわれもの」なのですが、ある局で外装がぐっしょり濡れた遺骨ゆうパックが、中継局からビニールに包まれた状態で到着したことがありました。配達先で確認いただいたところ、不思議なことに濡れているのは箱の下半分だけで中身はなんともなかったそうです。
――遺骨も配達されているとは知りませんでした!!輸送には神経をすり減らしそうですね。
遺骨の配達自体にも細心の注意を払いますが、遺骨には「墓じまい」など人間模様が色濃く現れるので、いろんな意味で神経を使います。別の局では親族間で送った「着払いの遺骨」が受取拒否をされ、差出人も返還を拒否したため、郵便部担当者はしばらく行き場を失ったお骨とデスクで同居することになったこともあります。

「郵便配達物」とひと言に言っても、私たちが想像する以上のさまざまな“もの”が運ばれている事実に驚きを隠せない。郵便配達員たちは単純に「モノを運ぶ」だけでなく、人間と人間の間を行き来する配達物を通して、さまざまな人間模様を垣間見ているようだ。心温まる光景もあれば、できれば見たくなかった憎悪もあるだろう。そんな現役の郵便局員が、実際に経験した不思議な話や怖い話を漫画化したのが『郵便屋が集めた奇談』である。読者からは「こういう不思議で怖い話って好き」「けっこう背筋がゾクッとしたけど、めちゃくちゃおもしろい…!」と好評だ。日本のどこかの町でひっそりと起こっている“怪異”を覗き見してみよう。
取材協力:送達ねこ(@jinjanosandou)
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