
波瑠と麻生久美子がW主演を務めるドラマ「月夜行路 -答えは名作の中に-」(毎週水曜夜10:00-10:54、日本テレビ系/Huluにて配信)の第6話が、5月13日に放送された。大阪の旅を通して“友達”になったルナ(波瑠)と涼子(麻生)。新たな東京編の始まりもシャーロック・ホームズとワトソンのような関係にもなって謎解きをした。(以下、ネタバレを含みます)
■バーのママ×専業主婦の異色バディによるミステリー
本作は、ミステリー作家・秋吉理香子氏の同名小説が原作の“痛快文学ロードミステリー”。
波瑠が演じるのは、重度の文学オタクである銀座のバー「マーキームーン」のママ・野宮ルナ。麻生は、仕事漬けの夫と反抗期の子どもにないがしろにされる主婦・沢辻涼子に扮(ふん)する。ひょんなことから出会った2人は、涼子の元恋人探しの旅に出て、そこで思いがけず事件に巻き込まれていく。
出演はほかに、涼子の学生時代の恋人・カズト役を作間龍斗(ACEes)、涼子の夫で大手出版社に勤める菊雄役を田中直樹、ルナの同級生で大阪府警の刑事・田村徹矢役を(柳俊太郎)、田村の元相棒・小湊弘樹役を渋川清彦が務める。
■ルナと涼子、田村は夜桜見物をしながら古書店へ
涼子の元カレ探しが目的の大阪の旅が終了。その中で出会った田村は警視庁で研修することになり、田村の相棒だった小湊は刑事を辞めて知り合いと人材派遣会社を立ち上げて東京へ。2人も加わっていく様相の東京編がスタートした。
ルナの従兄・正義(田村健太郎)が、ルナの母からパソコンのパスワードを解読してほしいと伝言を預かり、ルナの店にやって来た。「これ、あの人のパソコンでしょ」とルナ。“あの人”とはルナの父のことだった。
その会話からルナの家族関係が気になったルナは、小説家としてのルナを担当していた菊雄に聞いてみる。ルナは大病院の跡継ぎだったが、小説家を目指して医大を勝手に中退し、父親の怒りを買って家を飛び出した。それ以来、おそらく実家には帰っておらず、母親には戸籍を変えたことは打ち明けたが、父親には伝えていなかった。トランスジェンダーであることなどでルナがいろいろ抱えていると思いやる菊雄は「特にお父さんの件は彼女にとっては“人生の宿題”」なのだと語った。
そんな中、ルナから「今晩、お暇ですか?」と誘われた涼子。田村も一緒に夜桜見物に行くことになるが、ルナは下北沢にある古書店にも立ち寄りたいという。
それはパソコンのため。父とは確執があるが、恩がある母のために解読することにしたのだ。パスワード解読の手掛かりは、デスクトップの背景に設定された「吾輩は猫である」の初版本の画像。その初版本の復刻版を、6年前に謎解きサークルで一緒になったことがある古書店店主に取り置きをお願いしたのだ。
■古書店店主が巻き込まれた事件の謎
夜桜の下を歩きながら、ルナが坂口安吾の名作「桜の森の満開の下」を解説。そのうち古書店に着き、中に入ると店主の倉田(伊武雅刀)が頭から血を流して倒れていた。
田村は搬送される倉田に付き添い、ルナと涼子は刑事の矢野(前野朋哉)に状況説明をしようとするが、第一発見者として疑われる。田村によってルナたちの身元は証明されたが、矢野は2人が大阪で事件解決に協力したと知っても「捜査はお遊びとは違うんで」と冷たくあしらった。
すると、その言葉が癇に障ったのか、ルナが野田書房の芥川龍之介「地獄変」、江川版の川端康成「伊豆の踊子」、竹村書房の坂口安吾「黒谷村」という、合わせて数百万にもなる高価な本がなくなっていることを指摘。ただ、犯人が古書マニアであれば、店内に本をまき散らすことはしないはずとも予測した。
店内を鋭く観察していたルナだが、謎だったのはトレーに残されていた10円。そこに、この古書店を担当する宅配便の青年・鈴本(吉田晴登)がやって来て、蔵田の孫・さくらを見かけたが、彼女が店から出た直後にこつ然と姿を消したと証言した。そのとき、風もないのに桜の花びらが舞っていたという。
だが、さくらと彼女の両親は18年前に交通事故で亡くなっていた。
■トレーに残されていた10円に込められた思い
ルナと矢野の対立構造も面白かった第6話。大阪編では、田村はルナの同級生という関係であり、田村の相棒だった小湊はルナと同じ文学好きということもあって、事件解決にルナたちが協力することをすんなり受け入れていたというのが特殊だったのかもしれないが、東京編始まりの今回は古書店が事件現場ということもあり、ルナの文学での謎解きがますます冴え渡った。そして、大阪編でルナにヒントを与えた涼子の存在も、探偵ものの傑作であるシャーロック・ホームズシリーズにならって、明確に助手である“ワトソン”的に。
当初、倉田の認知機能低下が疑われ、店の近所で多発しているという特殊詐欺に引っかかったのではと矢野が推測。孫のふりをした受け子の女性が接触したというのだ。
だが、倉田はルナだからこそ分かるヒントを坂口安吾の3冊の本に託していた。「アンゴウ」、「夜長姫と耳男」、そして坂口安吾全集に収録されている「小さな山羊の記録」。そこから伝えようとしたのは、自分の耳が聞こえにくくなっていること。ルナは倉田がGPS機能のついた補聴器を、受け子の女性に渡した荷物に仕込んだことにたどり着いた。
物語はもうひと展開あった。涼子が坂口安吾の代表作の一つ「堕落論」の話から「桜の森の満開の下」に出てくる山賊夫婦について、夫が妻を「堕落から救おうとしたのかな」と解釈。そこでルナはトレーに置かれた10円の謎=倉田が受け子の女性(一ノ瀬美空)を救おうとしたことに気付いた。
女性に孫の姿を重ねた倉田は、彼女が現金を持ち去れば詐欺罪が成立してしまうと考え、代わりに高価な本を渡した。2冊は仲間に渡して納得させるようにし、彼女にも1冊。その代金として10円を受け取り、領収書を書くことで購入したという取引を成立させたのだった。
SNSには「10円にそんな意味があったんだ」「泣いてしまう」「倉田さん優し過ぎる」「静かに泣ける神回でした」「切なくて美しかった」などと反響があった。
坂口安吾の作品に彩られた東京編の開幕。あらたに縦軸として進むルナと家族との関係にも注目だ。
※柳俊太郎の柳は、「木」偏に「夘」が正式表記
◆文=ザテレビジョンドラマ部

