
妊娠できる健康な体を持つ女性が“子どもを産むための道具=侍女”となるディストピア世界を描き、エミー賞やゴールデングローブ賞を受賞したドラマシリーズ「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」。その新章となる「テスタメント/誓願」の第8話が、5月13日に配信された。主人公の1人・アグネス(チェイス・インフィニティ)は結婚が決まり、もう1人の少女にも体の変化が訪れ、少女たちの張り詰めた心情が映し出された。(以下、ネタバレを含みます)
■衝撃的な世界を描いた「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」から15年後が舞台
本作の原作は、「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」と同じくカナダの作家、マーガレット・アトウッド氏の小説。同氏にとって2度目となる権威あるイギリスの文学賞、ブッカー賞を受賞した作品だ。
「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」の世界観を引き継ぎ、約15年後の全体主義国家・ギレアド共和国が舞台。抵抗組織の台頭があったものの、ギレアドは国民を強固に支配し、あまりにも冷酷な階級社会が続いていた。特に女性は信仰を盾に財産や、読み書きさえも禁じられるなど、すべての権利を奪われ、上級司令官の令嬢たちすら、その暴力の犠牲になっていた。
監視の目が張り巡らされた中、リディアおば(アン・ダウド)が支配する上級司令官の妻になるための教育を施す学校「リディアおば学院」で2人の少女が出会った。1人は、ギレアドの特権階級である司令官の娘として、体制の内側で従順かつ敬虔に育てられてきたアグネス。もう1人は、国外からギレアドにやって来た新参者(改宗者)のデイジー(ルーシー・ハリデイ)だ。
■アグネスはクラスメートに起きた衝撃的なことを聞く
アグネスは、ウェストン司令官(リード・ダイアモンド)との結婚が決まった。そしてアグネスの親友のベッカ(マッテア・コンフォルティ)は、アグネスが恋するガース(ブラッド・アレクサンダー)と結婚することに。
複雑な思いが交錯する中、フルダ(イゾルデ・アルディエス)の様子がおかしいことに気付いたアグネスは、何があったのか問い掛ける。するとフルダは戸惑いつつ、歯の治療の際に、ベッカの父である歯科医師グローブ(ランダル・エドワーズ)から性的な暴力を受けたと打ち明けた。「私が悪い。自分の体でたぶらかしたから」とギレアドで育った娘らしく苦悩するフルダに、おばたちに相談しようと言うアグネス。他の生徒たちに知られるのを嫌がるフルダだったが、アグネスは「私がついている」と励ました。
ただ、そのときのアグネスの心には、後ろ暗いものが渦巻いていた。自分も同様に性被害を受けたと思われるが、麻酔が効いている間のことで記憶が曖昧なのをいいことに、フルダに告発する役目を押し付けようとしたからだ。
ところが、ヴィダラおば(メイベル・リー)に呼び出されたアグネスは、フルダの件が「勘違い」だったとして、口外しないように諭された。

■アグネスとデイジー、それぞれ内なる恐れと向き合う
デイジーにも恐れていた変化が訪れた。初潮を迎えたのだ。しかし、おばたちにバレれば結婚させられるため、報告しないでいた。
ベッカとガースの婚約パーティーの日、デイジーはギレアドの抵抗組織メーデーの仲間であるガースにひそかに話す機会を持つ。ギレアドという国の異様なしきたりに耐え切れなくなっているデイジーは、一刻も早く脱出したいと願ったが、ギレアドを変えようとしているガースは許さない。
一方、アグネスはリディアおばにフルダのことを「あれは事実です」と切り出した。アグネスの途切れ途切れに話す様子から何かを悟ったリディアおばは、権力のある人と結婚すれば、アグネスもフルダもグローブ医師の歯科医院に行くことはないと告げる。「悪しき者や主の敵は必ず滅びる。煙のように消えるのだ。主を待ち望む者は、新たな力を得る」という言葉とともに。
その後のアグネスのモノローグで「この言葉の意味を私は分かっていなかった」と続いた。実はリディアおばは、グローブ医師に何らかの報いがあることを示唆したようだった。
モノローグ通りにリディアおばの言葉の意味を読み取っていないアグネスは、抱えきれなくなった思いを「あなたにしか話せない」とデイジーに吐露。アグネスもまた、ガースに対して感じている欲望がグローブ医師に誤って伝わってしまったのだ、と心の奥で自分を責めていたのだ。
デイジーはリディアおばが何もしてくれないようだとアグネスの様子から悟ると、何かを決意したかのような表情になった。
第8話は、ギレアドに生きる少女たちの心情をすくい上げ、無情な世界にいる彼女たちの恐れが伝わってきた。結婚という将来が現実に近づいている恐れ。本来であれば幸せなことであるのに、必ずしも幸せばかりではないのだ。
アグネスのクラスメートのシュナマイト(ローワン・ブランチャード)もそうだ。特権階級の娘だからこそ親の期待に応えたいと誰よりも初潮を望むも、後れを取っていることに焦り、デイジーに悪態をつくも涙したり、ガースの家が名家とはいえないことに陰口をたたいたり、不安定さを露呈していた。
冒頭で、アグネスがあえて皿を割るというギレアドの不可思議な結婚前の儀式が映し出された。割れた皿を結婚までに修復するのだという。これは皮肉めいた描写だったのか、ラストまで見終わった後には、少女たちの壊れていく心のひびに思いをはせずにはいられなくなった。
デイジーの窮状にひっそりと生理用品を渡したアグネス。確かな友情が芽生えている2人だが、友の悲しみにデイジーは何をしようというのか。また、リディアおばの示唆が何を意味するのかも気になるところ。最終話直前の次回第9話に、大きな動きがありそうだ。
「テスタメント/誓願」(全10話)は、ディズニープラスのスターにて毎週水曜に新エピソードを配信中。
◆文=ザテレビジョンドラマ部

