
芳根京子主演で、AIが導入された裁判所を舞台に描くリーガル・ミステリードラマ「有罪、とAIは告げた」が5月16日(土)夜9:00からNHK BSで放送される。新人裁判官・高遠寺円(芳根)は、試験的に裁判所に導入されるAI「法神」の検証を任される。「法神」は一瞬で判決文を書き上げ、判決も裁判官が出したものと同じだった。そんな中、円は退官間近の裁判官・檜葉(國村隼)と共に、18歳の少年が父親を刺殺した事件を担当するが――という物語が描かれる。
WEBザテレビジョンでは、主人公・高遠寺円を演じた芳根にインタビューを実施。役柄・作品への思い、AIとの向き合い方について語ってもらった。
■今の時代だからこその作品に
――完成した作品をご覧になって、率直な感想をお聞かせください。
なんとも難しく、面白く、不思議な作品だなという印象を持ちました。裁判のシーンがあるので、もちろん「判決」という形での結末はあるのですが、どこか白黒がつけられない。見てくださった方によって、誰の気持ちに共感して寄り添えるかが分かれるような、今の時代だからこその作品になったなと感じています。
――最初に今作のお話を聞いた時は、どのような印象を持ちましたか?
今の時代だからこその面白さと難しさ、そして役として何に向かって突き進めばいいのかということを掴む大変さを感じました。法廷シーンがあり、判決も出ますが、単に「あなたが悪い」という話ではないので、私自身もすごく考えながら挑まなければいけない作品だなと。台本を読み込むうちにその思いがより深まっていきました。
■AIに詳しくない自分とリンクした主人公・円の造形
――今回演じられた高遠寺円は、芳根さんの目にはどう映りましたか?
AIに対しての距離感に、私自身と重なる部分を感じました。円は日々の生活の中でAIを駆使しているわけではなく、良くも悪くもAIに対して強い印象を持っていない女性。私も世の中にAIがあふれているのは知っていますが、自分から積極的に使うタイプではないんです。ただちょっと時代に追いつけていないだけで(笑)。そんなところが、円とリンクしやすかったです。
――円は偉大な裁判官だった祖母・高遠寺静(風吹ジュン)へのコンプレックスも抱えています。
おばあちゃんの背中を追いかけたいのにたどり着けない、でもずっとおばあちゃんが自分を追ってくるような感覚を抱いており、それは彼女ならではの悩みだと思います。ただ、その中でも「人間にしかできないこともあるはずだ」とがむしゃらに仕事に向き合い、希望を追いかけている女性です。
――役作りで意識したことや、監督からのアドバイスはありましたか?
円はどこまでも熱血になろうと思えばなることができるキャラクターだからこそ、あえて引くことを意識しました。現場で國村(隼)さんとお芝居をさせていただき、「あ、ここはちょっと違うかもしれない」と感じた時は、監督や制作の方に相談して。当初、自分が台本を読んでイメージしていたよりも、國村さんとの掛け合いを通じて引き算をしていくことが多い役になりました。

■意外なところから得た役作りのヒント
――裁判官を演じるにあたって、事前に準備されたことはありますか?
実際に裁判の傍聴をさせていただきました。あまりにのめり込んでしまい、当初の予定よりも長く、気が付いたら5~6時間も経っていました。裁判の傍聴は初めての経験だったのですが、そこで感じた独特の緊張感は、撮影での法廷シーンにもつながったと思います。
――意外なところから情報を得たというお話も伺いました。
事前にたくさんの資料や映像を見させていただいたのですが、中井貴一さんが出演されている『サラメシ』で、偶然にも裁判官の方のお昼ご飯を紹介する回があって(笑)。一番若い裁判官は裁判長の左側(傍聴席側から見て右)に座るといった、全く知らなかった情報をそこで知りました。身近ではない職業だからこそ、いろいろと調べたり、実際に自分の目で見させていただいたりと、準備をして臨みました。
■共演の國村隼は「おちゃめでチャーミングな方」
――國村隼さんとの共演はいかがでしたか?
ずっと怖かったです(笑)。お互いに自分の正義を持っていて、それがぶつかり合うシーンが多く、いつ自分の言葉の揚げ足を取られるか分からないような感覚がありました。同じ意見だったとしたらとても心強かったと思いますが、1シーン撮影が終わるごとに制作の方のところに「あ~怖かった!」って言いに行っていたくらいです(笑)。
――國村さんの普段の様子とのギャップもあったのでしょうか。
國村さんは本当におちゃめでチャーミングな方なんです。現場ではずっと口笛を吹いていらっしゃり、「あ、國村さんがいる」とすぐ分かりますし、お会いするとホッとする方。ただ、役に入って檜葉として向き合うとすごく怖いんです。声は決して大きくないのですが、独特の声の響きを持っていらして、そのギャップもすてきでした。
――裁判官チーム(國村隼、臼田あさ美)の撮影現場の雰囲気はいかがでしたか?
すごく仲が良かったです!待ち時間も楽屋に戻らず、ずっとその場で3人でおしゃべりしていました。泊まりの地方ロケでは、「昨日の夜は、あそこのお店に行きました」といった報告をし合って。後から「なんだ、誘えばよかったね」とお互いに気を使ってすれ違ってしまうような、ほほ笑ましくて心地よいチームでした。
■AIとの共存、そして“人間だからこそできること”
――作品を通じて、AIに対する考え方に変化はありましたか?
AIは便利ですし、頼ることも必要になる。ただ、AI から自分の考えを否定されることはないと思うので、ちゃんと「自分が使っているんだ」という意識をしっかり持っていたいなと思うようになりました。AIには良い面もあれば怖い面もある。だからこそ、うまく共存していくことが一番なのではと。この作品を通して、一言で「印象が良くなった、悪くなった」とは言い表せませんが、うまく付き合っていけたらと感じています。
――もし私生活でAIを活用するとしたら、どんな相談をしますか?
実は、自分の中で一番AIをうまく使えたと思ったのは「夢占い」なんです。すごく複雑な夢を見て、ChatGPTに聞いてみたら、詳しい状況まで汲み取ってくれて(笑)。それを100%信じて行動するのではなく、こういう楽しみ方もあるよね、とコミュニケーションや楽しみの一つとして使うことの良さを感じました。
――最後に、視聴者へメッセージをお願いします。
この作品には、「悩むことから逃げてはいけない」という言葉があります。私にとって、この言葉がこの物語の最高潮の答えなのではないかと思っています。悩むことは、人間にしかできないこと。何が正しくて何が間違っているのか分からなくなるほど苦しい瞬間もありましたが、その迷いと向き合いながら撮影に臨みました。見て下さる方が、どう感じ、誰に共感するのか。ぜひその感想を聞かせていただきたい作品です。

■撮影=岡田健/スタイリスト=武久 真理江/ヘア&メーク=北原 果

