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早起きした5月の晴れた朝、つらいことも『物語』が心を少し軽くしてくれる

早起きした5月の晴れた朝、つらいことも『物語』が心を少し軽くしてくれる

吉元由美の『ひと・もの・こと』

作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。

たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。

私たちは『物語』に生かされている

この世界と、あの世界と、どのようにつながっているのか、そんなことをよく考えます。

亡くなった人を思うとき、思わず空を見上げる。

母が亡くなったとき、きっとこの空のどこかにいるのだろうと、空を見上げてばかりいたことを思い出します。

またあるときふっと母が近くにいるような気がしたときには、この世界とあの世界の境界線はないのではないかと感じたり。

亡き人を思うとき、そんな答えがみつからないことをつらつらと考えるのです。

空と女性の写真

早起きした朝、ゆっくりと散歩に出ました。

4年前に亡くなったトイプードルのラニとよく歩いた道を久しぶりに歩きました。

もうラニは生まれ変わって、この空にはいないのかなあ。

もうメッセージをくれることはないのかなあ、と胸がきゅっとするようなことを思いながら歩いていると、前から真っ白のマルチーズがやってきました。

するとその子が私をめがけて、くいくいと駆け寄ってきて、足元でぴょんぴょんと跳ねるのです。

飼い主の女性に了解をもらって、久しぶりにもふもふを撫でさせてもらいました。

その子は尻尾を振って、撫でられるがまま、私に身を委ねるのです。

懐かしい柔らかい毛の感触は、私に無償の愛と信頼を教えてくれた感触でした。

白いマルチーズの写真

あー、そうか。生まれ変わって、ラニはもうこの空にはいないのかと胸がきゅっとなっていた私に、(そんなことない! いつもここにいるよ)ということを伝えるためにマルチーズちゃんの中に入ったんだ。

そして、触らせてくれたのだ。そう思えたら、あたたかいものが胸の奥へと流れ込むような感じがしたのです。

空と女性の写真

「人は物語に生きている」臨床心理学者の河合隼雄先生はこう主張します。理屈では説明しきれないことがたくさんある。

その中にあって、人はそれぞれの『物語』を作ることで乗り越えることができる。

亡くなった母は空へ帰ったのだと思うと、空を見上げればそこに母がいるような気がして慰められる。

これも物語。

ラニが私に存在を伝えるためにマルチーズちゃんに入って、駆け寄ってきたのだと思えば慰められる。

つらいことも(これを乗り越えたらきっと成長できる)と思えたら頑張れる。

過去のことも(あの経験があったから今がある)と思えたら、過去の自分を否定しなくて済む。

そんなふうに、私たちの人生には心の『物語』がたくさんあり、それによって支えられているのです。

空の写真

日常の中に気づき、『物語』のきっかけはたくさんある。

この世界も、あの世界も私の外側にあるのではなく、内側にあるのでしょう。

5月の晴れ渡った空を見上げて、愛に満たされた朝の出来事でした。

作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー

※記事中の写真はすべてイメージ


[文/吉元由美 構成/grape編集部]

配信元: grape [グレイプ]

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