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うどんだけじゃない 讃岐食い倒れロケハン 讃岐編|相場英雄

うどんだけじゃない 讃岐食い倒れロケハン 讃岐編|相場英雄

先月に続き、ロケハンのネタである。先月は兵庫県の明石市、そして淡路島を取り上げた。今回は淡路島の南端にある鳴門大橋を渡り、四国に上陸の巻。

目的地は香川県高松市だ。二〇年ほど前のサラリーマン記者時代、後輩の結婚式に招待され、初めて同地を訪れた。温暖な気候、人懐こい地元民、そして讃岐うどんの旨さに度肝を抜かれた。

今回は、今年中に連載開始予定のあるシリーズ物のために、同地を訪れた。

詳細は明かせないが、不器用な中年男性が全国各地を訪ね歩くシリーズで、旅のシーンは必須と担当さんから仰せつかっている。

数カ月前に企画が通り、以降、どんなストーリーにするか考えていた。そして別タイトルの取材で関西まで来たのだから、ついでに車で四国に渡ってみよう……非常に安易な思いつきから新たな旅がスタートした。

あの中年キャラはどんな風に街を歩き、何を食らうのか。下調べほぼゼロで街に出かける(このタイミングが作家として非常に楽しい)。

何はともあれ、まずはうどんだ……うどん県を再訪した以上、まずは啜るべし。そんな考えで街に出たのだが、ここで大誤算が発生した。

夕方近くに高松市に到着した私は、市内の繁華街にあるうどん店の大半が朝から営業を開始し、昼すぎには店を閉めてしまうことを知らなかった。以前訪ねた店が軒並み暖簾を外していて、途方に暮れてしまった。

そんな時思い出したのが、別のタイトルで監修をお願いしている讃岐人の顔だった。

〈うどんだけじゃなくて、面白い食べ物がある〉

そんなアイディアを授けてくれたのだ。向かったのは、市内中心部、公共放送の高松支局の真横にある古びた食堂だ。目指す食べ物は〈かしわバター丼〉。

香川県民はかしわ、すなわち鶏が大好きらしい。鶏を大量に使い、手軽に、しかもボリュームたっぷり楽しめる名物があるとこの讃岐人に教わった。

いざ実食。強烈に味が濃い。あっさり出汁の讃岐うどんを知っている身としては、仰天の味だった。

濃い目の胡椒と一味唐辛子の辛味が常に口内を刺激する。ニンニクのタレに鶏肉が浸かっているので、ガンガン白米がなくなる危険食だ。香川県、恐るべし。懐が深すぎるじゃないか。

地元食堂の名物、かしわバター丼。具は300g、シャリも300g、合計600gのハイカロリー飯。

さて、腹ごしらえを済ませたあとは、夜の部。酔客が集う中心部に迷い込む。こういうときは、絶対にグルメサイトの類いで検索をしない主義。己の感性で何店舗か狙いをつけ、最終的に暖簾をくぐる。

結果、大当たり! 地元食材と田舎料理専門をうたう居酒屋では、初めて食べる料理がとりわけうまかった。

その代表格が〈まんばのけんちゃん〉。

まんばとは、地元の葉物野菜、高菜の一種で実に歯応えが良い。けんちゃんとは、けんちんが訛ったものらしい。シャキシャキの高菜と豆腐、油揚げを炒め煮にした一品だった。ここに地元の日本酒を合わせれば、最高のマリアージュ。酔いが回れば、お店のスタッフ、常連さんたちとも意気投合。ああ、やっぱり地方取材は滅法楽しい。

こちらが地元料理の〈まんばのけんちゃん〉。シャキシャキのまんば(高菜の一種)と揚げのハーモニーが最高。

瀬戸内のメバルを煮付け。驚きの美味さ(低価格)。

全部地元産。瀬戸内の魚介は飛び切り美味い。

宿近くの老舗。午前七時から大行列、満席。そして冷ぶっかけ。讃岐うどんは、やっぱりコシが命だと実感する。これで〈小〉。250g。ラーメンなら大盛りの量。

高松市郊外のセルフ式の人気店。こちらも〈小〉をオーダー。このあと、自分で湯掻き、蛇口から出汁を注いで完了。

セルフ式、完了の図。天ぷらの誘惑に負け、アナゴ一本揚げも追加。これでワンコイン以下のお値段は驚嘆。一軒ごとにうどんそのものの味が違う。おそるべしうどん県。

高松市は中心部のアーケード商店街が現役。多数の地元買い物客で賑わう。ショッピングモール苦手な人にとっては天国のような街。

さて、食べてばかりがロケハンではない。高松市の中心部には、栗林公園という美しい日本庭園がある。街に出たとき、じっくり庭園を回った。すると、ある展示物の前で出会ってしまった。そう、新しいタイトルの最重要トリックにつながるネタを発見してしまったのだ。

高松市中心部にある栗林公園。2度目の訪問だけど、驚きばかり。美しすぎる。

栗林公園を散策中、新作の最重要なテーマにつながるブツを発見。高松に行ってよかった。

こうなれば、ロケハンは大成功。あとは主人公の中年おじさんがこのネタをどうやって発見するのか、そこまでの道筋を作家が記すだけとなる。プロの作家、腕の見せ所である(飲み食いするだけのおじさんではない)。新作、乞うご期待だ。

配信元: 幻冬舎plus

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