髄膜炎は誰にでも起こりうる病気ですが、乳幼児や免疫機能が低下している方、集団生活を送っている方はとくに注意が必要です。また、感染の広がり方を知ることも予防に役立ちます。この記事では、発症リスクが高い方の特徴や、飛沫感染・接触感染などの主な感染経路、そして日常でできる予防策について詳しく紹介します。

監修医師:
田頭 秀悟(たがしゅうオンラインクリニック)
鳥取大学医学部卒業。「たがしゅうオンラインクリニック」院長 。脳神経内科(認知症、パーキンソン病、ALSなどの神経難病)領域を専門としている。また、問診によって東洋医学的な病態を推察し、患者の状態に合わせた漢方薬をオンライン診療で選択する治療法も得意としている。日本神経学会神経内科専門医、日本東洋医学会専門医。
首の硬直が起きやすい方と感染経路——リスクを知っておく
髄膜炎は誰にでも発症しうる病気ですが、特定の条件下ではそのリスクが著しく高まることが知られています。どのような人がかかりやすいのか、そしてどのように感染が広がるのかを理解することは、予防行動につながります。
発症リスクが高い方
髄膜炎は年齢を問わず発症しますが、特に以下に挙げるような方は、免疫機能や生活環境の観点から発症リスクが高いと考えられています。
・乳幼児、特に新生児や生後数ヶ月の赤ちゃん:免疫システムが未熟であり、母親からの移行抗体が減少する時期に感染しやすくなります。
・免疫機能が低下している方:抗がん剤治療中、HIV感染症、糖尿病、臓器移植後で免疫抑制剤を使用中の方、また脾臓(ひぞう)を摘出した方は、細菌に対する抵抗力が弱まるためハイリスクとなります。
・集団生活を送っている方:学校の寮、軍隊の兵舎、保育園や幼稚園、高齢者施設など、閉鎖された空間で長時間過ごす環境では、飛沫感染による病原体の伝播が起こりやすくなります。
・特定のワクチンを接種していない方:肺炎球菌、Hib(インフルエンザ菌b型)、髄膜炎菌など、細菌性髄膜炎の主要な原因菌に対するワクチンがあり、未接種の場合は感染リスクが高まる可能性があります。
乳幼児は症状を言葉で訴えられないため、特に注意が必要です。高熱、理由なくぐずり続ける不機嫌、ミルクや母乳の飲みが悪い、嘔吐を繰り返すといった症状に加え、頭のてっぺんにあるペコペコと柔らかい部分 (大泉門)が張って膨らんでくるのは、脳圧が上がっている危険なサインです。保護者の方が「何かいつもと違う」という直感を覚えた場合は、決して軽視せず、速やかに小児科を受診してください。
主な感染経路と予防策
髄膜炎の原因となる病原体の多くは、私たちの身近に存在します。細菌性髄膜炎の主要な原因菌(肺炎球菌、髄膜炎菌など)は、感染者のせきやくしゃみによって飛び散る飛沫(ひまつ)を吸い込むことによる「飛沫感染」や、病原体が付着した手で口や鼻に触れることによる「接触感染」で広がります。一方、ウイルス性髄膜炎の原因となるエンテロウイルスなどは、便の中に排出されたウイルスが口に入る「糞口感染」や、呼吸器からの飛沫を介して感染します。
最も効果的な予防策は、ワクチン接種だと考えられています。特に、小児の定期接種に含まれるHibワクチンと小児用肺炎球菌ワクチンは、導入以来、子どもたちの重篤な細菌性髄膜炎を劇的に減少させたとされています。任意接種である髄膜炎菌ワクチンも、寮生活を始める学生など、リスクの高い方には推奨されます。これら以外の方法としては、日常生活における基本的な感染対策、すなわちせっけんによる手洗いの徹底、うがい、せきエチケットの実践も、感染リスクを低減させる上で非常に重要です。
まとめ
髄膜炎は、風邪に似た症状から始まりながらも、急速に生命を脅かす事態へと進行しうる、極めて緊急性の高い病気です。その警告サインである「首の硬直」「経験したことのない激しい頭痛」「高熱」の組み合わせを見逃さないことが、予後を大きく左右します。特に、「突然始まった強烈な頭痛」や「首が痛くて前に曲げられない」という症状は、脳が出している最大のSOSです。これらの症状に気づいたときは、決して自己判断で様子を見たり、市販薬でごまかしたりせず、直ちに神経内科や救急科などの専門医療機関を受診してください。あなた自身と、あなたの大切な人の命を守るために、この知識が役立つことを願っています。
参考文献
国立健康危機管理研究機構「細菌性髄膜炎(詳細版)」
厚生労働省「侵襲性髄膜炎菌感染症」
日本感染症学会「結核性髄膜炎」
国立健康危機管理研究機構 国立国際医療センター 国際感染症センター「髄膜炎菌」
東京都感染症情報センター「細菌性髄膜炎」
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