
お笑い芸人の中山功太が配信番組にて匿名で明かした過去のエピソードをきっかけに、テレビ番組の定番企画である「イニシャルトーク」の是非に大きなスポットライトが当たっている。
中山が番組内で「ずっといじめられた先輩がいる」とカミングアウトした騒動を巡っては、ネット上で瞬時にいじめた側の芸人が「サバンナ」の高橋茂雄であると特定される事態となった。高橋は騒動後に中山と直接会話をして和解したことを報告したものの、長年出演していたライオンの「ストッパ下痢止め」の公式ホームページから自身の写真が消え、プロモーションへの出演が当面見合わせになるなど、実質的な影響が出ている。
今回の件で浮き彫りになったのは、ネットユーザーによる個人特定の早さと、実名を伏せる手法がもはや限界を迎えているという点だ。
「ネットや匿名性の高いSNSが一般的に普及していなかった1990年代や2000年代であれば、テレビ番組では個人が特定されないよう苗字か名前のイニシャルだけを開示したり、編集上で効果音を被せることで対処できていました。しかし、現代では名前を伏せていればセーフという前提は完全に崩れており、今回の高橋のケースを目の当たりにした放送業界内では、個人を隠したイニシャルトーク番組を制作することへの是非が真剣に検討されています」(民放プロデューサー)
過去にも、イニシャルトークが法的なトラブルに発展したケースがあった。
「アッコにおまかせ!」に寄せられた「苦言」
「最も有名なのが、タレントの岡田美里と叶姉妹を巡る裁判です。岡田はバラエティ番組にて、実名は伏せたものの特定の芸能人と分かる特徴を挙げてネガティブなエピソードを語ったのですが、これに対して叶姉妹側が名誉毀損で提訴。裁判所は、イニシャルトークであっても前後の文脈や特徴から誰であるか特定でき、相手の社会的評価を低下させた場合は、実名を公表したのと同様に名誉毀損罪が成立するとの判断を下しています」(芸能記者)
また、上沼恵美子が自身の番組などで過去に共演した態度が悪いゲストをイニシャル混じりで痛烈に批判した際も、具体的なエピソードや言い方からネット上で芸能人が特定され、大騒動に発展するたびたびこともあった。
「週刊誌や夕刊紙のスクープ風なノリから定着したイニシャルトークですが、裏付けのない内容による誹謗中傷の助長や、2020年の『アッコにおまかせ!』(TBS系)では、事情通が、不倫疑惑を先取りするような企画が行なわれ、出演者だけが実名を知って盛り上がる構成に、視聴者から『置いてけぼりにされている』『誤爆を生む』と多くの苦言が寄せられたことも。さらに、内容の誇張による質の低下や、無関係なタレントが濡れ衣を着せられるトラブルも頻発しています。今回のサバンナ高橋の件は、本人が認める形となったものの、匿名での告発であっても最終的にスポンサー企業の契約見合わせに直結するリスクを証明しました。メディア露出が減ったタレントが知名度維持や過去の不満、話題作りのために行うイニシャル暴露は、結果として実名が暴かれ、相手の信用を著しく傷つけることになりかねず、制作側のモラルも厳しく追及されるべきです」(テレビ誌記者)
陰湿な告発を伴うイニシャルトークは、現代のコンプライアンスにおいて非常に危険な扱いとなっている。隠しているつもりでも、ネット社会では瞬時に実名が暴かれ、あるいは本人が認めざるを得ない状況に追い込まれるなど、発言者やメディア側が思わぬリスクを負う。中山の発言から始まった一連の騒動により、名前を伏せる手法の限界が完全に証明された今、テレビにおけるイニシャル暴露企画そのもののあり方が改めて問われている。
