
コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は取材や体験による“実話怪談”を描いたホラー漫画『水ムーちゃんねる 隣の晩怖談』の作者・水村友哉さんに注目し、同作の第43話『話してはいけない』をご紹介しよう。
第43話は、子ども頃から日常的に幽霊が視えていたという学校教師による体験談を漫画化した一作。以前水村さんのX(旧Twitter)に投稿されると、約2000もの「いいね」が寄せられている。そこで作者の水村さんに、同作を描いた経緯について話を伺った。
■自室に現れる女性の霊と話した結果…

幼い頃から日常的に幽霊が視えていたこともあって、怪異を目にしても怖くなかった学校教師の高橋かすみさん(仮名)。しかし、高橋さんが中学3年生の時に体験した出来事は、彼女を恐怖に陥れるのだった。
1998年5月、初めて池袋に訪れた高橋さんは、街中で数多くの幽霊を目の当たりにする。幼い頃、お坊さんに「(幽霊に)話しかけちゃダメだ」と忠告されていたこともあり、無視するようにしていたが、生きている人と区別ができないくらいにハッキリと存在していると、うっかり会話をしてしまうことも。
そんなある日、実家の自身の部屋に少し年上に見える女性の霊が現れるようになり、その後、その霊と話す機会が増えてしまい…。読者からは「話がリアルなうえにマジで怖い…」「怪異の存在を否定できない自分がいる」などの声が寄せられていた。
■実は長く温めていた第43話のエピソード…その理由とは

――『水ムーちゃんねる 隣の晩怖談』の第43話を描いた経緯をお教えください。
このお話は、本作『水ムーちゃんねる 隣の晩怖談』が始まった頃に取材させていただいた体験談で、長く温めていたものになります。
きっかけは、いつもご祈祷で訪れている江ノ島神社の帰りに立ち寄った飲食店で、店員さんやお客さんに「何か怖い体験談はありませんか?」と尋ねた際、常連の方から「すごい人がいる」と紹介していただいたことでした。
高橋かすみさん(仮名)は学校の教員で、幼い頃から霊的なものが“視える”方。それが当たり前だったため、これまで恐怖を感じたことはほとんどなかったそうです。
しかしこのエピソードが起こった当時は、ある瞬間から記憶が途切れ、自分が知らぬまま周囲に迷惑をかけてしまっていたことに強い恐怖を覚えたと語っていました。人間関係が崩れたり、待ち合わせに友人が現れなかったりと不可解な出来事が続き、本人も理由がわからないまま過ごしていたそうです。
高橋さんにさらに取材をしていくと、“霊的な何か”としか思えない部分も多く、特に最後のシーンも印象的だったため、ぜひ作品として描かせてほしいとお願いしました。
なお、執筆にあたり本作のコミックスをお渡ししたのですが、「この手のものは影響を受けてしまいそうで読めない」と言われたことや、今回の体験談についてもお坊さんに「漫画にしても問題ないか」を確認されていたのが印象的でした。
また高橋さんには2人の娘さんがいらっしゃり、姉は同じように“視える”タイプで好奇心旺盛、妹はそういったものが苦手で、取材中もイヤホンをつけて話を聞かないようにしていた姿が強く記憶に残っています。
――作中の怪異が登場するコマはどの話もゾクッとくるものがありますが、第43話を描く際、特に「こだわった点」をぜひお聞かせください。
ありがとうございます。自分自身も怖がりながら、毎回全力で向き合って描いているので、そう言っていただけて嬉しいです。
本作で特にこだわったのは、「日常が少しずつおかしくなっていく感覚」を違和感なく読者に伝えることです。そのため、展開やコマ運びにはかなり試行錯誤しました。
また“視える”方ならではの苦悩や、避けられない出来事に対する悲しさがしっかり伝わるよう、感情面の描写にも重点を置いています。
――現在『水ムーちゃんねる 隣の晩怖談』は第7巻まで出版され、お話も第43話まで公開されていますが、これまでたくさんの実話怪談を漫画化してきて改めて感じることをぜひ教えてください。
そうですね……。怪談が広く楽しまれるようになった昨今、数多くの体験談に触れる中で「似た事例」が非常に多いことに気づきました。特に、就寝時の金縛りなどは代表的で、細部まで共通しているケースも少なくありません。
そうした共通点の多さに触れるほど、「わざわざ想像で補う必要がない」と思わされ、むしろそのまま描くことで体験談のリアリティや信憑性が強まっているように感じています。
もちろん、「気のせい」と説明できる部分があるのも理解はできます。ただ、その“気のせい”の奥にある恐怖や違和感は、実際に体験した人にしかわからないものだとも感じています。
また、取材を重ねる中で、いわゆる心霊スポットと呼ばれる場所に足を運ぶ機会も増えたのですが、以前よりも不可解な現象に遭遇することが多くなりました。
例えば、車の助手席に乗っている時に限ってタイヤがパンクしたり、宿泊先で突然警報器が鳴って廊下が水浸しになったり、撮影したはずの動画が丸ごと記録されていなかったりといった出来事です。
こうした取材体験を重ねる中で、普段は触れることのない話や行かない場所には、何かを呼び起こす力があるのではないか、あるいは自分自身が無意識にそうした領域へ近づいてしまっているのではないかと感じるようになりました。
――読者へメッセージをお願いします。
連載にお付き合いいただいている読者の皆さま、本当にありがとうございます。そして、コミックス第7巻も現在発売中ですので、ぜひ手に取っていただけたら嬉しいです。
本作で描いているのは、すぐ隣にあるかもしれない“日常の怪異”です。読み進めるうちに恐怖に慣れてしまうこともあるかもしれませんが、だからこそ今一度、怪異と向き合ってみてほしいと思っています。
恐怖を感じるためには、やはり想像力が大切です。昔の人々は今のように明るい環境や科学が整っていなかった分、想像力によって“見えないもの”を感じ取っていたのではないかと考えています。
本作を通じて、そうした感覚を少しでも思い出し、楽しんでいただけたら幸いです。また、感想なども発信していただけるととても励みになります。体験談も随時募集しておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。

