
Huluにて独占配信される1話完結の本格ミステリー「ミステリーシネマ」の一作、Huluオリジナル「メルカトル・ナイト」で初単独主演を務める水沢林太郎。麻耶雄嵩氏による人気ミステリー小説の実写映像化で、水沢は悪徳銘探偵メルカトル鮎を演じる。「命を狙われているかもしれない」という人気女性作家からの依頼に、メルカトルはどう挑むのか。
タキシードにシルクハットという風変わりな装いに身を包み、巧みな推理を披露していくメルカトルを好演した水沢に撮影の裏側を聞いた。
■出演オファーに「やるしかない」
――主演された「メルカトル・ナイト」は、Hulu独占配信の「ミステリーシネマ」の3作品の最後を飾る作品になります。この企画への出演オファーを受けたときの感想は?
3作品あるうちの1本(主役)を任せていただけると聞いて、本当にうれしかったです。でも、そのぶんプレッシャーもありました。というのも、出演オファーをいただいた時点でほかの2作品(「スイス時計の謎」と「リターン・ザ・ギフト」※ともにHuluで配信中)で主演される方のお名前をなんとなくお聞きしていて。
僕が足元にも及ばない先輩ばかりだったので、最初は本当に自分でいいのかなと思いましたが、「やるしかない」と思ってがんばりました。
――メルカトルはとても個性的なキャラクターですが、どのような印象を抱きましたか?
なかなかクセのある男で一見怪しさしかないのですが、芯が通っている印象があったので、真っすぐさみたいなものは必要だなと思っていました。(役作りの参考として)大山晃一郎監督とは『古畑任三郎』シリーズや『相棒』シリーズの右京さんの話もしていましたが、そこの要素が強すぎると“メル感”が薄れてしまうので、結局「実際にやってみないとわからないところもあるよね」となり、バディ役の須賀健太さんともお話しながら現場で作っていきました。
限られた撮影日数の中でメルのキャラクターを作っていくのは難しかったのですが、みなさんに助けていただきました。
――メルカトルとご自身の共通点はありますか?
何かをやりきるところかなと思います。僕はお仕事的に何かをやりきることは絶対に必要だと思っているので、撮影のクランクインからアップするまでの時間は責任を持ってやり遂げないといけないと思っています。なので、その真っすぐさは一緒かなと思います。
ですが、僕はメルほど頭がいいわけではないし、基本的には似ている部分はあまりないです。ただ、脚本にないセリフを僕が話しているのを監督が面白がって使ってくださっていたりするので、ところどころ水沢が出ているところもあると思います(笑)。
■メルカトルの衣装は「モデルのお仕事が役に立った」
――“悪徳銘探偵”と称されるメルカトルは、タキシードにシルクハットと出で立ちも独特です。最初に衣装を身につけたときはどう感じましたか?
コスプレかなと思いました(笑)。劇中では、探偵の仕事中は白の衣装、プライベートのシーンでは黒の衣装を身につけているのですが、最初は逆にするアイデアもあったんです。最終的に白の衣装になり、メルが赤ワインを飲みながら話すシーンは、僕もそうですが、衣装さんはすごくドキドキしていたと思います(笑)。
――白のタキシードは着る人によってはお笑い要素が入ってしまう危険性があると思うのですが、とてもお似合いでした。水沢さんのスタイルのよさがあってこそですが、モデルの仕事(服を見せる)もされていることが影響している部分もあるのでしょうか?
洋服の見せ方を全てわかっているわけではないのですが、いろいろな洋服に出会えるという意味ではモデルをやっていてよかったなと思います。
それこそメルの衣装とは色は違えどスリーピースのスーツを着る機会は日常でもあるので、この衣装だと肩がきついとか、腰回りがきついなど、気になったことをお伝えさせていただきました。そこはモデルのお仕事が役に立ったところもあるのかもしれません。
――シルクハットに関してはいかがですか?
僕は身長が184㎝あるので、シルクハットを被ると2m近くなってしまうんです。撮影していたのがクラシカルな雰囲気のホテルだったので、普通に入ろうとするとシルクハットが“ゴン”と当たってしまい、そういうところも(メルの役作りとして)ヒントになると思っていました。
ただ、シルクハットを被っていると、前髪が帽子の中に入ってしまい、表情がすべて出てしまうので、そこは一番気を遣った部分でもありました。
――メルカトルはステッキもつねに持っていますよね。
そうなんです。普段、ステッキを持つことなんてないので、なかなか慣れませんでした。あと、メルは懐中時計を使っているのですが、今は腕時計もあまり使わなくなってきているので、そこもなかなか難しいなと。
なので、現場にいる間はできるだけ懐中時計を触るようにしていました。それを続けていたら手が鉄臭くなってしまいました(笑)。それはそれでちょっと後悔するときもありましたが、それぐらいやれたことは自分の中ではひとつの達成感になっているので、今はやってよかったなと思っています。
■シルクハットを投げるシーンは「100回くらいやった」
――メルカトルの相棒(助手)であり、ミステリー作家でもある美袋三条役の須賀健太さんとは初共演になります。
須賀さんはテレビでずっと見続けていた方なので、最初は「どうしたらいいのかな」と思っていましたが、現場に入ってからみんなで一緒にご飯を食べる機会があって。そのときにいろいろお話させていただいて、仲良くしていただきました。
――須賀さんとのシーンで印象に残っていることはありますか?
探偵事務所でのシーンは僕と須賀さんだけの撮影が多かったのですが、メルがシルクハットを投げるシーンが本当に難しくて。あれはCGではなく、僕本人がやっているので、須賀さんにも何度も練習にお付き合いいただき、100回くらい投げました。
監督から「本番では10回までなら許す」と告げられ、練習では100回投げて10回も入らなかったのに、本番では5回目に成功したんです。そのときの須賀さんの表情が本当に最高でした。
■テーマは「繰り返し見てもらえるように」
――メルカトルのもとに「命を狙われているかもしれない」と調査依頼に訪れる人気作家・鵠沼美崎を演じる恒松祐里さんとは、これまでにも共演経験があるそうですね。
僕がデビューして間もないころに「都立水商! 〜令和〜」(2019年、TBS系)という学園ドラマでご一緒させていただいたのが最初で、ここまでしっかり一緒にお芝居させていただくのは久々でした。
今回は恒松さんと対峙するシーンも多かったのですが、これまでに共演経験があったからこそ、お互いにより踏み込んでお芝居することができたのかなと思います。
――美崎からの依頼を受けた後、メルカトルたちは美崎が滞在するホテルに泊まることになります。事務所でのシーンもそうですが、ほぼ密室劇のようなシチュエーションで苦労されたことはありますか?
シーンによって別のホテルを使い分けて撮影していたので、1日に3回、ホテルを移動して撮影することもあり、時系列的に順撮りで進めるのは難しく、「これはどこのシーンにつながるんだっけ?」と困惑するときもありました。
しかも、恒松さん演じる美崎とは互いに似たようなセリフを言うシーンが多く、現場のスタッフさんも「これはどこのタイミングで、どこのセリフ?」と戸惑うことがあったみたいです(笑)。
――改めて「メルカトル・ナイト」の楽しみ方を教えてください。
僕と監督の中では「(繰り返し)2回目も、観てもらえる作品にしよう」というのがテーマでした。僕も完成した作品を2回観ましたが、監督の意図されていたことに改めて気づいた部分もありました。なので、みなさんにも自信を持って「2回観てください」とおすすめしたいです。
◆取材・文=馬場英美
◆ヘアメーク:菅井彩佳
◆スタイリスト:古川水桜

