低血圧は、日常生活でだるさやめまいを感じやすく、朝が苦手な方も少なくないようです。自分が低血圧かどうか気になる場合、ご自宅でも簡単に血圧の測定ができます。本記事では、低血圧の方にみられる主な特徴やご自身で血圧を測る方法、さらに日常ですぐに取り入れられる対処法をわかりやすく解説します。健康管理の参考にお役立てください。
監修医師：
伊藤 規絵（医師）
旭川医科大学医学部卒業。その後、札幌医科大学附属病院、市立室蘭総合病院、市立釧路総合病院、市立芦別病院などで研鑽を積む。2007年札幌医科大学大学院医学研究科卒業。現在は札幌西円山病院神経内科総合医療センターに勤務。2023年Medica出版社から「ねころんで読める歩行障害」を上梓。2024年4月から、FMラジオ番組で「ドクター伊藤の健康百彩」のパーソナリティーを務める。またYou tube番組でも脳神経内科や医療・介護に関してわかりやすい発信を行っている。診療科目は神経内科（脳神経内科）、老年内科、皮膚科、一般内科。医学博士。日本神経学会認定専門医・指導医、日本内科学会認定内科医・総合内科専門医・指導医、日本老年医学会専門医・指導医・評議員、国際頭痛学会(Headache master)、A型ボツリヌス毒素製剤ユーザ、北海道難病指定医、身体障害者福祉法指定医。
低血圧の人に共通する特徴とは
低血圧の人に共通する体質の特徴を教えてください
まず血液の循環が全身に行き渡りにくくなることから、倦怠感や疲れやすさを感じやすい点が挙げられます。また、朝起きたときに頭がぼんやりしたり、立ちくらみやめまいを経験したりしやすいのも特徴です。体温が低く、手足の冷えを感じやすい場合も多くみられます。育ち盛りの女性ややせ型の方に少なくない傾向があります。さらに、ストレスや睡眠不足、食生活の乱れなども低血圧を悪化させる原因となるため、生活習慣の見直しも重要です。
低血圧の人は外見に特徴がありますか？
外見上のはっきりとした特徴が現れることは少ないようですが、いくつか傾向として見られることがあります。例えば、顔色が少し青白く見えたり、全体的に色白で血色が悪く感じられたりすることがあります。
また、手足が冷えやすいため、指先やつま先が冷たくなりやすいのも特徴です。やせ型の方や華奢な身体つきの方に少なくない傾向も指摘されていますが、必ずしもすべての低血圧の方に当てはまるわけではありません。外見からすぐに低血圧との判断は困難ですが、日常的な疲れやすさや朝の弱さなど、体調の特徴とあわせて観察すると気付きやすいです。
低血圧の人の行動の特徴を教えてください
まず朝が苦手で、なかなか布団から出られない、午前中はやる気や元気が出にくいなどの傾向がみられます。立ちくらみやめまいを防ぐため、急に立ち上がることを避けたり、起き上がる前に手足を軽く動かしてからゆっくりと身体を起こしたりする行動が特徴的です。また、疲労や倦怠感が強く、日中でも横になるなど休憩が必要です。長時間立ち続けるのが苦手で、足を動かしたり体勢をこまめに変えたりすることが多くなります。食欲不振になりやすく、食事の回数や内容も工夫する傾向があります。よって、低血圧の方は症状を和らげるために、身体への負担を減らすゆったりとした行動を心がけていることが少なくないようです。
低血圧かどうかを自分で確かめる方法
低血圧の基準値を教えてください
一般的には、収縮期血圧（上の血圧）が100mmHg以下、または拡張期血圧（下の血圧）が60mmHg以下の場合、低血圧とされています1)2)。これはWHO（世界保健機関；せかいほけんきかん）の基準をもとにしていますが、高血圧ほど厳密な判定基準はなく、医師によって多少の見解の違いがあります。また、症状がなければ特に治療の必要がない場合もあります。
家庭用の血圧計は正確ですか？
家庭用の血圧計は、医療機関でも採用される国際的な精度検定をクリアして販売されているため、基本的には正確に測定できる信頼性の高い機器です。特に新しいモデルや上腕式血圧計は精度が安定しており、家庭でも利用可能です。
ただし、正確な測定結果を求めるためには、腕帯（カフ）を心臓の高さに合わせて装着し、落ち着いた状態でリラックスして測定することが大切です。また、経年劣化やカフの消耗が進むと誤差が生じやすくなるため、数年ごとに点検や買い替えを検討します。測定時の姿勢や環境も影響するため、正しい使い方と定期的な機器のメンテナンスを心がけることが、より正確な血圧管理につながります。
血圧の測り方を教えてください
血圧を正しく測るためには、いくつかのポイントを守ることが大切です3)。まず、測定前に1〜2分リラックスして座り、精神的・身体的に安静な状態にします。トイレもすませておきましょう。椅子の背もたれにもたれ、足を組まず床に両足をしっかりつけます。カフ（腕帯）は素肌または薄い衣服の上、腕にすき間ができないよう心臓の高さ（乳頭の位置）へピッタリ巻きます。測定時は机やクッションで高さを調整してください。朝と夜1日2回、毎日ほぼ同じ時刻に測ると記録の精度が高まります。
血圧計がない場合に低血圧かどうかを確かめる方法はありますか？
血圧計がない場合でも、低血圧の可能性を判断する目安はあります。ただし、正確な診断はできませんが、いくつかの代表的な症状の注意で自己チェックが可能です。例えば朝なかなか起きられない、立ちくらみやめまいがよく起こる、日中も倦怠感や身体のだるさを感じやすい、手足が冷えやすい、少し動いただけで疲れやすいなどの傾向を認めれば、低血圧を疑うサインとなります。また、急に立ち上がるとフラッとする、食欲不振や頭痛を感じやすいときも注意が必要です。こうした自覚症状が強い場合は、健康診断や医療機関を受診し、実際に血圧を測定してもらうことをおすすめします。
