「最近、物忘れが増えたかも……」そんな変化に気づいたとき、それが単なる加齢によるものなのか、それとも認知症の兆候なのか、判断に迷うこともあるでしょう。認知症の初期症状には「物忘れ」だけでなく、「日常の行動や性格の変化」も含まれます。例えば、今までできていたことが難しくなったり、感情の起伏が激しくなったりすることも。今回は、注意すべき具体的なサインと加齢による物忘れとの違いについて、「あいあいクリニック」の塚本先生に解説していただきました。

監修医師:
塚本 善峰(あいあいクリニック)
内科医。1993年杏林大学医学部を卒業後、杏林大学医学部付属病院第一内科にて神経内科、呼吸器疾患、アレルギー性疾患、腎機能障害、膠原病を専攻し、経験を積む。2007年、さいたま市に「あいあいクリニック」を開院、院長就任。「患者様、一人ひとりの事を考え、それに合った診療と医療をお届けしたい」という診療理念のもと、生活習慣病と慢性疾患に特化したオーダーメイド医療を実践している。
編集部
「物忘れ」が増えるのは、やはり認知症なのでしょうか?
塚本先生
そうとは限りません。物忘れには「加齢によるもの(正常な物忘れ)」「正常な物忘れと認知症の間の状態」「認知症によるもの」「ほかの病気による物忘れ」などがあるのです。物忘れが増えたからといって、すなわち「認知症」ということではないのです。
編集部
物忘れが加齢によるものなのか、認知症によるものなのか、どうやって判断するのですか?
塚本先生
「出来事の一部を忘れてしまう」のが「加齢による物忘れ」で、「出来事そのものをすっかり忘れてしまう」のが「認知症」の特徴と言われています。例を挙げると、「朝食に何を食べたか忘れてしまう」のが「加齢による物忘れ」で、「朝食を食べたという事実を忘れてしまう」のが「認知症」です。
編集部
ほかには何かありますか?
塚本先生
もうひとつのわかりやすい目安としては、「本人の自覚があるかどうか」ということがあります。忘れっぽくなったという自覚があるのが「加齢による物忘れ」で、「自分はなんともない」と自覚がないのが「認知症」という傾向があります。あとは、「認知症」の場合は、「物忘れ」以外の変化も表れてくるはずです。
編集部
例えばどんな変化がありますか?
塚本先生
「今までできていた作業ができなくなった」「今まで好きだったものや事柄に興味がなくなった」といった変化、「季節や時間、居場所の感覚がわからなくなった」「些細なことで怒るようになった」なども、認知症の初期症状です。また、物事が億劫になってしまう方も多く、例えば「まめに片付けていた人なのに、部屋が散らかるようになる」とか、「買い物の支払いで、端数の小銭を出すことなどをしなくなり、財布に小銭がどんどん溜まるようになる」なども、認知症の初期症状であることが考えられます。
※この記事はMedical DOCにて【認知症の初期症状を医師が解説 物忘れが多いのは認知症の前兆? 始まりのサインと進行段階を知っておこう】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
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