健康診断・血液検査の「血圧」の異常で気をつけたい病気・疾患
ここではメディカルドック監修医が、「血圧」に関する症状が特徴の病気を紹介します。どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
脳卒中
脳卒中は脳の血管が詰まったり破れたりすることで起こる病気です。脳の血管が詰まったり破れたりすると、脳の細胞の働きが悪くなります。脳卒中は脳の血管が詰まって起こる、脳梗塞と脳の血管が破れて起こる脳出血・くも膜下出血があります。脳卒中の主な原因は高血圧などの生活習慣病や喫煙・アルコール多飲などです。脳卒中を発症した時に起こる症状は、半身の麻痺・言語や意識障害などです。脳の働きは言語・運動機能などさまざまあり、障害された脳の部位によって現れる症状は異なります。予防は高血圧など生活習慣病の治療をすること、禁煙・節酒など生活習慣の改善です。
半身の手足や顔のまひやしびれ・ろれつが回らない・立てない・言葉が出ないなどの症状があれば早急に救急要請をしましょう。
心筋梗塞
心筋梗塞は、心臓の血管に血栓が詰まって、心臓に血液が十分に届かなくなり、心臓の細胞の壊死が起こった状態です。心筋梗塞の主な原因は、高血圧などの生活習慣病や喫煙などです。
心筋梗塞が発症すると、胸の激痛・胸の圧迫感・吐き気・呼吸困難・冷や汗などの症状が現れます。予防は高血圧など生活習慣病の治療をすること、禁煙など生活習慣の改善です。
10分以上続く激しい胸痛や、吐き気・呼吸困難・冷や汗などの症状が現れた場合には、早急に救急要請をしましょう。
慢性腎臓病
慢性腎臓病とは、腎機能の低下や腎臓の障害が3ヶ月以上持続した状態です。慢性腎臓病の多くは、高血圧・糖尿病などの生活習慣病に関連します。生活習慣病は動脈硬化を進行させるリスク因子です。動脈硬化が進行すると全身の血管障害が進み、腎臓にも悪影響を及ぼします。
治療は食事療法、禁煙などの生活習慣の改善と薬物療法です。食事療法は個々の状態によって適正量が異なります。自己判断せず、主治医の指示に従いましょう。
高血圧や腎機能の低下、むくみ・だるさ・夜間尿・頻尿などの症状がある場合は、早めに腎臓内科を受診しましょう。
高血圧
高血圧とは血圧が高い状態が慢性的に続く状態です。診察室での血圧が、収縮期140mmHg以上、拡張期90mmHg以上で高血圧と診断されます。高血圧の主な原因は食塩の過剰摂取や肥満、アルコール多飲、喫煙、運動不足などです。
高血圧による自覚症状は出にくいため、気づかない間に動脈硬化が進行している可能性があります。動脈硬化が進行すると脳卒中・心疾患・腎臓病などの合併症を起こすリスクが高くなります。高血圧を改善するためには減塩や肥満の解消、節酒といった食事療法と禁煙・運動不足の解消など生活習慣の改善が必要です。食事や生活習慣の改善をしても血圧が高い場合には、合併症の有無に配慮しながら薬物療法を行います。健康診断で高血圧を指摘されたり、家庭での血圧測定値が繰り返し高い場合は早めに内科を受診しましょう。
低血圧
低血圧は血圧が低い状態のことです。高血圧と違い、低血圧には明確な診断基準はありませんが、収縮期血圧が100mmHg未満を低血圧とされる場合が多いです。低血圧では、めまいや立ちくらみ、倦怠感、疲労感、頭痛、肩こりなどさまざまな症状がみられます。
低血圧が発症する原因はいくつか考えられます。
・本態性(一次性)低血圧症
低血圧の原因となる病気がなく、低血圧が続く場合です。低血圧の最も多い原因です。
・症候性(二次性)低血圧症
大量出血や脱水症、内分泌ホルモンの分泌異常、末期がんなどで低血圧になる場合があります。
・起立性低血圧症
立ち上がったときや、起き上がったときに血圧が急激に下がり、めまいや立ちくらみを起こす状態です。神経系の障害や糖尿病・循環器疾患が原因となる場合があります。
・食後低血圧症
高齢者に多くみられます。食後に過度に低血圧になり、吐き気・めまい・倦怠感などの症状が現れます。
低血圧を改善するために、バランスのよい食事や十分な水分摂取、食後にカフェインをとるなど食生活の改善をしましょう。また、運動をする、起き上がるときや立ち上がるときの動作をゆっくりするなど生活習慣にも注意することがおすすめです。血圧が低く、めまいや立ちくらみ、倦怠感、疲労感、頭痛、肩こりなどの症状が続く場合は内科を受診しましょう。
「血圧異常」の正しい対処法・改善法は?
高血圧の場合、生活習慣を改善することで降圧効果が期待できます。食塩の摂り過ぎ・偏食・過度の飲酒などの食習慣や運動不足・喫煙・睡眠障害などの生活習慣を改善し、肥満を解消することがおすすめです。
低血圧の場合、バランスのよい食事や十分な水分摂取、食後にカフェインをとるなど食生活の改善をしましょう。また、運動習慣や起き上がるときや立ち上がるときの動作をゆっくりするなど生活習慣にも注意することがおすすめです。睡眠不足やストレスは血圧に影響すると考えられています。規則正しい生活を送ることは、質の良い睡眠時間の確保に役立ちます。また、好きなことをする時間を作るなど、自身に合ったストレス解消法を生活に取り入れましょう。
低血圧の場合、水分を多めに摂取しましょう。
主治医から飲水制限を伝えられている場合は、飲水量は主治医の指示に従ってください。深呼吸や水分補給などのセルフケアで一時的に血圧が改善されても、血圧の異常値が続く場合は、早めに医療機関の受診をおすすめします。
コーヒーを飲む量が適量なら血圧・血管に良い効果はある?
コーヒーに含まれるクロロゲン酸などのポリフェノールは血糖値や血圧の調整や、抗炎症作用があるといわれています。
また、コーヒーに含まれるカフェインは血管内皮の機能の改善効果があると考えられています。そのため、適量でコーヒーを飲むことは高血圧の予防効果や血管に対する抗炎症作用があるため良いと考えられます。
コーヒーは1日何杯まで?血圧別のおすすめの飲み方
コーヒーを摂取することで、心血管疾患・脳血管疾患・呼吸器疾患による、死亡リスクが減るという報告があります。砂糖やミルクが大量に入ったコーヒーはエネルギーや糖質の過剰摂取につながりやすくなります。ブラックコーヒーや砂糖やミルクを控えめにしたコーヒーの摂取がおすすめです。また、コーヒーに含まれるカフェインの作用は個人で異なるため一概には言えませんが、1日2杯程度までの適量での摂取が勧められます。個人の状態に合わせた摂取量にしましょう。
血圧が正常値内の人のコーヒー摂取量の目安
血圧が正常値内の場合のコーヒー摂取量の目安は1日3〜4杯程度までが適量といわれています。コーヒーの過剰摂取はカフェインの過剰摂取につながり、健康被害を招くリスクが高まります。適量の摂取がおすすめです。
高血圧の人のコーヒー摂取量の目安
軽度の高血圧の場合のコーヒー摂取量の目安は1日3〜4杯程度までが適量といわれています。ただし、血圧が160/100mmHg以上など、重症高血圧の場合には、1日2杯以上のコーヒー摂取で、心血管疾患による死亡リスクが高まるという報告があるため、飲みすぎないことがおすすめです。
低血圧の人のコーヒー摂取量の目安
低血圧の場合のコーヒー摂取量の目安は1日3〜4杯程度までが適量といわれています。食後低血圧の予防には食前や食後にコーヒーなど、カフェインを含む飲み物の摂取がおすすめです。
カフェインには覚醒作用があるため、人によっては夜眠れなくなることがあります。カフェインの影響を強く受ける場合は、コーヒーを飲む時間帯にも注意しましょう。
「コーヒーと血圧」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「コーヒーと血圧」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
コーヒーを飲むと血圧にどのような影響を与えますか?
伊藤 陽子(医師)
コーヒーに多く含まれるカフェインは一時的に血圧を上昇させる働きがあるため、食後低血圧の予防効果が期待できます。また、コーヒーに含まれるポリフェノールのクロロゲン酸は降圧効果があるといわれています。コーヒーを1日1~3杯飲む人で高血圧になるリスクが低下するとの報告もあるため、適量で飲むことがおすすめです。
カフェイン依存の人は血圧が高くなりやすいのでしょうか?
伊藤 陽子(医師)
エナジードリンクなどカフェインが多く含まれるものを多飲することでカフェインの過剰摂取を起こす事があります。このような場合には、中枢神経系が過剰に刺激されて心拍数の増加、興奮、不眠など起こり、長期的な摂取では、高血圧のリスクが高くなる可能性もあるため注意が必要です。
高血圧が指摘されたら、毎日の煙草やコーヒーは控えるべきでしょうか?
伊藤 陽子(医師)
コーヒーは一時的に血圧を上昇させる作用がありますが、適量の摂取であれば血圧に影響はないといわれています。ただし、血圧が160/100mmHg以上の場合では1日2杯以上のコーヒー摂取は心血管疾患による死亡率が高まるという報告があります。高血圧を指摘されたら、まずは医療機関を受診し、医師に相談しましょう。
喫煙は血圧を上昇させる作用があります。また、習慣的に喫煙は動脈硬化や脳・心血管疾患などの発症リスクになります。高血圧を指摘されたら禁煙することがおすすめです。
まとめ コーヒーと血圧は関係する可能性があり、適量での摂取を!
コーヒーにはカフェインやポリフェノールが多く含まれています。コーヒー摂取による、身体への影響や効果について、まだ解明されていないことが多くあります。個人差はありますが、適量の摂取であれば血圧への影響は少なく、心臓疾患や脳疾患のリスク低減につながる可能性があるといわれています。過剰摂取にならないよう、適量の摂取をおすすめします。
「血圧」の異常で考えられる病気
「血圧」から医師が考えられる病気は7個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
循環器系の病気
高血圧低血圧心筋梗塞腎臓系の病気
慢性腎臓病脳血管系の病気
脳卒中呼吸器系の病気
睡眠時無呼吸症候群眼科の病気
高血圧性網膜症高血圧が持続すると動脈硬化が進行しやすくなり、さまざまな合併症を発症するリスクになります。また、低血圧があり、めまいや立ちくらみ、倦怠感、疲労感などの症状があると、日常生活に影響を及ぼす場合もあります。健康診断などで血圧異常の指摘や、症状がある場合は、早めに医療機関を受診することをおすすめします。
「高血圧」と関連する症状・関連する症状
「高血圧」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する病気
夜間頻尿
朝起きた時の頭痛
めまい下肢(足)の冷感
肩こり
高血圧は自覚症状が現れないことが多いです。しかし長期間高血圧が続くことで、動脈硬化が進行しやすくなります。動脈硬化が進行すると、脳卒中・心筋梗塞・腎機能の低下などの合併症を発症するリスクになります。
参考文献
高血圧治療ガイドライン 2019(JSH2019)作成委員会|日本高血圧学会
コーヒーの健康効果とは|健康長寿ネット
コーヒー摂取と全死亡・主要死因死亡との関連について|国立がん研究センター
あわせて読みたい
- 「高血圧の人が避けたい食べ物」はご存知ですか?予防法を解説!【医師監修】
──────────── - 「血圧を測る時間」はいつがベストかご存じですか?測定時の注意点も医師が解説!
──────────── - 健康診断の「平均血圧」はどのくらい?測定で分かる病気も医師が解説!
────────────

