
妊娠できる健康な体を持つ女性が“子どもを産むための道具=侍女”となるディストピア世界を描き、エミー賞やゴールデングローブ賞を受賞したドラマシリーズ「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」。その新章となる「テスタメント/誓願」の第9話が、5月20日に配信された。クライマックス直前の物語は、女性の権利を奪われた国で生きる少女たちに芽生えた覚悟ある行動と衝撃的な展開で、終始緊迫感に包まれた。(以下、ネタバレを含みます)
■衝撃的な世界を描いた「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」から15年後が舞台
本作の原作は、「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」と同じくカナダの作家、マーガレット・アトウッド氏の小説。同氏にとって2度目となる権威あるイギリスの文学賞、ブッカー賞を受賞した作品だ。
「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」の世界観を引き継ぎ、約15年後の全体主義国家・ギレアド共和国が舞台。抵抗組織の台頭があったものの、ギレアドは国民を強固に支配し、あまりにも冷酷な階級社会が続いていた。特に女性は信仰を盾に財産や、読み書きさえも禁じられるなど、すべての権利を奪われ、上級司令官の令嬢たちすら、その暴力の犠牲になっていた。
監視の目が張り巡らされた中、リディアおば(アン・ダウド)が支配する上級司令官の妻になるための教育を施す学校「リディアおば学院」で2人の少女が出会った。1人は、ギレアドの特権階級である司令官の娘として、体制の内側で従順かつ敬虔に育てられてきたアグネス(チェイス・インフィニティ)。もう1人は、国外からギレアドにやって来た新参者(改宗者)のデイジー(ルーシー・ハリデイ)だ。
■デイジーがアグネスのために立ち上がる
歯の診察中に少女たちに性暴力をした卑劣な歯科医師・グローブ(ランダル・エドワーズ)。アグネスも被害に遭ったと知ったデイジーが何かを決意した強いまなざしは、第8話のラストを強く印象付けた。
第9話の始まりは、何らかの罪で罰を受けた者の血を掃除するデイジーらパールガールと呼ばれるギレアドの外部から来た生徒たちの様子から。そこで、おばが旧約聖書にある「誰かを傷つけた者は、同じ目に遭うべき。目には目を、歯には歯を、手には手を」を彼女たちに復唱させた。
ギレアドでは旧約聖書を言葉通りに解釈する。その過激さにショックを受けてきたデイジーだが、逆にその“正義”を利用することを思い付いた。
初潮を迎え、結婚したくないためにリディアおばたちに報告しないでいたデイジーは、あえて初潮を知らせる鐘を鳴らした。ここでは「不妊から救われた」ことを意味する鐘の音。リディアおばたちは祝福し、デイジーをパールガールからアグネスたちと同じ“プラム”にすると告げた。
パールガールの真っ白な制服から、プラムのパープルの制服に着替えたデイジー。“そのとき”は、予想よりも数段早く訪れた。結婚準備の一つである、グローブ医師による歯科検診だ。動揺するデイジーを察して、アグネスも付き添うと申し出た。

■デイジーがうそをついてグローブ医師を告発
歯科検診では、デイジーの予想に反して何事もなく診察が終わろうとしていた。もしかしたら、グローブ医師はアグネスたちギレアドで純真に育った娘たちに対して、外の世界で成長したデイジーのことを警戒したのかもしれない。
だが、デイジーはそんなグローブ医師を驚かせる行動に出た。息づかいを荒くし、もらったばかりのプラムの制服を破り、叫び声を上げたのだ。その声は、診察室の前にいたアグネスやエステーおば(エヴァ・フット)、さらに他の司令官たちにも届いた。
アグネスと同様に被害に遭ったフルダ(イゾルデ・アルディエス)のように、被害者の自分が悪いのだという思想はデイジーにはない。フルダのことは「勘違い」と言い含めたヴィダラおば(メイベル・リー)の言い分も真っ向から否定し、思わずおばたちが顔をそむけるほどに生々しい表現で何があったかを説明した。ただ、リディアおばだけは、鋭くデイジーのうそを見抜きつつ、「悪が明るみに出たことを主に感謝するわ」と言った。
■アグネスのことが好きなベッカが衝撃の行動に出る
リディアおばは、国の女性部門の責任者であるジャド司令官(チャーリー・キャリック)に、結婚が決まったグローブ医師の娘・ベッカ(マッテア・コンフォルティ)の挙式後まで、刑の執行は待ってほしいと頼んだ。
ところが、父からデイジーに告発されたと聞いたベッカは、翌日デイジーに「うそつき」と詰め寄る。さらにアグネスに制止されたベッカは、アグネス自身が父の被害に遭ったことを知ってしまった。その衝撃は計り知れない。アグネスはベッカにとって単に親友ではなく、淡い恋心を抱いている相手だからだ。アグネスが自分を避けるようになったのは、父が原因だということも悟った。
静かに怒りを募らせたベッカは、その夜、父を自らの手で罰す。そして返り血を浴びた服の上に侍女のコートを着てアグネスの元へと向かい、「あなたはもう安全よ」と告げた――。
第9話は、アグネス役のチェイス・インフィニティ、デイジー役のルーシー・ハリデイ、ベッカ役のマッテア・コンフォルティの演技がこれまで以上に素晴らしく光った。
デイジーとベッカ、それぞれの思いを受け止めていくアグネス。もともとギレアドの抵抗組織メーデーの協力者としてギレアドに潜入するも、アグネスと友情を築いていくうちに、ギレアドの少女たちが誰からも守られないことに憤り、自分が守ると覚悟を決めたデイジー。友であり、恋するアグネスに自分の父が犯した罪に直面したベッカ。3人の若き俳優たちは、少女たちの繊細な心の機微を見事に表現した。今後のドラマ、映画での活躍が楽しみだ。
さて、物語は次回が最終話となる。第9話のラストでは、アグネスに「一緒に逃げよう」と言ったベッカが、“目”と呼ばれる国民を監視する部署に連れて行かれる展開となった。それはアグネスも予期しないことで、ベッカのことを両親に打ち明けたものの、病院に連れて行ってもらえると思っていたのだ。“目”によって厳しく罰せられる悲劇の可能性に、アグネスもベッカも震えた。
アグネス、デイジー、ベッカ、それぞれに覚悟を持って“正義”だと思う行動をした。その先にどんなことが待ち構えているのか。まとわりつくような緊張感と共に最終話配信を待ちたい。
「テスタメント/誓願」(全10話)は、ディズニープラスのスターにて毎週水曜に新エピソードを配信中。
◆文=ザテレビジョンドラマ部

