吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
保護犬たちに思うこと
割り箸で声帯を抜く。こんな恐ろしいこと、考えられるでしょうか。
小さい頃、昔話の『舌切り雀』という題が怖かったことを思い出しました。
まさかこの時代にもそんなことが行われているとは。
保護犬の譲渡会に行ってきました。繁殖場で何回も出産をさせられたわんこたちが保護活動をしている団体にレスキューされ、里親の元へ引き取られていく。
生まれてからずっと狭いケージの中に置かれ、散歩もしたこともなければ、名前さえない。
病気になっても診察を受けることも薬を与えられることもない。
劣悪な環境の中で、ただ生きて、出産する。
レスキューされたときにはボロボロで、全身皮膚病であったり、若くして腫瘍などの病気を抱えていたり。
そして中には声帯を切られている子もいて、吠えてもハスキーな声しか出せない。
保護団体の方の話だと、中には割り箸などで声帯を引っこ抜くような処置をする業者もいるそうです。
人里離れた場所に繁殖場を設置し、オークションに出すために繁殖させる。
このような施設を『パピーミル』『繁殖工場』というそうです。
私たちが目にしないところで、こんな残酷なことが行われている。
保護された子たちはその団体に手厚く治療され、食事を与えられ、もちろん名前もつけてもらいます。
成犬になっても散歩もできない子もいて、社会生活に慣れ、『預かりさん』のもとで家庭犬になるための生活をします。
でもこうして保護され引き取られる子たちは、ほんの一部なのだと思います。
譲渡会に参加していたわんこたちはみんな愛らしく、劣悪な環境にいたにも関わらずわんこ本来の無邪気さを取り戻していました。
トコトコと会場の中を歩き回り、抱っこされたり、撫で撫でされたり。保護された子たちの中で、選ばれる子も選ばれない子もいる。
仕方のないこととは言え、それを思うとまた胸の奥が掻きむしられるような気持ちになります。
わんこたちだけではない、この地球上の命あるものすべてに言えること。
もっともっと命というものに対して敬意を持たなければ解決しないのかもしれません。
動物愛護法が何度か改正されていますが、それでも繁殖場なるものがまかり通っている。
人間のエゴはどこまで醜いのでしょうか。法律で命あるものを守る以前に、私たち一人ひとりが命に対する意識、情操を豊かに持つことが大切なのかもしれません。
そして、自分に何ができるのか。それは家族を、友達を大切にすることから始まるのかもしれません。
譲渡会の無邪気なわんこたちが教えてくれたこと。思い出すたびに、胸がきゅっとするのです。
※記事中の写真はすべてイメージ
[文/吉元由美 構成/grape編集部]

