
コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回紹介するのは、SNSで漫画やイラストを発信しているふうこジャスミンさんの『生まれてから一度もかわいがってもらえない猫』だ。
同作はクローンとして生まれた猫の一生を描いた一作で、以前ふうこジャスミンさんのX(旧Twitter)にポストされると、3000以上の「いいね」が寄せられている。そこで作者のふうこジャスミンさんに、同作を描いたきっかけについて話を伺った。
■“兄”に尽くすためにやってきた子猫…待っていた宿命に感動の声

病弱でいつも寝込んでいる猫のトラ太のもとに、トラ太の見た目とそっくりな子猫がやってきた。トラ太が自身の兄と聞かされた子猫は、トラ太のために看病をしようとする。
様子を見ていた飼い主からは「あなたは、まだ何もしなくていいのよ」「ただ大きくなってくれたらいい」と言われ、以降はご飯をたくさん食べてトレーニングに励む。しかし、子猫が生まれた際、飼い主はある人物に「一切の情をかけてはいけない」と言われており…。
読者からは「とても辛い話だけど、ラストで感動して涙出た」「一生懸命な子猫が健気で良い子すぎる」などの反響が数多く寄せられていた。
■漫画講師の「人間的な動作が描けていない」という一言が作品誕生のきっかけ?

――『生まれてから一度もかわいがってもらえない猫』を創作したきっかけや理由があればお教えください。
ストーリーは漠然とした形ですが、ずっと頭の中にありました。初めは主人公を人間で描くつもりだったのですが、どうしても漫画にすることが躊躇われていました。
そんな時、有名な漫画講師の方に、昔に描いた少女漫画をYouTube動画で添削していただいたんです。「あなたは人間的な動作が描けていない」と助言をいただきました。その言葉を聞いて私は「あ!それなら動物を描こう」と思ったのが、猫でこの漫画を描こうとしたきっかけになった気がします。
普通ならその助言をもらって、人間の動作や表情などを研究する方向に行くだろうに、私の方向性は「猫で描く」。先生も助言のしがいがないですよね。でも実際、猫で描き始めてみると、あんなに気乗りしなかった気持ちが嘘みたいに、スルスルと楽しく描くことができました。
そして作中に出てくる人間も、少女漫画風ではなくコミカルなタッチにして、動作や表情を細かく描くことをやめました。ある意味、逃げから描いた漫画でもありますが、何かから解放された気持ちにもなりました。
――描いたうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい!」というポイントがあれば教えてください。
Xで何とか目に止めてもらえるよう、最初に描いた1ページ目を最後に大修正しました。修正前は猫がタオルに包まれている表紙的な絵だけだったんです。でも、これでは目に止まらない。なので、1ページ目早々に不穏な空気を感じさせるセリフを挿入して、タイトルも可哀想な猫を想像させるものにしました。
初めのタイトルは「兄弟♡ねこ」だったんです。“♡”いらんやろ!って感じですよね。内容的にも。あと、前半は、主人公猫にとって辛い状況なので、背景である部屋の色合いをブルーで統一、後半は幸せな感じを出したくて、家の中をポップな色合いに変化させました。
それと、このページを描くためにここまで頑張って描いたぞ!というページがあります。28ページの4人(1人と3匹)で笑い合う1枚絵です。不遇だった主人公の猫が、一目見て幸せになったんだ!と思ってもらえるように描きました。
――特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共に教えてください。
特に気に入ってるシーンは25ぺージで、主人公の猫が「自分にはもう何もあげられる物がない」と震えているシーンです。
「せめて、これを…」と持っていた煮干しを女の子に渡そうとする猫を描きながら、自分も涙目になってしまいました。
何か物を渡さなければ、何か自分が価値あるモノを持っていなければ、自分の存在は無意味だと思っている猫。そんな思いを持った猫が、次のページで「何もいらないよ」と言われることで、読んでいる方にジーンとしてもらえたら良いなぁという思いを込めました。
自分的には、ここが1番泣きのシーン!と思っていましたが、「ここで泣きました」と反応を示してくれた人はいませんでした(笑)。ここは私だけの泣きポイントだった…?もし、このシーンが好きでした!という方がいたら教えて欲しいです。
――作中に登場する猫ちゃんたちはどのような流れで誕生したのでしょうか?
この猫キャラは、普段Xに投稿している、ほのぼの猫4コマ漫画に登場させていた「つり目ねこ」というキャラクターです。
二足歩行で2頭身で無表情な、つり目な猫たちが、いろいろな柄でわちゃわちゃしながら登場しています。普段の4コマ漫画が、そんなほんわかな猫キャラだったのに、急に32ページの長編で、内容的に辛いシーンもある漫画にしてしまったことで、「キャラと内容が合わなくて残念」という指摘をフォロワーさんからDMで受けました。
多分、他にもそう思った方がたくさんいると思います。かっこいいリアルなタッチの猫で描いた方が、もっと目を引いたかもしれませんし…。
でも私、この「二足歩行で2頭身で無表情な、つり目ねこ」というキャラクターを描いてる時間が好きなので、内容には合わないかもしれませんが、作者都合で描いてしまいました。今はまた、ほのぼのに戻った「つり目ねこ」で4コマ漫画を描いています。
が、次の長編の猫漫画のプロットを書いていて、それも「つり目ねこ」で描こうとしています。すみません(笑)。次はもう少し、ほのぼの寄りです。多分。
――読者へメッセージをお願いします。
描いた漫画で、こんなにもたくさんの方に届いたのは初めてです。Xの引用ポストで「号泣」と書かれたものが何連続も通知で来た時は、私も嬉しくて号泣しました。読んでくださった方々、反応してくださった方々に本当に感謝しております。
そして、これから読んでくださる方には、「号泣」を意識しないで読んでもらいたいです!ハードルが上がりますもので!「泣くの…かも?」くらいの思いで読んでください。
次の長編猫漫画も、たくさんの方に届いて、またこちらで取上げてもらえるよう頑張りますので、よろしくお願いします。
また漫画中の猫キャラ、つり目ねこがたくさん描かれたカード、「つり目ねこオラクルカード」が今年の4月に販売開始されました。「不思議と欲しいメッセージが出てくる!」と好評をいただいておりますので、今までオラクルカードを使ったことがない方にもぜひ手にしてもらえると嬉しいです!

