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2026年5月25日 文士劇御礼|辛酸なめ子

2026年5月25日 文士劇御礼|辛酸なめ子

去年の12月ごろから稽古に入らせていただき、約半年間、ついに紀伊國屋ホールにて文士劇が行われました。4人で順番に演じる、スカーレット・オハラの「スカーレットC」という一番短い出番で出させていただきました。

 

来てくださったお客様をはじめとして、日本文藝家協会の皆様、出演者の皆様、業界トップの衣装さん、ヘアメイクさん、音響さん、照明さん、そして制作会社の方々に心から御礼とお疲れ様を申し上げます。日本文藝家協会あてにお花を送ってくださった出版社様もありがとうございました。

直前まで「演技 コツ」で検索しましたが、結局わからないまま、未熟な演技を晒してしまいすみませんでした。GW中、稽古がない時期があって不安だったので、綿矢さんにご提案いただき、綿矢さん、阿部さんと何度か自主練をして、毎日家で発声練習とセリフ暗唱に励み、セリフは一応入ったのですが、その先の表現力が足りなかったです。

演技に挑戦してできないと実感してからは、ドラマを観てもどの俳優さんもすごいと思わされます。表情や目線、声の使い方、動作など……。素人が紀伊國屋ホールの舞台に立つなんて、転生もののストーリーのようです。

稽古が始まってから、父が他界し、実は千秋楽の日は施餓鬼の法要で、その日出演ができないかもしれない可能性もありました。お墓のあるお寺は、施餓鬼という行事を最も重視する宗派らしく……。90代のご住職は、お布施のことなど大事な話のときは電話ではなくお寺に直接呼び出すのですが、4月にお寺に参ったとき、施餓鬼の話になりました。お布施の金額など伺ったあと、大切な用事があって施餓鬼には参列できないかもしれません、と言ったら、住職にかなり激しく叱責されました。

仏事のサイトを調べると「施餓鬼法要への参加は任意で、強制ではありません」と書かれているのですが、ご住職によると、新盆の施餓鬼を欠席するなんて考えられないとのこと。私なりの方法で供養しているつもりでしたが、施餓鬼は重要な先祖供養の儀式だそうです。

「お父さんがかわいそうだ。私だったらとても耐えられない」「何のために親が子を産んだと思っているのか」と、さんざん親不孝者呼ばわりされ……。

特に私の職業や役割は伝えず「この日行けないと500人くらいの人に迷惑をかけることになるんです。どうしても休ませてください!」

と、スカーレットがレット・バトラーにお金を借りに行く演技よりも必死で頼みました。

それでなんとか、妹が代わりに行ってくれる可能性も伝え、住職は渋々「本当はこんなことはあり得ません」と言いながらも、少し軟化しました。

「父はきっと私のことを応援してくれていると思います!」と勝手な憶測を伝えつつ寺を後にしました。

ときどき白い壁に、目覚めると亡き親族からの霊界通信のようなメッセージが浮かんでいることがあるのですが、舞台初日の朝、「楽しんで」という父の字が浮かんでじわじわ消えていきました。

緊張やプレッシャーというより、楽しんでやろうと思って舞台に臨めたのはよかったです。

舞台から、映画「国宝」のようにホコリに光が当たってキラキラしている光景を見られるのかな、と期待していたのですが、紀伊國屋ホールは掃除が行き届いているからか埃が舞っていなかったので見えなかったです。

それでも温かく見守ってくれているお客さんの中に、ふと両親の存在を感じることができました。

20日から24日まで、場当たりや稽古、ゲネプロ、本番とかなりの時間を過ごした舞台裏。この緊張感と少しの高揚感は忘れられません。

配信元: 幻冬舎plus

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