●フランスから向けられる日本の「児童ポルノ」へのまなざし
──現地の報道はどのような空気感なのでしょうか。
仏メディアは、日本の刑法上で児童ポルノの画像や動画を所持したり提供したりする行為は児童買春・児童ポルノ禁止法で刑罰の対象になるが、生成AIや人工的につくられる画像や動画(漫画やアニメ)に対する児童ポルノに対する刑罰には法的グレーゾーンが存在し、フランスのように刑事罰の対象にはならないとも報じられています。
フランスではたびたび、日本のポルノ産業および児童ポルノに対する規制について報道されてきました。規制や罰則がフランスと比べて軽い点が指摘されています。
こうした規制の強さの差や法的グレーゾーンの存在は、日本における表現の自由や、アニメ・漫画などの創作物の扱いに関する文化的感覚の違いに起因すると考えられます。
一方で、仏メディアでは、フランスや欧州基準と比較して、日本の制度や社会の対応を日本政府が改善することも期待しているとも報じております。
●フランスでは「知らなかった」は通用しない
——フランスの法律を詳しく知らないこともあるかと思います。「違法だとは思わなかった」という反論には耳を貸されないのでしょうか。
ビジネスや観光などでフランスを訪れる日本人が、もし犯罪を犯してしまった場合、影山氏のケースのように「知らなかった」という言い訳は、警察や裁判所において通用しません。
フランスには、古代ローマ法に由来する 「法律は誰もが知っているものとみなされる(Nul n’est censé ignorer la loi)」 という基本原則があり、これはフランス人に限らず、外国から訪れる人にも適用されます。この基本原則ではすべての人は法を知っているものとみなされ、知らなかったことを理由に罪を免れることは認められません。
フランスやその他の外国を訪れる際には、事前にインターネットやガイドブックでその国の法制度や規制に関する知識に目を通しておくことが推奨されます。
これは児童ポルノ犯罪に限らず、あらゆる犯罪において通用する重要な注意点です。
もちろん、その国の弁護士と同等の専門性の高い知識を持つことはさすがに難しいものですし、言語等の問題で理解しにくい場合は、私たちのような日本に在住していて日本語ができる外国法事務弁護士にもっと具体的なアドバイスをもらうのもいいかもしれません。
【取材協力弁護士】 マージュ パスカル・聡平(まーじゅ ぱすかる そうへい)弁護士 外国法事務弁護士(パリ弁護士会・第二東京弁護士会)。フランスのパリ第2大学卒業。現地企業に勤務後、2016年にフランスで弁護士登録。フランスの法律事務所を経て、現職。外国法事務弁護士として2021年登録。国内外のM&A、法人設立、ジョイントベンチャーの設立をはじめ、コーポレート・商業取引における各種契約及び規制分野(GDPR、IT関連等)に経験を持つ。
事務所名:LPA外国法事務弁護士法人
事務所URL:https://lpalaw.jp/jp/

