2024年度、訪問介護事業者の倒産が過去最多の81件に達し、廃業件数もこれを上回る状況となりました。
介護報酬の2%超引き下げが引き金と報じられることが多いものの、実態はより複雑です。厚生労働省のデータによれば、倒産や廃業を上回るペースで新規参入が続き、訪問介護の請求事業所数は増加傾向にあります。
住宅型有料老人ホームの新設ラッシュも、訪問介護事業者数の増加に拍車をかけています。
本稿では、こうした「淘汰」と「拡大」が同時進行する現代の介護業界で、事業者が生き残るための具体戦略を、最新制度や現場事例を交えて解説します。
倒産・廃業の増加、その裏で進む新規参入

2024年度の介護事業者倒産は179件と過去最多を記録し、特に訪問介護が86件、通所・短期入所が55件、有料老人ホームが17件と、いずれも高水準です。
背景には、報酬改定だけでなく、利用者獲得競争の激化、人手不足、物価高騰といった複合的要因があります。
一方で、厚労省の介護給付実績によれば、訪問介護の請求事業所数はむしろ増加しています。これは、住宅型有料老人ホームの新設に伴い、併設型の訪問介護事業所が次々と開業しているためです。
つまり、「事業者数が減っている」わけではなく、競争がますます激化しているのが実態です。
勝ち残る事業者の共通点――ヘルパー確保と処遇改善

競争が激化するなか、最大の課題は「ヘルパーの確保」です。
ヘルパーを多く雇用できる事業者は、介護職員処遇改善加算の上位区分を算定しやすく、得た加算を時給アップや福利厚生強化に充てることで、さらに人材を呼び込む好循環を生み出しています。
【事例】
A社(東京都・訪問介護)は、処遇改善加算の最上位区分を取得。毎年ベースアップを実施し、時給も地域相場より10%高く設定。結果、ヘルパーの応募が絶えず、離職率も低い。加算の活用と採用戦略が事業拡大の原動力となっています。
一方で、旧態依然としたサービスしか提供できない事業所は、利用者を獲得できず倒産や廃業に追い込まれています。
特に通所介護(デイサービス)では、レクリエーションやリハビリ、送迎サービスの質で差がつき、利用者ニーズに応えられない事業所は市場から淘汰されています。

