堀江貴文さんやひろゆきさんなどの著名人が、「賃貸のほうが身軽でいい」といった発言をし、注目を集めることも多い。だが、不動産価格が高騰し、物価上昇も続く今、これまでの考え方がそのまま通用するとは限らない。
それにしても、なぜこのテーマはいつまでも結論が出ないのだろうか。今回は、不動産鑑定士の資格を持ち、マンション開発なども手掛ける小原正徳さんに、賃貸か持ち家か、それぞれの言い分や最新トレンド、さらに賃貸・持ち家の選び方について話を聞いた。

■実はスゴい、日本の住宅ローン
持ち家か賃貸かという論争に結論が出ない理由はシンプルである。それは、個人のライフスタイルや経済状況が根本的に違うからだ。
「例えば、著名人が賃貸をおすすめする背景には、彼らが多額の資金を持つ富裕層であるという側面があります。ホテル暮らしや自由な転居を可能にする圧倒的な資金力があれば、所有という制約のない賃貸は合理的な選択肢になりますから」(小原さん、以下「」も)

資金に余裕がある層にとっては、変化に合わせて柔軟に住み替えられる賃貸に分がある。一方で、これから着実に資産を築いていきたい一般のファミリー層にとっては、別の視点が必要だ。毎月家賃を払い続けても自分の資産にならない賃貸に対し、持ち家には、「住宅ローン」という仕組みならではの大きなメリットがある。
「将来の資産を考えるなら、持ち家のメリットは計り知れません。最大の理由は、住宅ローンという制度がとても恵まれていること。超低金利で、35年という長期間お金を借りられるなんて、他のローンではまずあり得ない話なんです」
続けて、「ここ10年ほどで都心のマンションを買った人たちは結果的に資産価値が上がり、かなり有利な状況に立っています」と話す小原さん。

■高すぎる都心部を避ける「こちくら郊外」という選択肢
将来の資産という観点からも、持ち家が魅力的だということがわかった。しかし、現在の不動産市場を見ると、手放しで「今すぐ家を買おう」とは言いづらい現実がある。
東京都心部のマンション価格は高騰しており、普通のファミリー層が簡単に手を出せる金額ではなくなってしまった。かといって賃貸を選ぼうにも、立地のよいファミリー向け物件は市場に少なく、家賃も上昇傾向にある。こうした厳しい状況の中で、住まい探しのトレンドはどのように変化しているのだろうか。
「今の都心の不動産は、買うにしても借りるにしてもコストが高すぎて、多くの人にとって選択肢に入らなくなってきています。そこで最近、ライフルホームズ総研のレポートでもトレンドワードとして挙げられ、注目を集めているのが『こちくら郊外』への大移動です。こちくら郊外とは、グリーン車や特急を利用して快適に都心へ通勤でき、かつ心地よく暮らせる程よい郊外エリアのことを指します」
テレワークが普及したとはいえ、完全なリモートワークではなく、週に数回は出社を求められる企業も増えている。そうした働き方の変化に合わせ、住環境のよさと通勤の利便性を両立できるエリアが再評価されているのだそう。
「例えば、新宿まで特急やグリーン車で座って通えるような、少し離れた郊外の駅への問い合わせが増えているというデータもあります。都心の狭くて高い家に無理して住むのではなく、通勤に少し時間はかかっても、座って快適に移動できる環境を選び、その分広くてコストパフォーマンスのよい家に住む。環境と経済面のバランスを取ったこの『こちくら郊外』という選択は、これからのファミリー層にとって現実的かつ魅力的な選択肢になっていくと思います」

■損得だけで選ぶと後悔も!?令和の正しい住まい選び
結局のところ、賃貸と持ち家、どちらを選ぶのが正解なのだろうか。「絶対にこちらがよい」という1つの答えは存在しない。経済的な損得だけでなく、自分たちの働き方や家族の将来像に合った住まいを選ぶことが何より大切になる。最後に、それぞれのスタイルに向いている人の特徴を小原さんにまとめてもらった。
「将来の安心を増やしたい、老後の住居費の負担を軽くしたいと考えるなら、若いうちに住宅ローンを活用して持ち家を購入するのは有力な選択肢です。インフレへの備えにもなりますからね」
「ただし、予算に無理のない範囲で物件を選ぶことが大前提です。一方、転勤が多い方や、家族構成が変わるタイミングで身軽に引っ越したい方、あるいは経済的に十分な余裕があり、場所にとらわれない暮らしを楽しみたい方にとっては、賃貸のほうがストレスなく過ごせるでしょう」
住まいの選択は、人生の大きな決断だ。ネットやSNS上の極端な意見に惑わされることなく、自分たちの価値観や資金計画としっかり向き合うことが求められる。
「持ち家にも賃貸にも、それぞれ違ったよさがあります。自分たち家族にとって何が一番幸せかを軸に、納得のいく住まい選びをしてほしいですね」

「賃貸か持ち家か」という永遠のテーマの正解は、論争の中ではなく、あなたが描きたい未来の暮らしの中にこそあるはずだ。
取材・文=西脇章太(にげば企画)
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