水腎症は大人だけではなく、乳幼児や胎児に発見されることも珍しくない病気です。
症状が出ていたり、尿に異常を感じたりすると「大きな病気なのではないか」と不安に感じる方もいます。
水腎症と診断されて不安を感じている方に向けて、水腎症の原因や検査法を解説します。
※この記事はメディカルドックにて『「水腎症(すいじんしょう)」とは?症状・原因についても解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
竹内 尚史(新松戸中央総合病院)
東京医科大学卒業。その後、複数の病院を経て、2021年より新松戸中央総合病院にて泌尿器科医として勤務。ダヴィンチ手術を多く手がけている。著書は「前立腺がんは「ロボット手術」で完治を目指す!青月社(共著、改訂版)」。日本泌尿器科学会泌尿器科専門医・指導医、日本性機能学会性機能専門医、日本内分泌学会内分泌代謝科(泌尿器科)専門医、日本泌尿器内視鏡学会 泌尿器ロボット支援手術プロクター認定医(手術指導医)、日本ロボット外科学会Robo Doc認定医・ロボット(da Vinci)手術認定医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医 、日本メンズヘルス医学 テストステロン治療認定医、日本医師会認定産業医。
水腎症の原因と診断方法

水腎症の原因はなんですか?
水腎症は尿管・膀胱・尿道の経路に何らかの通過障害が生じることで発症するといわれています。
水腎症は胎児から大人まで幅広い年齢層の方がかかり得る病気で、大人の場合は症状の背景に別の病気が隠れている場合があります。
水腎症を起こす主な病気は尿路結石・尿管がん・腎盂尿管移行部狭窄症、膀胱尿管逆流症、前立腺がん・前立腺肥大症・神経因性膀胱です。
尿路結石やがんを発症すると尿の通り道の尿管が塞がれ、前立腺肥大症や低活動膀胱を発症すると膀胱から尿をうまく出せずに膀胱や腎臓まで尿がたまってしまうのです。
また妊娠中に胎児の成長によって尿の通り道が塞がれて、尿管が狭くなるケースもあります。その場合は分娩後に自然と治っていきます。
胎児・乳幼児に発症する水腎症は、ほとんどの場合が先天性のものです。なかでも最も多いのが腎盂尿管移行部という腎臓から尿管に移る部分が狭いという状態が原因のものです。
出生前に診断される水腎症の35〜40%が、腎盂尿管移行部の狭窄が原因といわれています。男児に多く、左側の腎臓に症状が出やすい傾向があります。
どのように診断を行うのですか?
診断は基本的に超音波検査で行います。水腎症を確認するとともに程度も判断できることが多いです。
重度の水腎症と診断された場合には、腎機能が低下していないかどうかを調べる検査を行うこともあります。
他の病気が疑われる場合は尿道の広がりを確認できる腎盂造影検査や、尿管が詰まっている原因を探す腹部CT・MRI検査を行います。
先天的な異常の場合にも、超音波検査にて胎児の水腎症を確認することが可能です。妊娠中に胎児の水腎症が発覚することは珍しいことではなく、妊娠25週目あたりで発見されることが多いです。また出生後に腹痛やしこりを発見することで発覚することもあります。
妊娠中でも発見できることがあるのですね。
妊娠中の超音波検査で発見できるケースが増えています。
超音波検査は妊娠の経過とともに胎児の症状を確認でき、繰り返し行えることが利点です。ただしこれは画像所見であり、産まれてから確定診断を受ける場合が多いです。
妊娠中に発見されると不安になるかもしれませんが、医師の説明をよく聞いて正しい知識を得るようにしましょう。
編集部まとめ

水腎症とは尿の通り道に何らかの障害が生じたために尿の流れが悪くなり、尿管や腎臓に尿がたまってしまう病気です。
その症状は全く症状が出ない軽度のものから、腰・下腹部にかけて激しい痛みを感じる重度のものまであります。
大人だけではなく乳幼児や胎児にもみられ、超音波検査によって発見される場合がほとんどです。
治療方法は原因によって異なりますが、重度のケースや腎機能の低下がみられる場合は手術が必要になる可能性もあります。
水腎症は放置しておくと腎機能障害、尿路感染症や尿路結石などの合併症を引き起こすこともあるため、症状を自覚した場合には早急に医療機関を受診しましょう。
参考文献
水腎症|日本小児泌尿器科学会
小児外科で治療する病気水腎症・水尿管|一般社団法人日本小児外科学会
胎児の泌尿器科系異常を見つけたら|日本産婦人科医会

