未破裂脳動脈瘤のほとんどは無症状ですが、一部の方では破裂前に「警告出血」が起こることがあります。突然の激しい頭痛や、まぶたが下がる・物が二重に見えるなどの目の症状が代表的なサインです。これらは数時間で治まることもあるため見過ごされやすいのですが、早期に気づくことが大切な意味を持ちます。どのようなサインに注意すべきかを詳しく解説します。

監修医師:
伊藤 たえ(医師)
浜松医科大学医学部卒業。浜松医科大学医学部附属病院初期研修。東京都の総合病院脳神経外科、菅原脳神経外科クリニックなどを経て赤坂パークビル脳神経外科菅原クリニック東京脳ドックの院長に就任。日本脳神経外科学会専門医、日本脳卒中学会専門医、日本脳ドック学会認定医。
未破裂脳動脈瘤が破裂する前の前兆サイン
このセクションでは、動脈瘤が破裂する前に現れる可能性のある「前兆」のサインについて解説します。すべての方に前兆があるわけではありませんが、これらのサインを知っておくことが、万が一の際に命を救うことにつながります。
前兆が起こるメカニズム
未破裂脳動脈瘤のほとんどは無症状です。しかし、一部の方では破裂に至る前に、動脈瘤の急激な膨張や、壁からごく少量の血液が漏れ出す「警告出血」が起こることがあります。この警告出血は、本格的な破裂の前触れであることから「前哨(ぜんしょう)出血」とも呼ばれ、くも膜下出血患者の10~40%が、大出血の数時間から数週間前に経験すると報告されています。
警告出血が生じると、脳を覆うくも膜の下の空間に少量の血液が流れ込み、それが刺激となってさまざまな症状が現れることがあります。注意すべきは、この段階での症状が比較的軽度で、数時間から数日で治まってしまうことが多い点です。「少し様子を見ていたら治まった」と感じてしまうケースですが、警告出血の後は本格的な破裂のリスクが極めて高まるとされており、このサインを見逃さず、早期に医療機関を受診することが極めて重要です。
前兆として現れやすい具体的なサイン
破裂前の前兆として報告されているサインには、次のようなものがあります。
突然の激しい頭痛は、最も見逃してはならないサインのひとつです。「バットで殴られたような」「これまでに一度も経験したことがないほどの」と表現される突発的な痛みが特徴で、一般的な緊張性頭痛や片頭痛とは明らかに異なるとされています。この頭痛は警告出血のサインである可能性が高いです。
目のまわりの症状も重要な前兆です。具体的には、まぶたが下がって開けにくくなる「眼瞼下垂(がんけんかすい)」、物が二重に見える「複視(ふくし)」、左右の瞳孔(どうこう)の大きさが変わるといった変化です。これらは、眼球の動きや瞳孔の調節を司る「動眼神経」のすぐそばに動脈瘤ができ、それが大きくなることで神経を物理的に圧迫するために起こります。
そのほかにも、首の後ろや肩の強いこわばり(項部硬直)、急な視力低下、めまい、吐き気、光や音への過敏さなどが現れる場合があります。これらの症状は単独で現れることもあれば、複数が重なることもあります。「疲れかな」と見過ごされやすいものですが、急に、そして強く現れた場合には、速やかに神経内科や脳神経外科を受診することが望まれます。
まとめ
未破裂脳動脈瘤は、その存在を知ることで大きな不安を感じるかもしれませんが、正しい知識を持つことが冷静な第一歩です。多くは生涯破裂しませんが、破裂の前兆となりうる「いつもと違う激しい頭痛」や目の症状には注意が必要です。診断後は、動脈瘤の特性やご自身の健康状態に応じて、経過観察か手術かを担当医と慎重に検討します。どちらの選択肢でも、高血圧の管理、禁煙、ストレスコントロールといった生活習慣の見直しが破裂リスクを低減させる鍵となります。定期的な検査を欠かさず、不安なことは専門医に相談しながら、心身ともに健やかな毎日を送ることを目指しましょう。
参考文献
日本脳神経血管内治療学会「脳動脈瘤について」
国立循環器病研究センター「脳動脈瘤」
厚生労働省 e-ヘルスネット「脳血管障害・脳卒中」
日本脳卒中学会「脳卒中治療ガイドライン2021(改訂2025)」
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