痰に血が混じっていることに気づいたとき、どのように対応すればよいのでしょうか。血痰は、肺がんを含むさまざまな疾患で見られる症状のひとつです。このセクションでは、血痰が生じるメカニズムと肺がんとの関係、そして血痰を見つけた際の受診の流れについてご説明します。

監修医師:
松本 学(きだ呼吸器・リハビリクリニック)
兵庫医科大学医学部卒業 。専門は呼吸器外科・内科・呼吸器リハビリテーション科。現在は「きだ呼吸器・リハビリクリニック」院長。日本外科学会専門医。日本医師会認定産業医。
肺がんと血痰|気づいたらどうすればいいか
痰の中に血が混じっていた——そのような経験をした方は、大きな不安を感じることでしょう。このセクションでは、血痰とは何か、そして肺がんとの関連についてわかりやすく説明します。
血痰のメカニズムと肺がんとの関係
血痰(けったん)とは、咳とともに出る痰の中に血液が混じった状態のことをいいます。血液の量は少量の場合から、多量の喀血(かっけつ:血を吐き出すこと)まで幅があり、色も鮮紅色(鮮やかな赤)から暗赤色・茶色がかったものまでさまざまです。
肺がんにおいて血痰が生じるのは、腫瘍が気道の粘膜や血管に影響を与えることが主な原因です。腫瘍の表面には新生血管(腫瘍が成長するために新たに作られた血管)が多く存在し、これらは正常な血管に比べて壊れやすい性質があります。そのため、咳による物理的な刺激や、腫瘍の壊死(組織が死滅すること)などにより、出血が起きやすくなります。
血痰は、肺がんの患者さんの約25〜50%に見られるとされており(参考:日本呼吸器学会)、特に扁平上皮がんや肺門部に発生した腫瘍で表れやすい傾向があります。少量の血痰が断続的に続くことが多く、大量の喀血(大喀血)はまれですが、迅速な対応が必要な状態です。
血痰が必ずしも肺がんを意味するわけではなく、肺炎・気管支炎・気管支拡張症・肺結核などでも生じることがあります。しかしながら、血痰は「見逃してはいけない症状」の一つであり、初めて経験した場合には、速やかに医療機関を受診することが大切です。
血痰を見つけたときの対応と受診の流れ
血痰を見つけた場合、まず落ち着いて状況を確認することが大切です。血の量が多い(大量の喀血)、突然に始まった、息苦しさや胸の痛みを伴う場合には、救急外来への受診が必要です。一方、少量の血が痰に混じっている程度であれば、まずはかかりつけの内科や呼吸器内科への受診を検討しましょう。
受診の際には、血痰の様子をできる限り詳しく医師に伝えることが重要です。具体的には、いつから続いているか・血の量(痰全体の何割程度か)・血の色(鮮紅色か暗赤色か)・咳との関係(咳のたびに出るか・突然出るか)・ほかに気になる症状(発熱・体重減少・胸の痛みなど)を整理しておくとよいでしょう。
医療機関では、問診のほかに胸部X線検査・胸部CT検査・喀痰細胞診(痰の中のがん細胞を調べる検査)・気管支鏡検査などが行われることがあります。気管支鏡検査とは、内視鏡を気道の中に挿入して直接観察する検査で、腫瘍の位置や性状の確認のほか、組織の採取(生検)も行うことができます。
血痰が繰り返される場合や、「1回だけだから大丈夫」と思って様子を見ていた場合でも、症状が続いているなら受診を先延ばしにしないことが重要です。血痰は身体が発する重要なサインであり、その背景にある原因を早期に特定することが、その後の経過を大きく左右することがあります。
まとめ
肺がんは初期に症状が出にくい疾患ですが、長引く咳・血痰・胸の違和感・息切れ・声のかすれなどは、身体が発する大切なサインです。これらの症状が2〜3週間以上続く場合や、複数の症状が重なる場合には、早めに呼吸器内科や内科を受診することをおすすめします。喫煙歴がある方や50歳以上の方は、定期的な胸部CT検査も選択肢の一つです。症状に気づいた今が、行動を起こす大切なタイミングです。
参考文献
国立がん研究センター がん情報サービス「肺がん」
国立がん研究センター がん情報サービス「肺がんの検査」
厚生労働省「たばこと健康に関する情報ページ」- 「がん患者の5年生存率」を厚生労働省が新たに公表 がん予防と早期発見のポイントとは【医師監修】
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