高齢になると便に関する各種障害がみられるようになります。直腸脱もその1つとして知られています。
直腸脱は腸が内側にめくれて肛門から出てくる症状です。排便時の「いきみ」がきっかけで起こります。
また、直腸脱は肛門の筋肉が緩むことで起こるとされており、高齢の女性に多いのも特徴です。
ただし若い世代でも直腸脱が確認されることがあります。それは長時間の排便やストレスなどを要因として起こることが一般的です。
このようにどの世代でも起こり得る直腸脱ですが、具体的な症状や要因について理解していない方が多いと思います。
この記事では直腸脱の症状・原因などについて解説します。類似する他の病気との違いも解説するので、最後までお読みいただけると幸いです。
直腸脱に関する正しい知識を身につけ、万が一のときに適切な対処ができるよう意識しましょう。
※この記事はメディカルドックにて『「直腸脱」の初期症状や原因はご存知ですか?再発についてなど医師が監修!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。
直腸脱の症状と原因

直腸脱の症状を教えてください。
直腸脱には大きく分けて完全直腸脱と直腸重積の2つがあります。完全直腸脱とは、腸が腸の中に入り込み、肛門から出てしまう症状のことです。一方で直腸重積は同じように腸が腸の中に入り込んでいるものの、肛門からは出ていない症状を指します。「重積」とは、腸が腸に入り込んでいる状態のことを指します。靴下を脱いだときに内側がめくれて重なり合う状態をイメージするとわかりやすいです。
なお、一般的に直腸脱といわれる場合、前者の完全直腸脱を指すことが多いです。
初期症状はありますか?
直腸脱の初期症状は、便を催すタイミングが小分けになる・下腹部に違和感を覚える・気づいたら下着が便で汚れているなどが挙げられます。これらが進行すると、排便時のいきみで直腸が肛門から出てくるようになります。ただし初期症状の段階ではいきみをやめると自然に肛門の中へ腸が戻ることが多いのが特徴です。
直腸脱の原因を教えてください。
直腸脱の原因は肛門括約筋の緩みです。肛門括約筋は、肛門を締める働きがあります。筋肉であるため加齢とともに衰えるものです。肛門括約筋の緩みは、特に高齢の女性に多い傾向があります。そのほか、排便時のいきみが原因として起こることもあります。長時間のトイレなどでいきみすぎると、肛門括約筋が緩んでいなくても直腸脱を起こす可能性があるのです。
脱肛とはどのように違うのでしょうか?
脱肛とは、肛門の内側にある痔が大きくなりすぎて、肛門の内側の皮膚を引きずりこんで肛門の外へ出てしまうことです。一方で直腸脱で出てくるのは腸です。肛門から出てくるという点では似ていますが、腸は内臓の一部なので、人間にとって重要な器官だといえます。
編集部まとめ

この記事では直腸脱について症状・原因・入院期間・再発・後遺症などについて解説しました。
直腸脱は腸が内側にめくれた状態で肛門の外に出てしまう病気です。主に肛門括約筋の衰えにより起こるほか、長時間の排便における「いきみ」などが原因で発症します。
直腸脱は初期段階においては軽微な失禁などの症状で現れますが、徐々に腸が肛門の外に出てくるようになり、最終的には自分で戻せないほど露出してしまいます。
このような状態になると手術が必要です。手術には経腹手術と経会陰手術の2種類があり、経会陰手術の方が比較的負担が少なく、入院期間も短期間で終わります。
ただし経会陰手術においては再発の可能性が高くなる傾向にあり、その結果として排便障害などの後遺症になることがデメリットです。
一方で経腹手術は全身麻酔で行うため体への負担は大きいですが、比較的再発リスクが低いので若い方には向いている手術方法だといえます。
この記事を通して直腸脱の概要・対処法などについて理解を深めていただけたでしょうか。最後までお読みいただき、ありがとうございます。
参考文献
直腸脱はどんな病気(一般社団法人日本大腸肛門病学会)
肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)・直腸脱診療ガイドライン2020年版(一般社団法人日本大腸肛門病学会)
- 3人に1人が「痔」と言われる現代。正しい予防法・生活習慣を医師が解説
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