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洪水情報が変わる!新設される河川氾濫警報について解説

洪水情報が変わる!新設される河川氾濫警報について解説

写真提供:PIXTA

台風や集中豪雨の際、私たちの命や財産を脅かす危険の一つが河川の氾濫(洪水)です。一度河川の氾濫が発生すれば、住宅地は濁流に飲み込まれ、甚大な被害をもたらします。さらに、河川の水位は、雨が止んだ後でも時間差で上昇し続けることがあり、その予測や避難の判断には一層の注意が必要です。

こうした洪水被害から身を守るための防災気象情報が、2026年5月から新しく生まれ変わりました。今回は、制度変更の背景とともに、具体的な変更点や情報を防災に活かすためのポイントを解説します。

洪水に関する防災気象情報が変更になった背景

洪水に関する防災気象情報が変更になった背景は、情報の名称や種類を「5段階の警戒レベル」へ一本化し、避難のタイミングを直感的に分かりやすくするためです。

制度変更前、河川に関する情報は以下のように分類されていました。

出典:気象庁「現在の河川氾濫等に関する情報

洪水や浸水に関して、これまで以下の4つの情報がありました。

①洪水予報河川:全国の約400河川(主に流域面積が大きく洪水により大きな損害を生じる恐れがある河川)を対象に、国の機関または都道府県が実際の水位と水位予測から氾濫注意情報~氾濫発生情報などを発表

②水位周知河川:全国の約1,800河川(主に流域面積が小さく洪水予報を行う時間的余裕がない河川)を対象に、国の機関または都道府県が実際の水位から氾濫注意情報~氾濫発生情報などを発表。

③洪水注意報、洪水警報:気象台が市町村ごとに表面雨量指数や流域雨量指数などの予測値に基づき発表。洪水予報河川や水位周知河川以外の比較的小さな河川の増水や氾濫のリスクを含む。

④大雨注意報、大雨警報:全国の市町村を対象に、気象台が表面雨量指数や土壌雨量指数基準等に基づき発表。主に短時間の強雨によって排水が追いつかなくなる「内水氾濫」のリスクを知らせる役割を担う。

これまでは「河川ごとの情報」と「市町村ごとの情報」が別々に運用されていました。さらに、市町村向けの洪水警報には避難指示の目安となるレベル4・レベル5相当の区分がなく、より切迫した状況を知るには、河川ごとの氾濫情報を別に確認する必要がありました。

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警戒レベルと河川氾濫に関する情報の変更点

2026年5月29日から、河川氾濫に関する防災情報は、一般向けの警報として以下の「氾濫注意報・警報」が新たに運用されています。

・警戒レベル5:レベル5氾濫特別警報

・警戒レベル4:レベル4氾濫危険警報

・警戒レベル3:レベル3氾濫警報

・警戒レベル2:レベル2氾濫注意報

・警戒レベル1:早期注意情報

出典:気象庁「現在の河川氾濫等に関する情報

なお、氾濫注意報・警報は、洪水予報河川を対象としています。一方で、洪水注意報や洪水警報は廃止となりました。洪水予報河川以外の洪水に対する注意報や警報は、大雨注意報・警報に統合されることになります。例えば、レベル3大雨警報が発表された場合、従来の内水氾濫のリスクだけでなく、周囲の中小河川が増水・氾濫するおそれがあることも意味します。

ちなみに、水位周知河川の増水や氾濫に対する注意報・警報は、新設される氾濫注意報や氾濫警報には含まれず、水位情報や大雨注意報・警報で扱われることとなっています。例えば、大雨警報が発表された場合は、水位周知河川の増水や氾濫に対する警告も含まれます。ただし、将来的には洪水予報河川への移行が促進される方針となっています。

新たな防災気象情報で注意するポイント

新制度では、情報の名称に加えて「何のリスクを指しているか」に注目しましょう。例えば、「氾濫警報」は主に大きな河川の増水や氾濫を対象としていますが、中小河川の増水や氾濫、街中の浸水(内水氾濫)は「大雨警報」の対象となります。

つまり、氾濫注意報や氾濫警報が発表されていなくても、大雨注意報や大雨警報が発表されていれば、身近な中小河川が氾濫する危険性は十分にあります。大雨警報でも川が氾濫するという認識を持ち、警戒レベルに合わせた早めの避難を心がけることが大切です。

河川氾濫のリスク

河川氾濫のリスクとして、主に以下の形態が挙げられます。

  1. 激しい濁流による家屋倒壊(流下型氾濫):谷底平野などの勾配が大きな地域で、氾濫水が河川に沿って猛烈な速さで流れ下る形態です。浸水の速さに避難が追いつかない逃げ遅れが発生しやすく、水圧による家屋の倒壊や流失といった命に関わる被害を招きやすい特徴があります。
  2. 広範囲への浸水拡大(拡散型氾濫):堤防が決壊した地点から、低い平地へ向かって扇状に水が広がる形態です。住宅地が広がる平野部で見られ、決壊地点から離れた場所まで一気に浸水域が拡大します。どこまで浸水が広がるか予測しにくく、広域での避難が必要になります。
  3. 長期間にわたる広域浸水(貯留型氾濫):平野部などでは、一度溢れた水が地形の影響で長期間引かず、数週間にわたって床上浸水が続くケースがあります。ライフラインの途絶や家財の損失など、生活に大きなダメージを与えやすいのが特徴です。
  4. 排水不能による浸水の拡大(内水氾濫・逆流):河川の本流の水位が上昇することで、街中の雨水を川へ排水できなくなったり、下水道から水が逆流したりします。川の近くでなくても浸水が発生し、地下空間の冠水や、水面下の側溝が見えなくなることによる転落事故の危険が高まります。

このように、河川氾濫は地形や状況によってもリスクが大きく変わります。

過去の事例

大規模な河川氾濫は定期的に発生しています。以下はいずれも国が指定する「洪水予報河川」で発生した河川氾濫被害の事例です。

災害名(発生年) 被害を受けた主な河川 被害の特徴
令和元年東日本台風
(2019年)
千曲川(長野県)
阿武隈川(福島県)
久慈川(茨城県)
都幾川(埼玉県)など
各地で堤防が決壊。濁流が住宅街を襲ったほか、長野県では新幹線車両センターが水没するなど、広範囲が甚大な被害を受けた。
平成30年7月豪雨
(2018年)
小田川(岡山県) 本流の水位上昇により支流の排水が滞り、倉敷市真備町で堤防が決壊。大規模な浸水とともに、堤防の損傷も多数発生した。
平成27年9月関東・東北豪雨
(2015年)
鬼怒川(茨城県) 常総市三坂町地先で堤防が決壊。市の面積の約1/3(約40㎢)が浸水し、市役所も孤立。多数の家屋が流出した。

 表:筆者作成 ※2026年5月現在

大河川は、一度氾濫すればその被害は市町村の枠を超えることも珍しくなく、広域かつ壊滅的なものとなりやすいのが特徴です。場合によっては浸水が数週間に及び、家屋やインフラ、そして地域経済に与えるダメージも計り知れません。

河川氾濫情報を防災に活かすポイント

新制度では、洪水情報について大河川向けの「氾濫注意報・警報」と、中小河川向けを担う「大雨注意報・警報」の二つに着目し、違いを理解することが大切です。

いずれも警戒レベルと連動しており、「危険」の名が付く情報は、避難指示に相当する「レベル4」となります。これらが発表された際は、氾濫の発生前に速やかに安全な場所へ移動することが大切です。

防災情報を正しく活用することは、家族の命や財産を守ることに直結します。いざという時に迷わず動けるように、日頃から気象情報やハザードマップをこまめにチェックしましょう。

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<執筆者プロフィル>
田頭 孝志
気象防災アドバイザー(国土交通大臣委嘱)
田頭気象予報士事務所代表。愛媛の気象予報士・防災士。防災や気象関連の記事執筆をはじめ、テレビ番組の監修、防災教材開発などを行う。BS釣り番組でお天気コーナーを担当したほか、自治体、教育機関、企業向けに講演を多数、防災マニュアルの作成に参画。

配信元: 防災ニッポン