なぜクマが大量に出没? クマの被害を減らす方法とは

なぜクマが大量に出没? クマの被害を減らす方法とは

写真:PIXTA

クマが人の生活圏に出没することが増えています。この記事では、クマと遭遇するリスクを減らす方法、遭遇したときの対策などを解説します。

クマと遭遇するリスクが高まっている

クマは、ふだんは山の中でドングリや山菜、昆虫などを食べて暮らしている動物です。川を遡上するサケや、弱って死んだシカの肉を食べることもありますが、基本的には警戒心が強く、自分から人に近づくことはありません。

しかし、2000年代になってからクマが市街地に出没することが増え、ここ数年は「大量出没」と言われる事態となっています。これには、いくつかの理由があります。

個体数の増加

クマは戦後の高度経済成長期に、すみかである自然が破壊されたことなどにより一時個体数を減らしましたが、その後、絶滅しないように狩猟や駆除が制限されたことで、また数が増え始めました。

本州に生息しているツキノワグマは多くの県で増加傾向、北海道のヒグマはこの30年で2倍以上に増えていると推測されています。

生息域の拡大

本州では、ツキノワグマの生息域が拡大しているという報告があります。人口が都市に集中し、山間の村などが過疎化したことなどにより、かつてはクマが近寄らなかった低地にも近づくことが増えています。

エサ不足

クマの好きなドングリ(ブナの実)が凶作の年には、エサを求めて山を下りてくることが増えます。クマの生息数が多い東北地方などでは前年の結実度や初夏の開花度、夏の気温などからブナの豊作・凶作を予測し、クマの出没注意報・警報を発令しています。

2025年度の秋は各地で「大凶作」が予測されており、冬眠前にクマがエサを求めて徘徊する危険が高まっています。

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家の外に“ごちそう”を置かない

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クマは、人を襲おうとして山から下りてくるわけではありません。しかし、人のいるところには食物を発見すると、繰り返し出没するようになります。そして、人にばったり遭遇したときに、身を守ろうとして襲いかかることがあります。

クマとの遭遇を避けるには、エサになるものを家の外に置かないことが大切です。

ゴミは収集直前に出す+耐動物容器で固定

「クマがゴミ捨て場を漁っていた」という目撃情報も寄せられています。クマはとても鼻の利く動物なので、残飯などの匂いに引き寄せられてくるのです。

クマがよく活動するのは、夕暮れ時や早朝の薄暗い時間帯です。近くでクマの目撃情報があるなら、前日の夜や早朝にゴミを捨てるのはやめましょう。

ゴミ捨て場に頑丈なコンテナや物置型のゴミ箱を設置して、扉に鍵をかけるなどの対策も有効です。クマの出没に悩まされていた長野県軽井沢町では、ゴミの集積方法を変更したことで被害を減らすことができたという報告があります。

果樹・畑の管理

柿などの果物もクマの好物です。クマは木登りが得意なので、収穫しやすい高さまで枝を剪定するなどして、高い所にも実を残さないようにしましょう。住人の高齢化などにより管理しきれなくなった果樹は、伐採することも検討してください。熟して木から落ちた実もクマを引き寄せるので、拾って捨てることが大切です。

トウモロコシ、ニンジン、サツマイモなど、家庭菜園の野菜がクマに狙われることもあります。傷んで食べられない野菜などでも、畑に残しておかないようにしましょう。

ペットとペットのエサは屋内へ

クマが飼っている鳥を襲い、さらに鳥の餌が入ったバケツまで持ち去ったというニュースがありました。庭につないでいた犬が襲われた事例もあります。ペットは屋内で飼うか、鍵のかかる丈夫な飼育小屋に入れて守りましょう。

また、ペットフードは出しっぱなしにせず、匂いが漏れないように保管してください。鳥の餌台にクマが寄ってきたという事例もあり、少量でもクマを引き寄せる原因になります。

BBQの残り物は即片付けを

キャンプ場やバーベキュー場で食材を出しっぱなしにしておくと、クマに荒らされる危険があります。庭でバーベキューをするときも、食材は直前まで屋内または密閉できる容器(フードロッカー)で保管し、調理後は食べ残しやゴミを放置することなく、すぐに片付けましょう。

その他、ペンキなどの塗料、ガソリンなどの燃料の匂いもクマを引き寄せるので、鍵のかかる物置などで保管するようにしてください。

また、ハチミツもクマの好物です。家の軒下などにできた蜂の巣は、早めに駆除しましょう。

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敷地に入らせない仕組み

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畑や果樹園には、電気柵を設置する対策が有効です。クマは木登りが得意なので、一般的な柵だと乗り越える危険があります。

また、赤外線センサーやAIカメラでクマの接近を察知して、動物が嫌がる低周波を出し、敷地への侵入を防ぐ装置も実用化されています。

しかし、一般的な住宅はクマを引き寄せるものを家の近くに置かないということが、一番にとるべき対策と言えるでしょう。

もうひとつ有効なのは、周辺の草刈りをすることです。クマは、草木のある河川敷などを通って山から人の生活圏へと侵入します。そして警戒心の強い動物のため、見通しの良い場所には姿を現したがりません。

家の近くに草木の生い茂った雑木林などがある場合でも、下草を刈って見通しを良くすることで、クマが近づきにくくなります。

配信元: 防災ニッポン