印象派の父、カミーユ・ピサロ。印象派を旗揚げするまでの人生とは【アート初心者】

パリ時代 ~屋外で絵を描くことにハマった~

ピサロはパリで画家アントン・メルビューに絵画を教わりつつ、同時並行して美術学校でエコール・デ・ボザールやアカデミー・シュイスなどの巨匠から絵を教わりました。

絵のスキルはどんどん上達し、1859年には『モンモランシーの風景』がパリ・サロンの審査に合格して展示されました。

学校で学ぶ技術は「息苦しい」。屋外で絵を描くことへ

学校で絵画の技術を教わることを、ピサロはどう思っていたか。

美術史家のジョンリウォルドに話した記録では、「学校で学ぶ技術は息苦しい」と思っていたようです。自然豊かなセント・トーマス島で育ったピサロにとって、上京生活そのものが窮屈に感じられたのかもしれませんね。

しばらくして、ピサロは屋外で絵を描くことにはまりました。ピサロはこれを「プレーン・エアー絵画」と呼んでいました。同時期に出会った画家であるカミーユ・コローも同じ傾向があり、二人は意気投合しました。

田園風景を描くことに

パリで絵画を学んだピサロですが、1年ほどパリに滞在したあと田園の風景を描くようになります。

ピサロはフランスの田園地帯に対して「絵画的な美しさ」を感じ、それを絵で表現することに楽しみを覚えたためです。

屋外制作について、ピサロは後進の画家たちにこう語りました。

空、水、枝、大地を同時に描き、すべてのものを対等に扱い、自分が納得するまで何度も修正すること。最初に感じた「印象」を失わないことが重要なため、おおらかにまた躊躇なく描くこと。

コローとは意見が不一致

屋外で絵を描くことについてカミーユ・コローと意気投合したピサロですが、仕上げに関しては違う考えを持っていました。

コローは自分の先入観を修正するため、最後はアトリエで修正しました。一方、ピサロは「ありのまま、見たまま」を重視し、屋外で完成させるスタイルを好みました。最終的にコローとは、意見の不一致が原因で別行動をとるようになります。

この時代の代表作

モンモランシーの風景

モンモランシーの風景モンモランシーの風景, 1859年制作 , 所蔵: オルセー美術館 (フランス), Public domain, via Wikimedia Commons.

29歳のピサロがサロン初入選を果たした風景画。モンモランシーの静かな田園を題材に、コローに学んだ古典的な技法で制作された。

柔らかな筆致と落ち着いた色彩で自然の美しさを表現し、当時のアカデミックな様式に沿いながらも、戸外制作への関心が芽生え始めた時期の作品。

モネやセザンヌなど印象派グループと出会い、開眼

1959年、ピサロは美術学校アカデミー・シュイスに通っていました。29歳のときです。
ここで自分と同じように写実的な絵を描く画家と知りあいました。その中には、モネやセザンヌなどの印象派の重要なメンバーも含まれています。

低評価だったが、流れが変わった

当時、パリのサロンにおいては写実的な絵は低く評価されていました。サロンでの展覧会に応募しても、写実的な絵を描く画家は審査基準に合格しなかったのです。

1863年(ピサロが33歳)、ピサロや仲間の絵はサロンの審査に落選。

しかし、1868年に美術評論家のエミール・ゾラが「カミーユ・ピサロは今日、3〜4人ぐらいしかいない真の画家の1人です。私はめったにこのような確かな技術に遭遇することはない」と述べ、評価が高まります。

エミール・ゾラがピサロを高く評価したとき、ピサロは38歳でした。若くして注目される画家と比べたら、成功が遅かったかもしれません。

ピサロが41歳の1871年、母のメイドでブドウ栽培農家の娘だったジュリー・ヴァレイと結婚。2人はパリ郊外や農村地域に住み、村人の生活風景、川、森林などから刺激を受けました。

29歳のときは低評価、38歳からは高評価と、ピサロの人生は約10年間で大きく変わりました。

この時代の代表作

マルヌ川のほとり、冬

マルヌ川のほとり、冬,マルヌ川のほとり、冬, 1866年制作, 所蔵: オルセー美術館 (フランス), Public domain, via Wikiart.

1866年のサロン入選作。マルヌ川沿いの冬景色を主題とし、落ち着いた色調で静謐な季節感を表現しています。

写実的な描写でありながら、冬の冷たい空気や光の質感を丁寧に捉えていて、コローから学んだ伝統的技法を基盤としつつ、自然への観察眼が深まった時期の作品です。

ブージヴァルのセーヌ河

1871年制作
所蔵: アーティゾン美術館 (東京都)

配信元: イロハニアート

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