メディカルドック監修医が性行為後の腹痛で考えられる病気を解説します。
※この記事はメディカルドックにて『「性行為後に腹痛」を感じる原因はご存知ですか?対処法も医師が徹底解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
阿部 一也(医師)
医師、日本産科婦人科学会専門医。東京慈恵会医科大学卒業。都内総合病院産婦人科医長として妊婦健診はもちろん、分娩の対応や新生児の対応、切迫流早産の管理などにも従事。婦人科では子宮筋腫、卵巣嚢腫、内膜症、骨盤内感染症などの良性疾患から、子宮癌や卵巣癌の手術や化学療法(抗癌剤治療)も行っている。PMS(月経前症候群)や更年期障害などのホルモン系の診療なども幅広く診療している。
「性行為後の腹痛」が特徴的な病気・疾患
ここではメディカルドック監修医が、「性行為後の腹痛」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
性感染症
性感染症(STI)は、性行為を介して伝染する感染症の総称です。代表的な性感染症には、クラミジア、淋病、梅毒、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、性器ヘルペス、ヒトパピローマウイルス(HPV)、B型肝炎などがあります。
クラミジア、淋病の場合には、抗生物質(アジスロマイシン、ドキシサイクリン、セフトリアキソンなど)による治療を行います。性行為を控え、治療が完了するまでパートナーも検査と治療を受けることが大切です。
梅毒は、ペニシリンによる治療が有効です。こちらも早期発見と治療が重要です。パートナーにも検査を受けてもらうことも必要です。
性感染症は、異常な腟分泌物や尿道分泌物、排尿時の痛みや焼け付くような感覚、性器周辺のかゆみ、痛みなどがあります。また、皮膚の発疹、潰瘍、下腹部の痛み、性行為中または後の出血、発熱や全身倦怠感も症状となります。
女性の場合、婦人科で検査と治療を受けましょう。また、男性の場合、泌尿器科を受診しましょう。
性器ヘルペスなどの皮膚症状がある場合は皮膚科を受診します。
性感染症は早期発見と適切な治療が重要です。症状を感じたら自己判断せず、速やかに医療機関を受診して適切な診断と治療を受けるようにしましょう。また、予防として避妊具を装着するなどの安全な性行為を実践し、定期的な検診を受けることが大切です。
細菌性膀胱炎
細菌性膀胱炎は、膀胱に細菌が感染して炎症を引き起こす病気です。女性に多く見られますが、男性も発症することがあります。発症の原因として最も一般的なのは大腸菌(Escherichia coli)ですが、プロテウス、クレブシエラ、エンテロコッカスなど他の細菌も原因となることがあります。性行為によって尿道に細菌が侵入しやすくなることや、不十分な排尿によって尿道に残った細菌が膀胱に感染を引き起こすことが、主な原因とされています。また、尿路結石や尿道の狭窄などの尿路の異常がある場合、感染リスクが高まります。
対処法としては、まず水分をたくさん摂取することが重要です。これにより、膀胱内の細菌を洗い流すことができます。また、尿意を感じたらすぐに排尿する習慣を持つことや、性行為後には排尿することも予防に役立ちます。
治療法としては、抗生物質が使用されます。一般的にトリメトプリム・スルファメトキサゾール、シプロフロキサシン、アモキシシリンなどが処方されます。痛みや不快感を和らげるためには、イブプロフェンやパラセタモールなどの鎮痛薬が使用されることがあります。
細菌性膀胱炎の症状として、頻尿や排尿時の痛み、焼け付くような感覚、血尿、下腹部の痛みなどが挙げられます。高熱が出ることは少ないですが、発熱がある場合は腎盂腎炎などの合併症の可能性があるため注意が必要です。これらの症状が見られたら、速やかに医療機関を受診することが重要です。泌尿器科は細菌性膀胱炎の診断と治療を専門としていますが、軽度の症状であれば内科でも診察と治療が受けられます。
卵巣出血
卵巣出血は、卵巣内で血液が漏れ出し、出血が発生する状態のことです。これは主に卵胞や黄体の破裂によって引き起こされます。月経周期で卵巣内の卵胞が成熟し、排卵時に破裂することがありますが、この過程で血管が破れ、卵巣内で出血が起こることがあります。また、性行為がきっかけとなることが多く、右側卵巣に多いとされます。骨盤内の右側はS状結腸が無く、クッションとなるものが無いため、直接的に骨盤壁に卵巣が衝突するため起こりやすいとされます。卵巣嚢胞が破裂した場合にも出血が生じることがあります。
対処法としては、まず安静を保ち、痛みを和らげるために鎮痛薬を使用することが一般的です。軽度の出血であれば、体が自然に回復することが多いですが、重度の出血や痛みが強い場合には、早めに医療機関を受診しましょう。出血が止まらない場合や、腹腔内に大量の血液がたまる場合には、輸血や手術が必要となることがあります。手術では、出血している部分を縫合したり、卵巣の一部を切除したりすることがあります。
激しい腹痛、下腹部の圧迫感、めまい、失神、発熱、吐き気などがある場合には、速やかに医療機関を受診する必要があります。これらの症状は、重篤な内出血や他の緊急の医療状態を示している可能性があるため、放置せずに適切な診断と治療を受けることが重要です。
卵巣出血の疑いがある場合、婦人科を受診しましょう。婦人科では、超音波検査や血液検査を通じて正確な診断が行われます。診断が確定したら、必要に応じて治療が行われます。
過去に卵巣出血を経験したことがある場合や、卵巣嚢胞の既往がある場合は、定期的に婦人科での検診を受けることが望ましいです。
「性行為後の腹痛」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「性行為後の腹痛」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
性行為後の腹痛はどれくらい続くのでしょうか?
阿部 一也医師
性行為後の腹痛の持続時間は、原因や個人の体調によって異なります。軽度の筋肉痛や一時的な不快感であれば、数時間から1日程度で自然に治まることが多いです。しかし、感染症や卵巣嚢胞の破裂など、より深刻な原因がある場合は、痛みが数日間続くことがあります。このような場合は、早めに医療機関を受診して、適切な診断と治療を受けることが重要です。痛みが長引いたり、激しい痛みがあったりする場合は、必ず医師に相談してください。

