嘔吐や下痢が続くとき、「本当にウイルス性胃腸炎なのか」と不安に感じる方もいるのではないでしょうか。細菌性食中毒や過敏性腸症候群(IBS)など、似た症状を持つ疾患との違いを理解することが、適切な受診と対処につながります。症状の見分け方のポイントをわかりやすく紹介します。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
ウイルス性胃腸炎の症状を見分けるポイントと他の疾患との違い
ウイルス性胃腸炎に似た症状は、ほかの疾患でも現れることがあります。このセクションでは、症状を正しく見分けるためのポイントと、注意が必要な疾患との違いについて説明します。
細菌性胃腸炎(細菌性食中毒) との症状の違い
ウイルスが原因の胃腸炎に対し、サルモネラやカンピロバクターなどの「細菌」が原因で起こる腸炎(細菌性食中毒など)があります。 どちらも嘔吐・下痢・腹痛といった症状が現れますが、いくつかの点で違いがあります。
細菌性食中毒は、細菌(サルモネラ、カンピロバクターなど)や毒素を含む食品を摂取することで発症します。発症までの時間が短く(食後数時間以内に症状が出ることが多い)、食事の内容と症状発現の時間的な一致が確認できる点が特徴です。また、同じ食事をした複数の方が同時に症状を訴える場合は食中毒が疑われます。
細菌性食中毒では、便に血が混じる「血便」が見られることがあります。これはウイルス性胃腸炎では通常みられない症状であり、血便が確認された場合には細菌感染の可能性を念頭に置いて医療機関を受診することが求められます。
一方、ウイルス性胃腸炎は特定の食事との明確な関連がなく、感染した方との接触後に発症することが多い点が目安になります。ただし、ノロウイルスはカキなどの二枚貝を介して感染することもあるため、食事が感染源になるケースもあります。症状だけで自己判断するのは難しいため、気になる点があれば医師に相談することが大切です。
過敏性腸症候群やストレスによる胃腸炎との見分け方
ウイルス性胃腸炎に似た症状が繰り返される場合、過敏性腸症候群(IBS)やストレス性胃腸炎が関わっている可能性もあります。
過敏性腸症候群は、腸に明らかな炎症や病変がないにもかかわらず、腹痛・下痢・便秘などが繰り返される慢性的な疾患です。精神的なストレスや食生活の乱れが引き金になることが多く、仕事や人間関係などのプレッシャーを抱える大人に見られやすいとされています。ウイルス性胃腸炎との大きな違いは、発熱や嘔吐を伴わないことが多く、症状が長期にわたって繰り返される点です。
ストレス性胃腸炎も同様に、強いストレスが胃腸の機能に影響を与えることで起こります。一時的なストレスの後に腹痛や下痢が現れる場合は、このパターンに当てはまることがあります。
ウイルス性胃腸炎が通常1〜5日程度で症状が落ち着くのに対し、こうした機能的な胃腸の問題は数週間以上続くことがあります。症状が長引いたり、繰り返したりする場合は、消化器内科や内科での受診と検査を通じて、適切な診断を受けることが推奨されます。
まとめ
ウイルス性胃腸炎は大人にとっても身近な感染症であり、症状の適切な理解と早めの対処が回復の鍵を握ります。嘔吐・下痢・発熱などの症状が現れたら、まずは安静を保ちながら水分・電解質の補給を心がけてください。市販薬を使用する際は用途や使い方をよく確認し、症状が重い場合や長引く場合には、内科や消化器内科への受診を検討することをおすすめします。
参考文献
厚生労働省「感染性胃腸炎(特にノロウイルス)」
厚生労働省「感染性胃腸炎(特にロタウイルス)」
政府広報オンライン「ノロウイルスに要注意!感染経路と予防方法は?」
東京都感染症情報センター「感染性胃腸炎(ウイルス性胃腸炎を中心に)infectious gastroenteritis」
厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」
東京都保健医療局「感染性胃腸炎について」
- 『ストレス』と「胃腸炎」の結びつきをご存じですか? どんな人が注意すべき?【医師解説】
──────────── - 「ウイルス性胃腸炎がうつった」ときの対処法はご存知ですか?【医師監修】
──────────── - 「胃腸炎とノロウイルス」の症状の違いはご存知ですか?見分け方も解説!【医師監修】
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