疲れやすい、動悸がする、汗をかきやすい……。こうした体調の変化は、加齢や生活習慣のせいと見過ごされがちですが、じつは甲状腺の病気が関わっていることもあるのだそうです。特に「甲状腺疾患」は進行が緩やかで気づきにくいため、早期発見が重要になります。そこで今回は、初期症状や家族歴との関係、予防や検査のポイントについて、「ひるま甲状腺クリニック蒲田」の蛭間先生に解説していただきました。

監修医師:
蛭間 重典(ひるま甲状腺クリニック蒲田)
東邦大学医学部を卒業後、国立国際医療研究センター、東邦大学医療センター、伊藤病院(甲状腺専門)で経験を積む。2025年、東京都大田区に「ひるま甲状腺クリニック蒲田」を開院。医学博士。日本甲状腺学会専門医。日本甲状腺学会ロシュ若手奨励賞(Young Investigator Award: YIA)、甲状腺病態生理研究会研究奨励賞をはじめとした多数の受賞歴。日本甲状腺学会 次世代研究者の会 (NexT-JTA)所属。
甲状腺疾患とは
編集部
そもそも甲状腺は、体の中でどのような役割を果たしているのですか?
蛭間先生
甲状腺は首の前にある小さな臓器で、甲状腺ホルモンを分泌しています。このホルモンは体の新陳代謝をコントロールし、体温や心拍、血圧、神経の働き、さらには発育や成長にも関与します。小さくても重要な役割を担っている臓器が甲状腺です。
編集部
甲状腺の病気には、どのような種類があるのでしょうか?
蛭間先生
代表的なものに、甲状腺ホルモンの分泌が不足する「橋本病」や甲状腺ホルモンの分泌が過剰になる「バセドウ病」、そして「腫瘍(良性・悪性)」などがあります。いずれも症状が日常の不調と区別しにくく、見過ごされやすいのが特徴です。
編集部
初期に出やすい症状には、どのようなものがありますか?
蛭間先生
橋本病では「疲れやすい」「体重が増える」「寒がり」「むくみ」、バセドウ病では「動悸」「体重減少」「汗をかく」「イライラする」などがみられます。初期は軽い不調として表れるため、気づかれにくいのです。
甲状腺疾患になりやすい人の特徴・発症する原因
編集部
甲状腺疾患になりやすい人の特徴はありますか?
蛭間先生
甲状腺疾患は誰にでも起こり得ますが、特に女性に多く、男性の数倍とされています。妊娠や出産、更年期といった体の変化が大きい時期に出現しやすいことが知られています。また、家族に甲状腺疾患を持つ人がいる場合や自己免疫疾患を持つ人、大きなストレスを抱えている人も注意が必要です。
編集部
ストレスとの関連もあるのですか?
蛭間先生
大小全てのストレスが関係するわけではありません。日常でのストレスというよりは、転居や転職など、生活環境が大きく変わった際に、甲状腺疾患、特に自己免疫疾患であるバセドウ病のリスクを高めると言われています。
編集部
家族も関係するのですか?
蛭間先生
特に自己免疫性の甲状腺疾患は、家族内に多くみられます。遺伝的な体質や免疫の仕組みが関わるため、ご両親やご兄弟に甲状腺の病気がある人は、ご自身も発症リスクが高いと考えてください。
編集部
遺伝以外の環境要因についても教えてください。
蛭間先生
生活習慣に感染症、ヨウ素の過剰摂取なども発症に関与します。遺伝的素因があっても必ず発症するわけではなく、環境要因が重なることで発症しやすくなると考えられています。
編集部
ヨウ素の摂り過ぎが病気に影響するのですか?
蛭間先生
はい。ヨウ素は、海藻類や魚介類に多く含まれるミネラルの一種です。甲状腺はヨウ素を材料にしてホルモンを作る臓器なので、ヨウ素の摂取量が多すぎても少なすぎても、病気の発症や悪化に関わることがあります。日本のように海藻をよく食べる地域では、過剰摂取が橋本病や甲状腺腫の発症に関与するとされる一方、ヨウ素不足は世界的に甲状腺腫や機能低下症の原因になると言われています。ただし、あくまでも「リスク因子の1つ」なので、過度に心配せず、摂取する・しないが極端にならないよう、バランスの良い食事を摂ることが大切です。

