市販薬は手軽に活用できる一方で、使い方を誤ると回復が遅れる可能性もあります。下痢止め薬や解熱鎮痛薬の注意点を押さえたうえで、感染を家庭内や職場に広げないための予防策も大切です。手洗いの方法や嘔吐物の処理手順など、日常で実践できる感染防止の行動を具体的に紹介します。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
ウイルス性胃腸炎を薬で対処する際の注意点と予防策
薬を適切に使うことは症状の改善につながりますが、誤った使用は回復を遅らせたり、新たな問題を生んだりする可能性があります。このセクションでは、薬の使用時の注意点と、感染を広げないための予防策について詳しく説明します。
市販薬を使用する際に気をつけたいこと
ウイルス性胃腸炎の症状が軽い場合、薬局やドラッグストアで購入できる市販薬を活用する方も多くいます。ただし、市販薬の使用にあたっては、いくつかの点に注意が必要です。
下痢止め薬(止瀉薬)は、使用のタイミングや対象によっては注意が必要です。ウイルス性胃腸炎における下痢は、身体がウイルスや毒素を排出しようとする自然な反応でもあります。そのため、むやみに下痢を止めてしまうと、ウイルスが体内に長く留まり、回復が遅れる可能性が指摘されています。特に腸管粘膜からの出血が疑われる場合には、医師の指示なく止瀉薬を使用することは避けるべきです。
解熱鎮痛薬については、アスピリンを含む製品は18歳未満の方には使用しないことが推奨されています(ライ症候群という重篤な合併症のリスクがあるため)。大人の場合でも、腎機能や胃への負担を考慮し、空腹時の服用は避けることが一般的です。
また、抗菌薬(抗生物質)は細菌には効果がありますが、ウイルスには効きません。ウイルス性胃腸炎に抗菌薬を使用しても改善は見込めないため、自己判断による服用は避けるようにしてください。
感染拡大を防ぐための予防策と生活上の注意
ウイルス性胃腸炎は感染力が強く、適切な対策を講じなければ家庭内や職場での感染拡大につながります。薬での対処と並行して、感染防止の行動を取ることが求められます。
手洗いは感染予防の基本中の基本です。石けんを使った丁寧な手洗いを、トイレの後・食事の前・嘔吐物や便の処理後に必ず行うようにしてください。ノロウイルスはアルコール消毒だけでは十分に除去できないため、流水でのしっかりとした手洗いが不可欠です。
嘔吐物や下痢の処理には十分な注意が必要です。処理の際はマスクとゴム手袋を着用し、汚染された部分は次亜塩素酸ナトリウム(家庭用塩素系漂白剤)を薄めた液で拭き取ることが推奨されています。処理後のゴム手袋や紙などはビニール袋に密閉して廃棄し、使った道具は消毒してください。
食品の管理にも気を配ることが大切です。カキなどの二枚貝は中心部までしっかり加熱(85〜90℃で90秒以上)してから食べることで、ノロウイルスのリスクを減らすことができます。
感染が確認された方は、症状が治まった後も数日間は食品を直接取り扱う作業(調理や配膳など)を避けることが望まれます。
まとめ
ウイルス性胃腸炎は大人にとっても身近な感染症であり、症状の適切な理解と早めの対処が回復の鍵を握ります。嘔吐・下痢・発熱などの症状が現れたら、まずは安静を保ちながら水分・電解質の補給を心がけてください。市販薬を使用する際は用途や使い方をよく確認し、症状が重い場合や長引く場合には、内科や消化器内科への受診を検討することをおすすめします。
参考文献
厚生労働省「感染性胃腸炎(特にノロウイルス)」
厚生労働省「感染性胃腸炎(特にロタウイルス)」
政府広報オンライン「ノロウイルスに要注意!感染経路と予防方法は?」
東京都感染症情報センター「感染性胃腸炎(ウイルス性胃腸炎を中心に)infectious gastroenteritis」
厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」
東京都保健医療局「感染性胃腸炎について」
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