「頭が痛いのは動脈瘤のせいかもしれない」と不安を感じる方は少なくありません。しかし、未破裂脳動脈瘤のほとんどは慢性的な頭痛を直接引き起こすものではありません。一方で、注意が必要な頭痛のパターンも存在します。一次性頭痛と二次性頭痛の違いや、脳神経外科・神経内科への受診を検討するタイミングについて解説します。

監修医師:
伊藤 たえ(医師)
浜松医科大学医学部卒業。浜松医科大学医学部附属病院初期研修。東京都の総合病院脳神経外科、菅原脳神経外科クリニックなどを経て赤坂パークビル脳神経外科菅原クリニック東京脳ドックの院長に就任。日本脳神経外科学会専門医、日本脳卒中学会専門医、日本脳ドック学会認定医。
未破裂脳動脈瘤と頭痛の関係
このセクションでは、未破裂脳動脈瘤と頭痛の関係について深掘りします。頭痛がある方のすべてに動脈瘤があるわけではありませんが、危険な頭痛を見分ける知識は非常に重要です。
頭痛の種類と動脈瘤との関係
頭痛には大きく分けて、原因となる別の疾患が存在しない「一次性頭痛」と、何らかの疾患が背景にある「二次性頭痛」があります。日常的によく経験される片頭痛(へんずつう)や緊張性頭痛は一次性頭痛に分類されます。一方、脳動脈瘤の圧迫や出血に伴う頭痛は二次性頭痛に当たります。
重要なのは、ほとんどの未破裂脳動脈瘤は、それ自体が慢性的な頭痛を引き起こすことはないという点です。動脈瘤があるからといって、必ずしも頭痛持ちになるわけではありません。したがって、慢性頭痛がある方が「自分は動脈瘤があるのでは」と過度に不安になる必要はありません。しかし、これまでと違うパターンの頭痛が現れた場合は、その背景を調べる価値があります。
ただし、動脈瘤が周囲の神経や組織を圧迫しているケース、または警告出血が起きているケースでは、頭痛が現れることがあります。この場合の頭痛は、通常の頭痛とは異なる質感や強度を持つことが多く、注意が必要です。
受診すべき頭痛の特徴
頭痛を抱えている方が、脳神経外科や神経内科を受診するタイミングの目安として、次のような特徴が挙げられます。
まず、急に起きた強い頭痛です。普段から頭痛がある方でも、「今まで経験したことがない痛み」「人生最悪の頭痛」と感じるものは要注意です。痛みの始まり方が突然であればあるほど、緊急性が高い可能性があります。
次に、頭痛に加えて他の神経症状が重なる場合です。手足のしびれや脱力感、ろれつが回らない、言葉が出てこない、視野が欠ける(視野の一部が見えなくなる)、物が二重に見えるといった症状が同時に現れているときは、速やかな受診が必要です。
さらに、頭痛の頻度や強さが以前と比べて明らかに変わってきた場合も、受診の目安になります。慢性的な頭痛があっても、その質や頻度が変化してきた場合は、新たな原因が関係している可能性があります。頭痛外来や脳神経外科では、詳細な問診のうえ、MRIやMRAなどの画像検査で脳の状態を確認することが勧められます。さらに精密な情報が必要な場合は、造影剤を用いたCTA(CT血管撮影)や脳血管撮影(DSA)が行われることもあります。頭痛のすべてが動脈瘤に由来するわけではありませんが、異変を感じたときに専門医に相談する習慣が、早期発見・早期対処につながります。
まとめ
未破裂脳動脈瘤は、その存在を知ることで大きな不安を感じるかもしれませんが、正しい知識を持つことが冷静な第一歩です。多くは生涯破裂しませんが、破裂の前兆となりうる「いつもと違う激しい頭痛」や目の症状には注意が必要です。診断後は、動脈瘤の特性やご自身の健康状態に応じて、経過観察か手術かを担当医と慎重に検討します。どちらの選択肢でも、高血圧の管理、禁煙、ストレスコントロールといった生活習慣の見直しが破裂リスクを低減させる鍵となります。定期的な検査を欠かさず、不安なことは専門医に相談しながら、心身ともに健やかな毎日を送ることを目指しましょう。
参考文献
日本脳神経血管内治療学会「脳動脈瘤について」
国立循環器病研究センター「脳動脈瘤」
厚生労働省 e-ヘルスネット「脳血管障害・脳卒中」
日本脳卒中学会「脳卒中治療ガイドライン2021(改訂2025)」
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