味噌汁は日本人に古くから親しまれてきた発酵食品ですが、含まれる成分とがんリスクとの関連が研究者の間で注目されています。大豆に由来するイソフラボンやサポニン、発酵によって生まれるメラノイジンなど、身体の内側に働きかける成分が複数含まれています。一杯の味噌汁にどのようなしくみが隠されているのか、わかりやすく解説します。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
味噌汁に含まれる成分と、がんのリスクとの関連が研究されている背景
このセクションでは、味噌汁を構成する成分ががんの発生にどのように関わっているのかについて解説します。味噌汁は日本人が古くから親しんできた発酵食品であり、その栄養成分は多岐にわたります。単なる汁物としてだけでなく、身体の内側に働きかける機能性食品としての一面も持ち合わせています。
味噌に含まれる大豆イソフラボンとがん細胞への影響
味噌の主原料である大豆には、「イソフラボン」と呼ばれるポリフェノールの一種が含まれています。イソフラボンは女性ホルモン(エストロゲン)に似た構造を持つ成分であり、体内でエストロゲン受容体に結合する作用を持つとされています。このため、乳がんや子宮体がんなど、ホルモンの影響を受けやすいがんとの関連性が研究者の間で注目されてきました。
また、大豆には「サポニン」と呼ばれる成分も含まれており、細胞の酸化を抑える抗酸化作用が報告されています。酸化ストレスはDNAの損傷につながることがあり、がんの発生リスクと関連すると考えられているため、抗酸化成分を日常的に摂取することは身体にとって意義のある習慣といえるでしょう。
発酵によって生まれるメラノイジンと抗酸化作用
味噌は大豆を発酵・熟成させることで作られますが、この過程で「メラノイジン」という褐色の成分が生成されます。メラノイジンはアミノ酸と糖が反応するメイラード反応によって生まれる物質であり、抗酸化作用を持つとされています。
抗酸化作用とは、活性酸素(体内で生じる酸化力の強い物質)の働きを抑制する力のことです。活性酸素は細胞やDNAを傷つけることで、がんをはじめとするさまざまな疾患の引き金になる可能性があります。メラノイジンはその活性酸素を中和する働きを持つと考えられており、味噌が「熟成されるほど健康によい」とされる理由のひとつになっています。
さらに、発酵によって生まれる乳酸菌などの有用菌は、腸内環境を整える効果が期待されています。腸内環境の乱れが免疫機能の低下につながると考えられていることから、腸内フローラを良好に保つことは、がん予防の観点からも無視できない要素です。
ビタミン・ミネラルの相乗効果
味噌汁には、味噌そのものの栄養素に加えて、豆腐・わかめ・ねぎ・なめこなど多様な具材が使われます。これらの具材がビタミンCやビタミンE、ベータカロテン、食物繊維などを補完的に供給します。特に、わかめや昆布などの海藻類はフコイダンというポリサッカライドを含み、免疫細胞の活性化を助ける可能性があるとされています。
ビタミン類のなかでも、ビタミンCとビタミンEは抗酸化成分として広く知られており、細胞の酸化ダメージを軽減する作用を持ちます。これらを毎日の味噌汁から継続的に摂取することで、身体全体の酸化ストレスを軽減する助けになる可能性があります。味噌汁は一杯の中に多様な栄養素を凝縮できる点で、食事設計の観点からも優れた選択肢といえます。
まとめ
味噌汁はがん予防との関連性が研究で示されつつあり、塩分については発酵食品ならではの特性を踏まえた正しい理解が求められます。飲みすぎによる塩分過多には注意が必要ですが、具だくさんにして汁の量や濃さを控えめにし、1日1杯程度を目安に減塩の工夫を取り入れれば、健康的な食生活の一部として活用できると考えます。味噌汁は「がん予防の特効食品」ではなく、減塩を意識した食生活の中で上手に取り入れたい食品と言えるでしょう。気になる症状や持病がある方は、消化器内科や腎臓内科などに相談しながら、自分に合った摂取方法を見つけることをおすすめします。
参考文献
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
食品安全委員会「大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方」
国立がん研究センターがん情報サービス「がんの統計・予防」
農林水産省「大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A」
- 味噌汁に含まれる栄養素と健康効果とは? 味噌汁が健康に良い理由を管理栄養士が解説
──────────── - 「大豆イソフラボンが多い食品」は豆腐と味噌どっち?注意点も管理栄養士が解説!
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